「役割間干渉」の実態と在宅勤務やコロナ禍の影響:仕事と生活の境界管理
Project/Area Number |
22K01661
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07080:Business administration-related
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Research Institution | The University of Tokyo (2023) Chuo University (2022) |
Principal Investigator |
佐藤 博樹 東京大学, 社会科学研究所, 名誉教授 (60162468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 民恵 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (60570778)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | 仕事と生活の境界管理 / 在宅勤務 / ワークライフバランス / ハイブリッドワーク / テレワーク / 境界管理 / ワーク・ライフ・バランス / ダイバーシティ経営 |
Outline of Research at the Start |
企業に雇用されて働く人々の働き方が変化し,いつでもどこでも仕事ができるなど,仕事領域の役割と仕事以外の生活での役割が,相互に浸透すること,つまり「役割間干渉」が生じる可能性が高まりつつある。「役割間干渉」は,社員のワークライフバランスを低下させるとの議論も根強いが,「役割間干渉」を適切に管理できること,つまり仕事領域の役割と仕事以外の生活の役割の境界を適切に管理できる場合には,WLBにプラスの影響がある。そこで海外の研究を踏まえ,働く人々の働き方の変化と現状を踏まえて,「役割間干渉」の類型と境界管理を組み合わせ,「役割間干渉」の類型毎にWLBなどに貢献する「境界管理」の在り方を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
企業に雇用されて働く社員は、仕事と仕事以外の生活の「境界」(バウンダリー)を管理する境界管理がこれまで以上に求められるようになってきている。それはつぎのよう要因による。第1に、在宅勤務を含めたテレワークなど特定の場所に依存しない働き方が拡大し、いつでもどこでも仕事ができるようになることで、仕事と仕事以外の生活の「境界」が曖昧化している。第2に、事業活動の国際化や24時間化によって、週7日間・1日24時間仕事を担う必要性が生じる可能性が高くなり、仕事時間の多様化・分散化が進展している。第3に、働き方の多様な選択肢の中から社員自身が働く場所や時間を選択して組み合わせる可能性が広がりつつある。 以上のように、仕事と仕事以外の「境界」が曖昧化する働き方の拡大によって、仕事の時間に仕事以外の課題に対応したり、仕事以外の時間に仕事の課題に対応するなど、仕事と仕事以外の生活が相互や一方向に浸透する事態が増えている。仕事役割と仕事以外の役割が,相互に浸透する「役割間干渉」が生じる可能性が高まっている。この「役割間干渉」は,社員のワークライフバランスを低下させるとの議論がある一方、「干渉」を適切に管理できる場合には,WLBにプラスの影響があるとの研究もある。 上記の問題意識を踏まえて,2023年度は「役割間干渉」と境界管理の類型毎に、それぞれがWLBなどに貢献するかどうかに関して実証的に研究を進めた。「仕事と生活の境界管理に関する調査」の第4回調査を再分析し、①「境界管理」の類型と社員のエンゲージメントの関係を分析した論文と②在宅時の生産性と社員のエンゲージメントの両者に貢献する在宅勤務の条件を分析し、学会報告(のちに論文として掲載)を行った。さらに2024年度に実施予定の個人アンケート調査のための予備的調査として、在宅勤務者と在宅勤務者の管理者に対して、インタビュー調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度に「境界管理」に関する調査を実施し、境界管理に関する社員向けのマニュアルを作成する予定であったが、「仕事と生活の境界管理に関する調査」の第4回調査の再分析に時間がとられたため、新しい調査は2024年度に実施することにした。そのため当初の計画よりも研究がやや遅れている。 しかし、上記の再分析を行うことで、在宅勤務時の生産性の維持と社員のエンゲージメント向上の両者に貢献する在宅勤務の在り方を明らかにすることができた。その分析を通じて、2024年度の調査の設問設計に貢献できる知見をえることができた。第4回調査の再分析から得られた知見は、下記になる。 第 1 に、在宅勤務時の生産性維持と社員のエンゲージメント向上の両者を実現できている社員は,①生活全体の満足度が高く,②仕事と仕事以外の生活の相互への好影響があり,③エンゲージメントも高いことから,企業だけでなく社員にとっても望ましい働き方ができていることが確認できた。第 2 に両者を実現できている社員は,家族の理解・協力があったり,在宅時の通信環境が整備されていたりするだけでなく,企業や上司の支援に加えて,在宅勤務時の働き方に関して自己管理ができていた。第 3 に両者の実現のためには,在宅の頻度に関する社員の希望を実現できるように企業が支援することが望ましいのか,その点を確認するために,在宅勤務の実際の頻度と希望頻度の合致状況の変化が,両者の実現にどのように影響しているかを分析した。その結果,実態と希望が継続して合致している社員では,両者は実現できている可能性が確認できた。 さらに2023年度は、出勤とリモートワークを併用するハイブリッドワーク下にある管理職と一般社員を対象としたインタビュー調査を実施し、職場における業務や部下のスキルレベル、さらに行動特性に応じた管理職のマネジメントの課題を検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に実施した出勤とリモートワークを併用するハイブリッドワーク下にある管理職と一般社員を対象としたインタビュー調査による研究成果を、2024年6月30日に東洋大学で開催される日本労務学会で報告する。報告テーマは「ハイブリッドワークにおける管理職のマネジメント:生産性向上と部下育成に向けた対応」(佐藤博樹・松浦民恵)である。学会での報告後に、『日本労務学会誌』に投稿を予定している。 上記のインタビュー調査と先行調査の再分析を踏まえて、在宅勤務の部下をマネジメントする管理職に対するアンケート調査(登録モニター)を実施する。部下の働き方の多様性(勤務地、職場への出勤の頻度や在宅勤務の頻度)を考慮して、管理職を選定する。 また、調査票の設計では、リモートワーク時における生産性に影響する要因に関しては、以下の点を考慮する。第1に、育成段階や職場で下位の立場にある一般社員は、先輩や上司に質問や相談をしにくいこと、セルフマネジメントがうまくいっていないことなどから、生産性の低下につながっている可能性があること。第2に、職種によってリモートワークのやりやすさが異なり、それが出勤日数さらには生産性に影響している影響している可能性があること。第3に、在宅での就業環境は生産性に影響しており、未就学の子どもと同居している場合でも、自宅で集中できる作業スペースが確保できているほうが、より高い生産性につながる可能性があること。第4に、リモートワーク時の「運動や健康管理」については課題意識が顕著で、中長期的には健康状態の悪化を通じた生産性の低下につながること懸念があること。第5に、情報共有のあり方については、特に一般社員について、他の職場との情報共有に苦労している可能性があること。第6に、ミーティング時のビデオ・オンの徹底度合いが、リモートワークの生産性に影響している可能性があること。
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Report
(2 results)
Research Products
(5 results)