ファミリーアントレプレナーシップにおける社会情緒的資産と社会物質性の関係性の解明
Project/Area Number |
22K01729
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07080:Business administration-related
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Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
石谷 康人 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 准教授 (70446904)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | ファミリー企業 / アントレプレナーシップ / イノベーション / 伝統 / 物質性 / アイデンティティ / 資源 / 地方創生SDGs / ファミリーアントレプレナーシップ / 社会情緒的資産 / 社会物質生 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、地方経済の主役であるファミリー企業の世代を超えたアントレプレナーシップによる地域でのイノベーションの成功のメカニズムを明らかにする。そのために、「社会情緒的資産としての創業者とファミリーのアイデンティティ」と「地域とファミリーが有する有形/無形の資源の社会物質性」の視座のもと、四国地方における顕著なファミリー企業7社を対象として事例研究を行う。その際に、アクターネットワーク理論に基づいて、社会物質性の観点から、社会情緒的資産としてのファミリーのアイデンティティを源泉とするファミリーアントレプレナーシップの理論を開発する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、地方経済を牽引するファミリー企業の世代を超えたアントレプレナーシップによるイノベーションの成功のメカニズムを明らかにすることである。ファミリー企業が、「伝統の維持」と「イノベーションの創出」の相反する課題を両立しつつ両者にシナジーをもたらして、将来世代にわたって反映するための方法を明らかにする。2022年度は、そうした目標の達成に向けて、高知県に本社や製造拠点を置き、ニッチトップとして持続的競争優位を確立しているファミリー企業の株式会社サニーマート、司牡丹酒造株式会社、井上石灰工業株式会社を対象として店舗や工場の見学、経営者および従業員へのインタビュー調査、二次資料の収集と分析などを実施した。株式会社サニーマートの事例研究では、創業者の代に形成された「アイデンティティとサニーマートコンセプト」を伝統として保持しつつ、移動スーパーとくし丸の広域展開、地域住民を対象とした地域交流活動、スーパーの業務改善などのイノベーションを活発に実施した両立のマネジメントのメカニズムを明らかにした。司牡丹酒造株式会社の事例では、現経営者が、先代のアントレプレナーシップの物語を企業家的レガシーとして構築しつつ、それを自らのアントレプレナーシップおよびイノベーション活動の源泉とする両立のマネジメントのプロセスを詳細に記述した。井上石灰工業株式会社の事例では、創業以来手掛けてきた石灰関連事業における深化と、新規事業としてのワイン製造販売の探索を両立するための両利きの経営のメカニズムとプロセスを明確に示した。そうした研究成果の一部について、日本企業経営学会第63回研究大会、組織学会2022年度研究大会、企業家研究フォーラム2022年度年次大会で発表した。また、査読付き論文が、企業経営研究第25号、AAOS Transactions第11巻、関西ベンチャー学会誌第15号に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、報告者が活動の拠点としている四国地方あるいは高知県に本社を置くファミリー企業7社を対象として、主に定性的研究としての事例研究を実施することにより「世代を超えたアントレプレナーシップが、自らをとりまく社会や環境における物質から影響を受けつつ、社会情緒的資産を含む伝統を保持するだけでなく利用しながら、イノベーション発展過程を形成する理論仮説」を導出する。その際に、それぞれの事例研究で得た計7つの分析結果に対して分析的一般化を行いつつ共通点と相違点を探ることによって、世代を超えたアントレプレナーシップによる継続的なイノベーションを成功に導くための理論を開発する。また、それぞれの単一事例研究では、創業者、ファミリー、企業にまつわるインタビュー/聞き取りデータとしての一次情報と、企業のホームページや公開文書と新聞・雑誌記事などの二次情報を定性データとして収集し、総合的に活用する。インタビュー調査は、質問するテーマや大まかな項目が決められているものの、インタビュイーに応じて質問項目や説明内容を変えていく非構造化スタイルで実施する。そうした研究実施計画のもと、初年度に、7社のうち「株式会社サニーマート」「司牡丹酒造株式会社」「井上石灰工業株式会社」の3社に対して、店舗や工場の見学、経営者および従業員へのインタビュー調査、二次資料の収集と分析などを実施することができた。それだけでなく、3回の学会発表と、3本の査読付き論文の学術誌への掲載を達成したことからも、研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度から2024年度にかけて、少なくとも、7社のうちの残り4社に対して店舗や工場の見学、経営者および従業員へのインタビュー調査、二次資料の収集と分析を計画通りに実施したい。そうした4社として、「耕耘爪の分野で持続的競争優位を確立している株式会社太陽」「有機肥料の造粒機の分野でニッチトップの株式会社垣内」「さつまいも菓子のリーディングカンパニーである澁谷食品株式会社」「高知県のトップ飲料メーカーのひまわり乳業株式会社」を上げることができる。株式会社太陽は、「なた形状のカラー爪」という特徴的な製品の製造を日本国内で実施し、持続的競争優位を確立したのち、インド市場に進出してそこでもシェア1位を達成した。株式会社垣内は、「高知のエジソン」と呼ばれた創業者の垣内保夫のDNAを大切にしつつ、小規模ながらも、西日本随一の製造設備を配備して、受託製造、自社製品の開発・販売、発明・開発などあらゆるニーズに対応している。澁谷食品株式会社は、素材である芋を最後まで大事に使い尽くしたいという創業者の澁谷金次郎の思いを大切にしつつ、芋を育てるところから手掛けながら日本で販売されている芋けんぴの半分を製造して競争優位を確立している。ひまわり乳業は、人口減少、高齢化が進む高知県で、地域の一次産品を高付加価値商品に仕立て上げつつ全国に向けて販売するビジネスモデル・イノベーションに成功した。2023年度は、これら4社の調査を着実に進めつつ、前年度の調査結果を査読付き論文として出版することを確実に達成したい。
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Report
(1 results)
Research Products
(6 results)