Project/Area Number |
22K01775
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07090:Commerce-related
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
大内 秀二郎 近畿大学, 経営学部, 教授 (20351562)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2024: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2023: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2022: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
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Keywords | 東京電気 / 流通系列化 / 販売会社 / マツダ販売 / 前方統合 / 中間商人の排除 / マツダ会 / 店会組織 / 家電 / 戦前ー戦後 / 松下電器 |
Outline of Research at the Start |
戦前期から1960年代にいたるまでの松下電器産業と東京電気(のちに東京芝浦電気)の流通系列化の過程を比較して、その共通点・相違点を抽出するとともに、戦前期の活動が戦後にどのように継承されたか、もしくは継承されなかったかを解明する。 日本企業のマーケティングの特徴の一つはその独特な流通系列化政策にあり、それが顕著に見られた産業の典型例として、家電産業がこれまでしばしば取り上げられてきた。しかしながら、これまでの研究では主に高度成長期の流通系列化の展開とその後の崩壊の過程のみに焦点が当てられる傾向にあった。本研究では、日本においてマーケティングがどのように萌芽し形成されるにいたったかを解明したい。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度には、戦間期における東京電気の流通系列化の実態のうち、主に販社制度の実態解明を試みた。 今年度の研究を通じて明らかにされた史実は以下のとおりである。第1に、販社の設立の時期などに関する社史の記述は正確ではない可能性が示された。一例として、社史では初めて設立された販社は静岡の寿美屋電気とされているが、官報の記録によれば東京市内の3販社の設立が1930年4月、寿美屋電気は同年7月である。第2に、初期の販社設立のスキームとして、はじめ東京電気の本社所在地であった川崎市堀川町に販社を設立した後、あとになってそれぞれ現地に移転するパターンが確認された。第3に、各販社の設立の目的はただ電球と真空管の販売に限定されるものではなく、電気機械器具、配線材料の販売、さらには電気工事の設計請負などの関連事業を含んでいた。第4に最も重要な発見として、販社設立の過程や現地卸売商との関係性が地域によってまちまちであったことが示された。例えば東京や名古屋においては、現地の有力な卸売商を内部に取り込むかたちで販売会社が設立された。特に東京では、既存の卸売商に直接出資してそのまま販社に改組した。大阪や福岡の場合は、有力卸売商の向背が一定せず彼らを統合して内部化することが困難であったことから,ゼロベースに近い形で販社を新規に設立した。北陸や中国(岡山)では、いったん販社「マツダ販売」を設立したのちに、先にあった現地の弁理店をその内部に取り込んだ。朝鮮や東北では、それぞれの地域にすでに複数の弁理店が設置されていたものの統合するに値する有力者が見当たらなかったことから、販売会社が設立される際に内部化せず「實質的には都市卸店と同格の販賣條件に格下げ」とした。 2023年度には、上記の研究成果を論文および学会発表によって公表するとともに、昨年度までの研究成果も含めた学会発表も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は以下のプロセスによって構成されている。①松下電器の戦前期および高度成長期以前の流通系列化に関するこれまでの先行研究の成果と同時代的な各種資料とを照合して、先行研究の確からしさを確認する。②それと並行して、これまでほとんど研究対象とされなかった戦間期の東京電気による流通系列化の実態を調査し、その内容が、販社制と店会組織「マツダ会」によるものへ収斂する過程を解明する。加えて、すでに戦前に一定の販路を構築していたはずの東芝が、戦後の販路再整備に後れを取った要因を検討する。③最後に、両社のチャネル政策を比較し、その歴史的規定因を考察するとともに、チャネル管理を中心としたマーケティングがどのように産業レベルで一般化したかを検討する。これらのうち、②については研究実績の概要にも記した通り2023年度においても大きな進捗があった。①については、2022年度までに松下電器の代理店と東京電気の弁理店が一部重複していたことをすでに指摘した。加えて2023年度には、戦前と戦後の商業センサスから、戦前の電器店の多くが戦時統制下において転業や廃業を余儀なくされたことを統計的に把握できた。なお、松下の販路に関する戦前期の史料収集はある程度進んでいるものの、なお一層の史料収集が必要であることから、進捗状況は「概ね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
東京電気の戦前期の流通系列化に関して、残された課題は弁理店の実態解明である。これまでの調査により1930年代半ばの全国の弁理店リスト(所在地、商店名または商店主の氏名)の把握が完了していることから、2024年度はある程度実態を解明できるものと想定される。 一方の松下電器の流通系列化に関して、小売の連盟店制度についてはすでに先行研究の蓄積があるが、小売の店会組織「ナショナル会」の実態や卸売商の系列化の過程については、社史史料の断片的な記述を除いてほとんど未解明と言えるため、引き続き調査を継続して成果を挙げたい。
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