Analysis of manners of symbiosis of a Chinese Yunnan Huizu people: Consideration of a problem and a view for the global social building from which Muslim isn't excluded
Project/Area Number |
22K01910
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
首藤 明和 中央大学, 文学部, 教授 (60346294)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 回族ムスリム / 中国イスラーム思想 / 共生 / 移動 / 機能的等価性(参照可能性) / 現象学的社会構成主義 / ニクラス・ルーマン / 社会学 / 中国雲南回族 / イスラーム / 時空論 / 意味論 |
Outline of Research at the Start |
今日、世界人口の2割をムスリムが占め、イスラーム世界を排除しない形で、持続可能な地球社会を構築することが求められている。信仰を異にする人びとのあいだで、ムスリム自身は、いかなる共生の作法を実践しているのか。また、そうした作法が、特定の文脈だけでなく他の文脈でも問題解決の道筋を示せるとしたら、いかなる条件が必要なのか。ミャンマー国境近く、中国雲南回族の共生の作法の分析を通じて、この課題に取り組む。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ミャンマー国境近くの中国雲南省保山市の回族ムスリムを主な事例として取り上げ、雲南回族ひいては中国イスラーム思想にみる共生の作法を考察することである。 2022年度の研究では、以下の知見を得た。①インタビューデータの分析や族譜、地誌などの収集と読解を通じて、回族の雲南移住来歴、および雲南での回族と漢族の紛争・対立の歴史に関する理解を深めた。②馬注『清真指南』の骨格となる「二元忠貞」の思想や、その思想形成の背後にあるイスラーム法の典礼・儀礼および刑罰に対する馬注の注釈について、共生の視点に関連させて理解を深めた。③馬注の中国全土に広がるムスリム師友ネットワークの実態と機能を、中国イスラーム思想の生成と発展の視点から理解を深めた。④現在の雲南保山回族の地域社会、社会組織、社会的ネットワークについて、清真寺の教長やアホン、信者へのインタビューから理解を深めた。⑤現在の中国イスラーム思想における馬注への評価や、馬注思想の称揚を通じた雲南保山の民族を横断した地域振興の実態、および馬注に所縁のある村落や清真寺、墳墓の歴史や実態について理解を深めた。⑥中国イスラーム思想が、特に雲南回族の移住先であるタイ社会においていかなる影響をもたらしているのか理解を深めた。 初年度の研究では、上記の実証的なことがらに加えて、次の理論的なことがらについても新たな知見を得た。すなわち、時空論の観点や、出会い(encounters)と越境の視点に結びつけて、雲南保山回族の実践する共生の作法が、ひいては中国イスラーム思想の形成と展開が、いかにして機能的等価性を持って土着の社会的文脈だけでなく他の社会的文脈においても問題解決の道筋を示しうるか、その事象的、時間的、社会的な条件について理解を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の当初計画では、雲南保山生まれで明清四大イスラーム思想家のひとりに数えられる馬注(1640-1711)の思想を、主著『清真指南』と儒・仏・道の三教との交流を通じて明らかにすること、現在の雲南保山において、馬注思想の発揚を通じた地域振興が図られるなか、漢族や回族など民族を超えた共生と協働の実態を明らかにすること、さらには、現在の中国における馬注思想や、それに端を発する「中国イスラーム思想」に拠った共生言説を明らかにすることなどを研究目的としている。 研究進捗が「やや遅れている」と自己評価する主な理由として、中国現地ではコロナ禍でのロックダウン政策が長く続いたこと、たとえ純粋に学術的な目的であっても中国政府が外国人研究者の現地調査を強く警戒していること、なかでも特に民族や宗教に関する現地調査は当局の厳しい監視下にあること、さらには日本と中国の不安定な国際関係などがある。 その一方で、回族ムスリムの思想や実態を、<世俗化>や<原理化>あるいは<中国ムスリムの生きにくさ>などといった、人口に膾炙した通俗的な説明ではなく、①宗教自身の自己観察の回帰的ネットワークのなかで、宗教的コミュニケーション自身が、事象・時間・社会の各次元での出来事をどのように意味づけているか、②こうした回族ムスリムの宗教活動が、現代の社会において、いかに宗教にかかわるコミュニケーションを生み出し、強化につなげているのかを詳らかにしている点で、本研究は厳しい研究環境下にあっても一定程度の学術的成果をあげていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査を安全で効率よく進めるため、初年度の調査研究で得られた知見も生かしながら、回族ムスリムに関する考察を理論的により限定した形で設定し、現地インタビュー調査に加えて、質問紙調査やオンラインでのインタビュー調査など、異なる多様な社会調査法をなお一層活用していきたい。 具体的には、①宗教的確信は個人の体験の意味(差異)にますます密接に関連づけられていること、②同時に、そうした信仰の証を支える社会的な同意や支持を求める個人の動機も強まっていること、③それゆえ個人化とは、単に個人にかかわる問題なのではなく、むしろ他方で組織の役割を強化し、個人に対する同意や支持の提供を組織に促していることなどを踏まえた上で、④宗教が独自の排除と包摂を実践し、宗教的なコミュニケーションを活性化する秘訣は、「最小単純度(requisite simplicity)」という概念から説明できること(最小単純度とは、お祓いやお守り、唯一の神しか存在しないというテーゼや、告解による「罪の意識」など、願い事の成就や教義の解釈、救済の方法などがモジュール化されて個人に提供されることをいう)、⑤現在の回族ムスリムは、この最小単純度が増大する傾向にあること、⑥それゆえ宗教自身による出来事の宗教的観察のなかで、宗教自体が信憑性を失うリスクにさらされていること、⑦このリスクへの対応のために、宗教的に組織的な支持や承認が必要とされていること、⑧現在の宗教システムは、最小多様度と最小単純度との適切な混合関係を求める過程にあるということ、⑨これら①から⑧の作業仮説に拠って、現実の観察によるデータ生成と理論・モデルによる検証の往還を繰り返してゆくこととする。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)