Project/Area Number |
22K01865
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
土屋 淳二 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (80287937)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 社会学 / ポピュリズム / 群集論 / 大衆社会論 / 社会運動論 / エリート主義 / 日本社会史 / 群集社会学 / 大衆運動 / 大衆とエリート / 群集 / 大衆 |
Outline of Research at the Start |
近年のポピュリズム研究や「市民圏論」に通底する社会学理論の学説史的源流に遡り,世紀転換期の群集/大衆社会論や市民社会論,そして20世紀前葉の社会運動・革命論へと至る近代日本社会学の思想的基盤に底流する集合行動(都市暴動を含む民衆騒擾,群集行動,革命的謀計,大衆運動,大衆説得と世論形成,徒党・党派組織化など)に対する知識人階級の時代認識と危機意識,ならびに社会統制と秩序維持に志向する学問的イデオロギー性とエリート主義の影響について知識社会学的に討究する.歴史的特殊性や時代性に対する社会学者自身の問題意識の様態に潜むイデオロギー的性格を明確に示し,日本社会学の展開過程に与えた思想的影響を検討する.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,近代国家の形成過程における危機と秩序再編にみる歴史的特殊性に思想的背景を背負いながら,一個の個別経験科学として自己意識化されていった明治大正期にまたがる草創期日本社会学の系譜を辿り,爾後の激動期での社会騒擾や民衆暴動に対する危機意識から大正民本主義運動や知識人運動等へと導かれた社会変革論と,社会統制や秩序維持の保守体制論との力動的な対立構造の枠組みおいて内発する視座の特質を精査し,現代のポピュリズム研究における社会学理論の思想的源流と知識社会学上の問題位相を討究する.近代社会学の成立期にみられる思想的源流にまで遡りつつ,現代のポピュリズムを「反エリート主義」や「反知性主義」として糾弾し続ける学界に内在するイデオロギー批判の理論的影響を知識社会学の観点から追究することは,近代民主制の成立過程において顕在化した民衆行動の歴史事例に呼応して構築された諸理論の学説史的源流を辿り,草創期社会学に内在される知識人階級の時代認識と危機意識,学問的イデオロギーとエリート主義の理論的影響について再検証することを意味している.その文脈においては,①明治啓蒙思想の支柱たる社会進化論や社会有機体説と民権運動や国家主義的運動との関係性にみる初期社会学の体系化,②都市研究や貧困研究にみられる社会主義思想の実践科学としての社会学の組織化,③大正民主主義と新中間階級論の展開と「群集/大衆」の新興勢力に対する学界知識人の危機意識,④社会統制論の展開と市民社会論の挫折にみる「社会学批判」論にみる現実科学への志向性,⑤「民衆/大衆(衆愚)/人民/平民」等として規定される運動主体と明治啓蒙思想にまで遡及可能な「公民/公衆」概念の規定のあり方に内在する知識人階級のイデオロギーとエリート意識の理論への影響,が追究すべき重要な論点を構成している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究の進捗状況は遅滞している.家族の在宅介護支援のため,研究計画に予定されている調査期間での課題消化を達成することが困難な状況にある.これまでの研究は大別して,(1)ポピュリズムに関する先行研究の理論的検討,(2)近代社会学史の歴史的資料による知識社会学的検討,から構成され,とくに後者では,群集論および大衆社会論に内在する思想的基盤とイデオロギー性を学説史の系譜において踏査し.[Ⅰ期] 明治啓蒙思想と自由民権運動にみる初期社会学の視座の特質を再検討し,社会問題と社会主義思想の影響と社会学の組織化,社会有機体説と建部遯吾の国家主義的社会学の展開,ならびに遠藤隆吉心理学的社会学と集合行動への理論的視座の転換に関する分析(2022年度).[II期] 大正デモクラシーと新中間階級論,欧州からの群集論の導入と出版メディアの関係,文化社会学と市民科学としての社会学批判論の展開,そして清水幾太郎の市民社会論におけるイデオロギー批判に関する分析(2023年度).[Ⅲ期] 戦前の理論社会学の形成と形式社会学,高田保馬の第三史観と勢力論にみる社会変動と運動分析に関する分析(2024年度).とくに[Ⅱ期]では,日本社会学史上にみる群集論に多大な影響を与えてた欧州社会学のなかで資料が不足するフランスとイタリアの文献資料を収集・分析することで,それら古典的理論の明治・大正期の日本社会学への導入過程にみるイデオロギー性と日欧間での社会学思想の発展過程にみられる差異についても追究した.
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Strategy for Future Research Activity |
近年のポピュリズム研究や「市民圏論」に通底する社会学理論の学説史的源流に遡り,近代日本社会学の社会思想的基盤から世紀転換期の群集/大衆社会論や市民社会論,そして20世紀前葉の社会運動・革命論へと至る系譜を辿り,そこに底流する集合行動に対する知識人階級の時代認識と危機意識,ならびに社会統制と秩序維持に志向する知識人の学問的イデオロギーとエリート主義の影響について討究する.民衆騒擾に関する社会学的研究は歴史社会学からのアプローチが主流であるのに対し,本研究では歴史的特殊性や時代背景,社会的現実から引き出される社会学者の時代意識や歴史認識のあり方と,その歴史的条件のなかで社会学自体が一個別科学として荷わされてきた問題群を明確にし,社会学の発展過程のうちに形成されてきた学界知識人の学問的・政治的イデオロギーを浮き彫りにする知識社会学を展開していく.カデミズム主流においてポピュリズムは,①社会的な問題解決行動にみる論理的短絡性や手段の非制度性,②集団心理の触発と情動性,③反エリート主義や反知性主義などの特徴から,ポピュリズム運動は大衆主義や人民主義が陥る「大衆迎合主義」や「衆愚政治」の顕現として論難される傾向にある.大衆主義は多数派による少数派抑圧の危険性を孕む一方で,人民主権を前提とする間接民主制による「民意」の代表性が危機に瀕した場合や,エリート層による既得権益や利権構造への権力行使に対抗する制度的手段が調達困難な場合に,反エリート主義を掲げる直接民主制に接近した政治理念とポピュリズムの政治形態への支持を拡大する,という仮説について検証していく.民衆による集合的企てや「異議申し立て」において出現するポピュリズムが,政治経済・社会文化状況に制約された歴史的非拘束性から多面的性格を帯びることが証左され,そのことがポピュリズムの定義論と認識論を多角的な視座において理論構築を図る.
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