Project/Area Number |
22K01868
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中西 典子 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (90284380)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | ローカル・コモンズ / ローカル・シェアリング / ダウンサイジング社会 / 地方自治 / 公共システム |
Outline of Research at the Start |
本研究は、新型コロナ禍や災害リスクを抱える社会において、グローバル/ナショナル・スケールでの経済至上主義や、アンバランスな国土/人口構造からの脱却をはかるべく、ローカル・スケールへとダウンサイジングすることの重要性に着目する。そして、かかるオルタナティブな「ダウンサイジング社会」がめざすローカル・スケールでの社会経済を考察するにあたって、「ローカル・コモンズ」および「ローカル・シェアリング」という視点を用いながら、地域の公共財が、ローカルの主体である地方自治体と地域社会(地域住民)においてどのように共有/共用されているのかという点を分析し、地方自治の課題を明らかにするものである。
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Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、前年度の研究をふまえつつ、「ポスト経済成長期」という視点の吟味とともに「成長の限界」や「脱成長」という概念を再検討した。ここでは、①「持続可能性」において「成長」は不可欠であること、②資本主義経済は「成長の限界」を絶えず刷新していくがゆえに、ポスト経済成長という視点は資本主義経済そのものを否定せずには成り立たないこと、そしてそれは現段階では非現実的であること、③したがって、問われるベきは「脱成長」ではなく、資本主義経済の拡大成長に依存する社会を「脱構築」することである、という認識に至った。こうしたことは、「経済」の仕組みと「成長」の内実を見直すという難題とも関わってくるが、少なくとも、GDPや株価の上昇、人口の増加といった物差しで経済成長を評価することへの問題性は指摘できる。いわば、GDP・株式市場・人口崇拝が、自然環境の破壊や貧富の格差、ジェンダーなどの社会問題を生み出していることに留意が必要である。例えば、自然物を破壊しコンクリートで埋め立てるスクラップ・アンド・ビルドを行えばGDPは上昇するが、自然環境の保全やその土地の伝統・文化に根ざした地道なモノづくり、リサイクルやリペアを通じての長期的なモノの消費(使用)等が行われると、GDPは上昇しない。また、株式市場は、全企業の業績を正当に反映するよりも一部の巨大IT企業に席巻され、株式への投資は株価に翻弄される投機的なマネー・ゲームと化している。そして、少子高齢化に伴う人口減少に危機感を抱かせるような風潮は、「産む性」である女性の負担感や嫌悪感を増幅させるとともに、「老害」と揶揄される高齢者の「生きづらさ」を招くことになる。このような、歪んだ経済至上主義を是正し、「持続可能な成長」を実現し得る社会経済システムを再構築することが求められている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の2年目となった2023年度は、新型コロナ禍がある程度収束したことにより、研究計画におおよそ見合ったかたちで進んでいる。なお、英国現地調査については、この間の政治・経済情勢の影響および予算上の制約により、次年度のみの実施とした。
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Strategy for Future Research Activity |
「5.研究実績の概要」で記述したように、「持続可能な成長」を実現し得る社会経済システムの再構築に向けて、注視すべきは、「ダウンサイジング社会」への評価である。人口減少局面においても、日本の国土面積を鑑みれば、5,000万人程度でも十分である(国土規模が同程度のスウェーデンの人口は約1,000万人)。こうした規模に見合う社会経済のあり方を考察することが肝要であり、ローカリゼーションとともにローカル・エコノミーの創発がその主軸となる。依然として東京一極集中が解消されないなかで、農山村地域の衰退と荒廃がますます深刻化している。こうした国土/人口構造のアンバランスは、自然環境の破壊や大規模災害を招く要因となっている。都市部への人口集中によって農地や山林の保全・管理に人の手が入らなくなれば、食料問題や災害リスクに直結する。ロボットやAIを投入した農林業のスマート化も試みられてはいるが、機器の導入や遠隔操作技術、トラブル処理など多くの課題と限界がある。そのため本研究では、人口の地方分散の実現に向けて、地域資源の管理や地域産業(地場産業)を活かした地域の社会経済システムにおけるサステナビリティのあり方に着目する。本研究におけるローカリゼーションおよびローカル・エコノミーは、地域内で完結するものではなく、むしろ外部との関わりのなかで創発されていくものとして捉えている。そのために、「ローカル・コモンズ」の視点を「ローカル・シェアリング」という考え方に連接することで、その現代的再生を図っていく。コモンズに関しては、共有資源の持続的管理の条件を提示したマッケイらや地域社会による共同管理の有効性を提起したオストロムの研究、ハーヴェイによるコモニング分析、宇野重規のリワイヤリングの視点等を参照しつつ分析を進めていく。
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