わが国銀行業の付加価値生産の再検討:効率性向上と技術革新の源泉
Project/Area Number |
22K01567
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07060:Money and finance-related
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
井澤 裕司 立命館大学, 食マネジメント学部, 教授 (70222924)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
|
Keywords | 労働生産性 / 銀行業 / サービス産業 / 付加価値生産 / FinTech / コロナ禍 / 経済的付加価値 |
Outline of Research at the Start |
わが国銀行業の効率性とその源泉を実証的に明らかにする。最終的には、その成果を金融業を含めたわが国サービス産業全体の生産性向上への政策的含意へ拡張することを目的とする。労働集約的なサービス産業の特徴を踏えた生産性決定理論を構築し、付加価値生産を基準とした生産性の源泉を明らかにしようとする点に特徴がある。また、資本効率の観点を明確にするため「経済的付加価値」を採用し、従来の利潤最大化モデルにもとづく実証研究と対比しながら分析する点に新規制がある。これらの分析は、少子高齢化、人口減、ウィズコロナに直面するわが国サービス産業全体の生産性決定メカニズム解明の分析に寄与することが期待される。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、サービス産業としてのわが国銀行業の効率性とその源泉を実証的に明らかにし、その成果を金融業を含めたわが国サービス産業全体の生産性向上へ向けた政策的含意へ拡張することを目的とする。その実証結果によって、過去20年間の金融政策がもたらした銀行業の生産性への影響を分析するとともに、少子高齢化、人口減、ウィズコロナに直面するわが国サービス産業全体の生産性決定メカニズム解明の分析へ拡張する。 サービス産業としての銀行の効率は、業務の経験によるスキルの習熟が製造業にも増して重要であることが予想される。そのため本研究では、効率性向上の源泉としての業務経験とスキル獲得の役割を明らかにするために学習曲線モデルを適用した実証研究を行う。具体的には、累積貸出件数などの過去の業務経験の累積が銀行業のスキル向上に寄与し、現在の産出量に影響するとする、学習曲線モデル(Learning Curve Model) を適用した実証分析を行う。 我々がすでに先行的に行っている研究成果によれば、2010年以降、特に地銀などにおけるFISIMベースで生産の落ち込みと、技術進歩の鈍化が顕著である。これらの主要な原因として低金利が考えられる。貸出と借入の利鞘に基礎をおく概念であるFISIMは低金利の影響をより的確に捉えることができる。またこれまでも日本銀行による低金利政策は地銀をはじめとするわが国銀行業の「体力」を奪ってきたと論じられてきたが、「体力低下」に表象される長期的な傾向を明確に捉えることができることは、学習曲線モデルの大きな利点でもある。 本研究の成果によって過去20年間の金融政策の評価において新たな視点を加えることが可能となる。特に近年最重要課題となっている、金融技術(FinTech)の進歩と受容、コロナ禍の影響との関連にも触れる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
銀行業の効率性と、金融技術(FinTech)の進歩と受容、コロナ禍の影響などとの関連について研究を深め、成果を公表した。 新興国および発展途上国における金融発展の決定要因を実施した研究成果は数多いが、技術の進歩と国固有の特性の影響を考慮し、財務、金融包摂(Financial Inclusion)、金融技術の浸透、および金融発展の間の因果関係は、具体的に検討されていない。われわれの研究では、60 を超える経済圏の預金受入金融機関における資産変換の情報集約型プロセスから推定された財務パフォーマンスの 2 つの指標を使用して、これらのパフォーマンス指標、フィンテックの浸透、金融包摂、およびそれらが金融に及ぼす相互効果の間の関連性を分析した。主な結果は、フィンテックの普及が、金融包摂が低く、比率ベースの財務パフォーマンス指標が貧弱な経済の金融発展を促進することを示唆している。また、金融発展から金融包摂へ、後者から前者への因果関係が共存している。ただし、堅調な財務パフォーマンス指標から財務発展への因果関係は一方向である。これらの調査結果は、貧弱な金融インフラと貧弱な財務パフォーマンスにもかかわらず、金融技術のイノベーションを刺激する関連政策によって、発展途上国と新興国の金融開発を改善できることを示しており、後者から前者まで共存性も存在する。ただし、堅調な財務パフォーマンス指標から財務発展への因果関係には一方向性が存在する。これらの結果は、貧弱な金融インフラと貧弱な財務パフォーマンスにもかかわらず、金融技術のイノベーションを刺激する政策によって、発展途上国と新興国の金融開発を改善できることを示している。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究の目的に沿って着実に遂行する。特に本研究は、わが国GDPの75%を占めるサービス産業の生産性向上へ向けた重要な示唆を得ることをもう一つの目的としている。少子高齢化、人口減とウィズ・コロナを迎えるわが国の経済において、金融業を含むサービス産業の効率化は喫緊の課題とされる。また、労働集約的なサービス産業においては、利潤と付加価値との乖離が大きくなるが、この観点からの本格的な学術研究は欠けており、その間隙を埋める作業は極めて重要であり、着実に遂行する。
|
Report
(1 results)
Research Products
(1 results)