Project/Area Number |
22K01594
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07070:Economic history-related
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
市原 宏一 大分大学, 経済学部, 教授 (20223109)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
Fiscal Year 2025: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 北西スラヴ / バルト海南岸 / 国家形成 / キリスト教化 / スラヴ固有宗教 |
Outline of Research at the Start |
中世前期バルト海南岸の北西スラヴ人には、ドイツ人等の植民により、西方から封建的所領経済が展開するとともに、キリスト教の布教・伝道により、「異教徒」への改宗・教化が展開した。本研究は、国制・社会経済から宗教におよぶ多面的重層的な交流の検証を通じて、近隣の先進地域から北西スラヴ地域の社会構成への影響を明らかにするとともに、先行する土着的な北西スラヴ社会構成の諸要素を究明する。同時に、考古学研究の成果と、キリスト教聖人伝や北欧出自の文献史料等の記述史料との総合という分析手法の新たな可能性を探究することも企図している。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は、前近代における諸族・国家間の交流が、前国家段階の諸族の社会編成に対して及ぼす影響について考察することにある。2023年度においては、前年度に引き続き、13世紀前半のバルト海南岸、とりわけ、カトリック・キリスト教世界からの伝道が展開したポモジェ、フォア・ポンメルン地域を対象として検討を行った。 研究にあたっては第一に、前年度に行った先行研究動向整理を踏まえながら、中心的には、先行研究が基礎とする三つの聖人伝史料の分析、とりわけ先行研究においてキリスト教化の際に着目されている土着の社会構成と社会経済的環境の分析をおこなった。第二には、前年度に続き、オットーの布教拠点として資料に名も挙げられた都市的大規模集落の考古学成果に関する先行研究の整理を継続するとともに、近年になって成果を上げつつある、従来は存在自体も知られていなかった農村定住地に係る、ポモジェ、フォア・ポンメルン地域、すなわちオドラ(オーデル)川両岸の定住考古学成果に関する先行研究の整理に従事した。 第一点からは、先行研究でしばしば強調される、司教オットーによる布教時の支配上層の積極的な役割が、史料文言上で確認されるとともに、君侯層だけでなく、それに次ぐような上層にみいだされた。あわせて、それら階層が布教時に先行してすでに西方世界及びキリスト教との関係を結んでいたことも史料文言から確認され、環バルト海における交流の起源とスラヴ土着社会への影響に関する新たな証拠を確認することができた。第二点からは、文献・考古学資料どちらからも証明される環バルト海交流における拠点交易地の存在と並行して、文献史料上では言及されない農村定住地群と、そこでの一定の階層性に関する考古学上での検討状況を整理した。これにより、環バルト海拠点交易地とその後背地の存在という問題に新たな見通しを得ることができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では、初年度から2023年度にかけて「実地調査および資料収集」として、ポーランド、ドイツ、バルト海地域それぞれに赴き、最新の考古学成果に関する知見を得ることを予定していた。しかしながら、2022年夏より勤務大学学部において、学外に対しては担当を公開しない業務での責任者に就任し、2024年夏まで継続している。 このため2023年度は、当初予定の現地調査から、環バルト海地域に関する研究紙誌を通じた、先行研究の集取と、その動向把握に従事することに中心的に従事することとした。また、それらの先行研究において根拠とされている、文献史料自体については、とりわけ、ポーランド・ポモジェ地方およびドイツ・フォアポンメルン地域における北西スラヴ社会について基本的な文献と位置づけられた司教オットーの三つの聖人伝自体の史料証言の分析に取り組んだ。 これにより、第一に、先行研究でしばしば指摘されてきた、ポンメルン社会における君侯層さらにはそれに次ぐ層におけるキリスト教への親和性の強さを、史料文言で明らかにした。第二に、近年の考古学成果に関する先行研究からは、環バルト海交易拠点であり、かつ司教オットーの布教拠点でもある大規模交易地の社会経済的特徴が明らかにできるとともに、従来はその存在も知られていなかった農村定住地群の当該地域における独自の機能について検討を進めることができている。 ただし、研究対象とする北西スラヴの社会構成については総体としてはなおまだ文献史料からの証言の追求が必要であり、また、考古学成果についても、農村定住地群と交易拠点との関係性についてなお依然として発掘調査などが行われているところであり、これらについては、文献史料自体のさらなる証言の抽出と分析、また、交易拠点および農村定住地群の考古学研究成果のさらなる整理が課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
申請者は、一昨年度より勤務大学学部において、学外に対しては担当を公開しない業務での責任役職は本年2024年夏まであるため、今年度後半には計画してきた研究対象地域での実地調査などを実施できる予定である。 本年2024年は、本研究対象の中心の一つである、ポモジェ、フォアポンメルン地方へのバンベルク司教オットーによる第一回目布教からまさに800周年にあたり、これを契機とした本研究と関連した動向がいっそう活発化し、その成果の公開も大いにすすむことが見通される状況である。こうした外的契機と申請者自身の学内業務の状況を踏まえ、本年度については、第一には、先に挙げたポモジェ、フォアポンメルン地域におけるキリスト教改宗を契機とするスラヴ社会変容プロセスを、主に文献史料証言に依拠して追究するという方針を継続する。第二には、当初計画において最初に取り組むこととしていた、ポモジェ、フォア・ポンメルン地方、、近年野外博物館が設けられたオドラ右岸ヴォリンと、ドイツ・ウゼドム島およびリューゲン島などオーデル(オドラ)左岸地域、さらにパルセンタ流域のコォブジェク、バルディ=シフィルヴィエなど中心に、最新の考古学成果に関する知見を得る。 同時に、本研究の視点が多様性を備え、研究手法及び資料上の固定化に陥らないよう、文献史料にもとづく検討としては、当初計画で予定していた、異なる出自史料を用いて、多角的な視点を確保する。これにより、土着社会と西欧・北欧の外来勢力との交流によるその変容、融合の過程を検証する。
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