Project/Area Number |
22K01400
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07010:Economic theory-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
関口 格 京都大学, 経済研究所, 教授 (20314461)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2025: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 繰り返しゲーム / カルテル / 不完全観測 / 観測オプション / 参入費用 / 不完備情報 / 供給制約 / 割当ルール / ゲーム理論 / 多市場接触 / フォーク定理 / 不完全情報 / オークション / 即決価格 / 価値財 / 経済理論 |
Outline of Research at the Start |
企業間のカルテル行動の経済理論的説明は、繰り返しゲームの均衡としての理解が定着しているが、この理論はカルテル均衡の十分条件に専ら集中し、カルテルが形成されるケースとされないケースを明確に線引きしない。本研究は、繰り返しゲームの理論の精緻化を通じてカルテル均衡の必要十分条件を明確化し、カルテル抑止的な市場構造を明らかにする。分析結果を援用してカルテルを抑止する政策手段を示し、競争政策形成に貢献する。
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Outline of Annual Research Achievements |
繰り返しゲームの理論の精緻化を通じてカルテル均衡の必要十分条件を明確化し、カルテル抑止的な市場構造を明らかにして競争政策形成に貢献するという本研究の目的に沿って、以下のような研究成果を得た。 1.不完全観測の繰り返しゲームでは、情報の不完全性がプレーヤーの戦略的可能性を広げることがあり、よって情報構造とカルテルの成否の関係は一筋縄ではない。研究代表者自身が長年推進してきた、観測オプションのある繰り返しゲームの分析を具体例にして、この論点に関する研究を進めた。研究成果を2本の論文にまとめ、それぞれ海外の大学と国際学会で報告した。 2.カルテルのモデルの一つとして、各企業が各期の期初にその期の市場に参加するために必要な費用を払うかどうかを選択し、また費用関数が自社の私的情報となる不完備情報の繰り返し寡占ゲームを分析した。まず、企業間のコミュニケーションだけが可能であるときのカルテルすなわち総利潤最大化行動の達成可能性について、解概念を定常的均衡に限定することで、そのような均衡の存在条件を明快に示した。また、コミュニケーションに加え金銭のやり取りも可能ならば、カルテルが均衡として達成できる条件が大幅に緩和されることを示した。またこのクラスのゲームは、1回限りのゲームの均衡構造がよくわかっておらず、この点についての分析も進めた。 3.ベルトラン競争を行う寡占企業に供給制約があると、需要量が供給能力を上回るときに誰が買えるかを定める割当ルールが、カルテルの可否を左右することが知られている。最近の研究が提唱する販売量最大化ルールを主に分析し、これまで未知であった1回限りのゲームの均衡構造の解明に成功した。またこの結果を援用して、このゲームの無限回繰り返し版において、総利潤最大化を達成する均衡が存在する必要十分条件を導出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結託的あるいは協調的な繰り返しゲーム均衡の必要十分条件という論点を軸に、多様な研究成果を積み上げている。 特に、幾つかの寡占モデルを具体的に定式化し、その下での総利潤最大化行動としてのカルテルを繰り返しゲーム均衡で達成できるかという論点について、一定以上の成果を得ることができた。まず、費用を伴う参入の意思決定を含んだ繰り返し寡占ゲームの研究では、企業間のコミュニケーションに加えて金銭のやり取りも可能にしたとき、カルテルすなわち総利潤最大化行動が均衡として達成できる条件が大幅に緩和されることを示した。カルテルを企図する企業間のコミュニケーションを規制すべきとする議論はこれまでも多々あるが、今回の研究成果は金銭のやり取りの規制の重要性も示しており、競争政策上の含意は大きい。また、供給制約がある寡占企業によるベルトラン価格競争を販売量最大化割当ルール下で分析する研究は、これまで不明だった1回限りのゲームの均衡構造を解明し、またその結果を用いて無限回繰り返しゲームバージョンでカルテル達成均衡が存在する必要十分条件を導出するなど、競争政策上のインパクトが大きい。 繰り返しゲームの理論の精緻化という本研究のもう一つの目的については、観測オプションのある繰り返しゲームの分析を進めることで達成している。査読付き国際学会等で報告可能になるなど、研究成果は国際的に評価されている。 一方で、研究成果を論文にまとめる作業が遅延しており、以上の進捗状況を総合的に判断して、本研究はおおむね順調に進展したと判断したい。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、各研究プロジェクトについては一定以上の進展が見られているが、学術論文として完成させて査読付き学術雑誌での掲載を目指すには、以下の課題が残っていると判断しており、今後検討を行う。 1.観測オプションのある繰り返しゲームの研究については、無限回繰り返しゲームでのフォーク定理の成立条件を明らかにしたことが大きな貢献だが、成立の必要十分条件には遠い感があり、既に一定の学術的意義は有しているものの、引き続き検討する価値がある。 2.費用を伴う参入の意思決定を含んだ繰り返し寡占ゲームの研究について、企業間のコミュニケーションだけが可能であるケースは定常的均衡の分析に留まっており、一般的な均衡で分析している既存研究とのギャップを埋める余地がある。 3.供給制約がある寡占企業によるベルトラン価格競争を販売量最大化割当ルール下で分析する研究は、1回限りのゲームの均衡の一意的存在及び均衡利得のミニマクス値との一致など、興味深い諸性質を示すことに成功した。しかしその均衡は、混合戦略を用いた非明示的導出になっていて、数学的に難渋な部分を残しており、応用上は議論をもっと洗練する余地がある。
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