がんサバイバーに対する集団精神療法のエスノメソドロジー・会話分析研究
Project/Area Number |
22K01881
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
水川 喜文 北星学園大学, 社会福祉学部, 教授 (20299738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鴨澤 あかね 同朋大学, 社会福祉学部, 教授 (50582730)
大島 寿美子 北星学園大学, 文学部, 教授 (60347739)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | エスノメソドロジー / 会話分析 / 集団精神療法 / がんサバイバー / システム・センタード・セラピー(SCT) |
Outline of Research at the Start |
本研究では、エスノメソドロジー・会話分析の基本的な思考法や発想を用いて、システム・センタード・アプローチ(Systems-centered approach/ theory, SCT)による集団精神療法の実践において、がんサバイバーの当事者がどのように相互支援を行っているかを考察・分析する。その際、がんサバイバーの当事者団体(NPO)と連携し、集団精神療法であるSCTによる「今、ここで」の語りを実践に注目して考察する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、エスノメソドロジー・会話分析(EMCA)を基本的な方法論・発想として用いることで、システム・センタード・アプローチ(SCT)による集団精神療法の実践において、がんサバイバーの当事者がどのように相互支援を行っているかを考察・分析するものである。本年度は、これまでのSCTの基礎的方法論に関する考察、制度的場面におけるEMCAの先行研究の考察(共著・分担執筆)をふまえて、学会大会における発表やワークショップを中心に研究成果を発表した。例えば、水川・鴨澤・大島・泉屋有理(研究協力者)による 「体験を「語る」ことのない、体験の共有としての「定式化」:「語り」の代替的方法としての集団精神療法の実践」は、第96回 日本社会学会大会において発表された。本研究は、SCTにおけるがん体験者の集団精神療法の諸特性について、MCD、定式化など、EMCAのアイデアをもとに考察したものである。SCTの実践は、(1)体験の物語化に対する強い制約があること(2)「感覚の語り合い」により共有感覚(感情の共鳴)が創発される実践となること(3)「がんの体験」物語の解釈によらない、オルタナティブな共鳴の実践がなされていることを明らかにした。また、鴨澤・大島・荒木章太郎・泉屋による「様々な現場に活かすSCT(Systems-centered therapy/approach):非対称な関係の脱却と対称な協力関係の構築を目指して」は、日本集団精神療法学会第41回学術大会において自主ワークショップとして実施された。本ワークショップでは、SCTの実践を通して、がんサポートなどにおける支援者―被支援者の非対称的関係を脱却し、参与者の協力関係を構築する方途を議論した。以上のように本年度は、SCTの実践を物語化、非対称性などの鍵概念をもとに捉え直す方途に関する研究発表を行ってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は、過年度に実施したがんサバイバーを対象にしたSCTによる集団精神療法の過程の録音録画をデータ化をした上で考察と分析を、引き続き、本研究の方針に沿って進めた。例えば、代表者は、「体験の物語化への強い制約」というSCTの特徴に関して、(a)「感覚の語り合い」により共有感覚(感情の共鳴)が創発される実践(b)伝え返しという、独特の「定式化」による発話のデザインを用いることで、「感覚の共鳴」の調整/精緻化へ至り、クライアントが「機能的サブグループ」を構成するという、この集団精神療法の展開を再解釈することによって、新たな視点を導き出した。さらには、本研究の主たる分析手法である会話分析に関して、言語だけでなく身体動作や視線なども加えたマルチモーダルな視点をもって考察するという試みも開始した(この分析法の第一人者によるワークショップも開催)。また、本年度も、引き続きリモートによる集団精神療法のデータを取得し、トランスクリプトを作成した。鴨澤らは、集団精神療法学会でのワークショップを実施して、データに基づく分析を元に、支援者と被支援者の非対称性の解消という方向性を示した。本年度の研究は、これらに代表される視点を深化させることで、本研究の焦点であるSCTという集団精神療法の実践について、既存の視点にとらわれない探究を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方策としては、本年度(2023年度)までに実施した新たな視点による考察・分析をもとにした学会発表をふまえて、集団精神療法における当事者同士の相互支援の過程をエスノメソドロジー・会話分析によってさらに考察を深めていきたい。まず、がんサバイバー・体験に関する、基礎的・エスノグラフィックな理解については、引き続き、関連組織との結びつきを通して深化していきたい。次に、システム・センター・セラピー(SCT)の実施とその分析に関して、継続してワークショップや研究発表を行うことで、コア概念である「機能的サブグループ」や、支援者と被支援者の非対称性についての考察など、継続的に探究する。さらに、これらの基礎的な現象理解や集団精神療法の実践や考察をもとにして、本研究では、エスノメソドロジー・会話分析によって、実践の再特定化(再分析)を行うことで研究をすすめる。その中でも特に今年度は、相互行為における成員カテゴリー分析(Membership Categorization Analysis)に加えて、「マルチモダリティ」という着想をもって現象を捉えていきたい。これは、相互行為の分析の際、言語だけの相互行為に限らない、視線や身体動作も含め分析を行うという方向性である。本年度、この領域の第一人者であるL.モンダダ教授によるワークショップを実施し、研究代表者は所属のバーゼル大学へ研究出張するなど行った。これをふまえ、研究代表者は、2023年度後半のサバティカル期間において、当該大学に滞在することで連携した研究を行う予定である。以上のように、本年度は、これまでの基礎的な研究成果をもとにしたSCTを実践・展開するとともに、それらをエスノメソドロジー・会話分析によって探究するなかで、いくつかの新たな視点を持って研究を推進する。
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Report
(2 results)
Research Products
(12 results)
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[Book] エスノメソドロジー・会話分析ハンドブック2023
Author(s)
山崎 敬一 (編), 浜 日出夫 (編), 小宮 友根 (編), 田中 博子 (編), 川島 理恵 (編), 池田 佳子 (編), 山崎 晶子 (編), 池谷 のぞみ (編)(分担執筆)
Total Pages
492
Publisher
勁草書房
ISBN
9784788517943
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