Project/Area Number |
22K01814
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 07100:Accounting-related
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
寺嶋 康二 千葉商科大学, 会計ファイナンス研究科, 講師 (80881549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
積 惟美 亜細亜大学, 経営学部, 講師 (50824223)
塚原 慎 駒澤大学, 経営学部, 准教授 (90806374)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | 自信過剰 / 財務報告 / 企業行動 / 利益調整 / 経営者行動 / 心理的特性 |
Outline of Research at the Start |
本研究では,日本の制度的・文化的背景を前提とした場合に,経営者の有する心理的特性が財務報告を中心とする会計行動にどのような影響を及ぼすのか,また,当該関係性に起因する会計行動の”歪み”が,会計情報利用者の利害にどのように作用するのかを解明する。 具体的には,経営者の心理的特性に基づく会計行動の決定要因分析,経営者の心理的特性により歪んだ会計行動がもたらす経済的影響分析,および経営者が有する複数の心理的特性間の関係分析という,大きく三つの分析を日本の環境を前提としたうえで行うことによって,経営者の心理的特性と経営者行動の関係,及びその帰結を立体的に解明することを企図している。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、自信過剰概念と裁量的な費用調整に関する実証分析を行い、オーストラリアで開催された32ND ASIAN-PACIFIC CONFERENCEにおいて報告を行った。当該研究では、自信の程度が高い経営者がいる企業はそうでない企業に比べて研究開発費や異常な裁量的支出が増加することを発見した。また、損失をわずかに回避している企業に着目した場合、経営者の自信の程度が高い企業ほど、裁量的研究開発費や異常裁量的費用が小さいことを発見した。さらに、減益をわずかに回避した企業、およびROEが5%をわずかに上回る企業は、裁量的研究開発費が少ないという弱い結果も観察された。これらの結果は、利益調整インセンティブが高い状況では、投資よりも目標利益が優先されることを示唆している。加えて、これらの実態的利益調整行動は、会計的利益調整と同時に行われていることが明らかとなった。 また、2021年度より着手していた、自信過剰な経営者が自社株買いを避ける傾向にあることを示した論文を精緻化した上で査読論文として投稿中であり、査読対応を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は前年に引き続き、心理的特性に基づく会計行動の決定要因分析に取り組み、特に経営者の自信過剰と利益調整の関係について研究を行った。当該研究によるプロジェクトレベルでの重要な進展として、ROEのような収益性指標をターゲットとした経営者行動が観察された点と、経営者の自信過剰がそうした行動に影響を及ぼしている可能性が示唆された点が指摘できる。 これまで多くの先行研究では、具体的な利益数値をターゲットとした企業行動が多く観察されてきたが、近年ではISSによる議決権行使助言提案にROEの水準が盛り込まれるなど、利益から派生した収益性指標の重要性がしばしば指摘されてきていた。2023年度における発見事項はそうした派生的収益性指標が実際に企業行動のターゲットとして機能していることを示唆していると共に、経営者の自信のような心理的要因がこうした行動に影響していると考えられる結果となっている。こうした結果は、自信過剰な経営者が現実の環境の中で投資やシグナリングといった両立の難しい事象をどのように扱っているのかにアプローチするものとなっている。これによって、経営者の自信過剰がどのような会計行動に結び付き、そしてそれらがどのように評価され得るのかという本研究の課題をより現実に即した形で明らかにすることができると考えられる。 以上より、当初の計画通りの研究を進めつつ、プロジェクトレベルでの発展も見られたことから、進捗状況としてはおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、2023年度までの成果をブラッシュアップし、査読雑誌への掲載を目指しつつ、当初の計画通り「心理的特性により歪んだ会計行動がもたらす経済的影響」や「他の心理的特性との相互関係」についても分析を進めていくことを予定している。ここで、着目する会計行動としては、2023年度までの決定要因分析において対象とした自社株買いを避ける傾向や、利益調整および投資行動に関する偏りを想定している。 なお、申請時点では、経営者の自信過剰がもたらす会計行動として先行研究の多くが負の側面を指摘していたこともあり、その経済的影響としては証券市場における価格や企業の将来業績に対する悪影響を想定した仮説をメインに分析していくことを検討していた。しかし、2022年度の結果から、経営者の自信過剰が正の影響をもたらす場面も想定できることが明らかとなったため、2024年度の研究においても様々な状況を特定しながら経営者の自信過剰がもたらす正負両面の影響をより精緻に明らかにしていくことを計画している。
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