Project/Area Number |
22K01316
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 06010:Politics-related
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
吉田 武弘 立命館大学, 文学部, 授業担当講師 (30772149)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 公議 / 帝国議会 / 議会構想 / 衆議院 / 貴族院 / 両院関係 / 上院 / 下院 / 井上毅 / 岩倉具視 / 伊藤博文 / 議会 / 二院制 / 政党 / 貴衆両院関係 |
Outline of Research at the Start |
「代表」とは何か、それはいかなるものと認識されてきたのか。こうした問いは、あまりに基礎的だが、だからこそ日本をはじめ、代議制民主主義を基盤とする諸国にとって重要な問いであろう。本研究は、日本における議会制度の出発点に焦点をあてることで、上記の問題を考えていく。 明治憲法体制下、中央政治における代表は衆議院に限定されていたとされる。しかし、代表とは程遠いかにみえる貴族院もまた「代表」たることが、権限の根拠にすえられていた。こうした位置づけはなぜ必要だったのか、それはいかなる影響を与えたのか。本研究はこの様な視点から近代日本における「代表」の出発点を再考するものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、本課題が憲法制定過程の「後期」として位置づける伊藤博文帰国後の上院構想をめぐる展開を検討した。その結果明らかになった内容は、以下のようにまとめることができる。 伊藤帰国後、上院構想は大きな転機を迎えることとなった。とくに注目すべきは、上院に対しても「代表」としての性質が強調され始めたことである。議会構想のあり方は、存立根拠を異にする上院と下院が各々に種類の異なる公議を(本質的には対立的に)担うというあり方から、共に「代表」たる両院の存在によってより広い層の志向を「代表」するというあり方へと大きく転換したのである。憲法制定過程の「前期」において上院構想をリードした井上毅も大枠ではこうした方向性を受け容れていくこととなる。 ただし、一方で井上は、各人の様々な属性によって分裂した多様な公議、いわば「衆議」とは異なる「公議」への拘りを捨て去ることはなかった。彼が模索したのは、天皇と内閣の一体性を前提に構成される行政府を「衆議」とは異なる地点から支え、その法的あるいは思想的正当性を支え防衛するための一体的志向性をもった「公議」である。こうした井上の志向は、彼による枢密院構想(井上の構想段階では参議院)へと引き継がれていく。彼における初期上院構想にみられた同院の特権事項、とくに皇室に関わる特権の多くが枢密院へと転載されていく過程、また枢密院と内閣との一体的運営を模索する試みは、形を変えた「上院的公議」への探求でもあった。こうした構想は、伊藤の枢密院構想と衝突することとなるが、それは初期上院構想と後期上院構想の相克としての意味も指摘できよう。それは「公議」の多義性が実際の政治過程に大きな影響を与えていくことでもあったのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度の研究目標は、伊藤帰国後における上院構想の転換が与えた影響を検討することであった。その成果は、研究実績欄の通りだが、研究を進める中で初期上院構想と枢密院構想との関係性がこの時期における重要な論点として浮上したため、この点をとくに掘り下げることとした。ただし、こうした変更のため、課題の一つに挙げていた多額納税者議員制度導入をめぐる問題については、当初予定に比して十分な検討ができなかった。あらたな論点を見出せたことは重要だが、当初計画とは異なる展開となったため「おおむね順調」と評価し、残された課題については2024年度に継続して取り組みたい。 なお、これも当初計画には含まれていなかったが、憲法制定過程における上院構想あるいは二院制構想が帝国議会以後の議会政治形成にいかなる影響を与えたのかという点について、初期議会期を中心に検討を行い、学会報告および論文として発表した。この点については、当初計画以上に研究が進展したものといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度の課題は、憲法制定期における各政党関係者の上院構想とその影響である。 構想内容に差違があるにせよ上院の設置を前提としていた政府関係者に対し、政党側においては、そもそも上院の必要性を否定するものを含め、より多様な議論がみられた。そこで、①二院制論者が具体的に上院の権限や構成をどのように構想していたのか、②一院制論者も含めた政党関係者が上院(議員)と政党との関係性をいかに想定していたのか、という2つの問題を中心に検討を行う。ただし、これらの一部は、2023年度に行った初期議会期の検討(「「議会政治」の形成と両院関係問題」)にておいてすでに触れており、ここでの成果も取り入れながら、より通時的な成果を目指すこととしたい。 また、2023年度に検討した内容のうち、まだ論文化できていないものについては、できるだけ早い時期の発表を目指す。なお、初期上院構想と枢密院構想の連関、またこうした構想と伊藤博文らとの相克が与えた影響に関しては、2024年末に刊行予定の学術雑誌に投稿予定である。また、2023年度からの継続課題として多額納税者議員制度導入をめぐる問題についても、あわせて検討を行う。
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