Project/Area Number |
22K01938
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
草柳 千早 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40245361)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 日常的実践 / セルトー / 身体 / 知識 / 過労死・過労自殺 / 組織からの逃走 / 記憶 / アルヴァックス / 共在 / 逃走 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、フーコーが論じたような権力関係の網の目がよりきめ細かくなっている現代社会における抵抗的な実践をどのように分析しうるのか、その実践はいかにして可能となるのかを探索する。その目的は「身体管理への抵抗」「組織からの 逃走」「過去の想起」という三つの実践に関する理論的・経験的な検討を通して、フーコー に影響を受けつつブルデューの実践論を相対化しようとしたセルトーの「なんとかやってい く」論の社会学的応用可能性を検討することである。それにより、知と権力の支配的な圏域における日常的実践に対して、実践をおこなう個人の主観的世界とその場に働く多層的な権力・管理的支配を論じる観点を析出する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究はセルトーの「なんとかやっていく」論の社会学的応用可能性を検討する。3つの視角、「身体管理への抵抗」「組織からの 逃走」「過去の想起」を課題Ⅰ、Ⅱ、Ⅲとして設定し研究を進めてきた。前年度に引き続き、第一に、セルトーの日常的実践論について、理論的理解を共同研究者(研究代表者草柳と研究協力者の松井怜雄と武内保)間でさらに共有し深化させる、第二に各課題に各分担者が取り組む、以上の2層の作業に取り組んだ。第一の作業では、セルトーの重要著書の講読を2022年度に引き続き読書会形式で行い、「なんとかやっていく」論の理論としての構成と性格、方法的視点に加え、経験的研究方法について、研究者間で理解を深め、社会学的アプローチへの応用可能性について検討を進めた。第二の各課題については以下を進めた。課題Ⅰは、身体管理に関する諸制度と言説、戦術に係る事例の収集・整理・分析までを年次計画としていたが、これを、健康管理に関する知識と日常的実践との関係に焦点を絞って進め、論文を執筆中である。課題Ⅱは、年次計画の通り、前年度に続き、サークル活動のフィールドワーク、並びにそこに集まる人々への半構造化インタビューを進めた。新たに5件のインタビューを実施し、2022年度分と合わせて分析を開始した。調査分析からの知見を踏まえ、ライフストーリー研究として本課題をまとめていく予定である。課題Ⅲは、第一に、M.アルヴァックスの記憶理論について、ベルクソン哲学批判と記憶の科学批判という大きく2つの視角から検討し、とくに前者の点について、二つの学会報告と論文投稿(年度をまたいで査読中)をおこなった。第二に、セルトーの記憶論とアルヴァックス理論を手がかりとしながら、原爆ドーム、原爆死没者慰霊碑、平和祈念資料館などを対象として、それらがもつ政治性および記憶装置としての役割という観点から分析し、現在、論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績概要欄に記載のように、研究は、第一に、共通基盤セルトーの日常的実践論についての理論的、経験的検討(全員)、第二に、各課題への取り組み(分担者毎)の2層の作業を同時進行で行なってきた。いずれにおいても、おおむね順調であったが、進捗の緩急はあった。第一の作業では、2022年度に引き続き全員読書会形式で文献講読を進めたが、原著と英語版を組み合わせた精読に時間を要し、また講読のため継続してきた読書会の設定が年度の後半難しくなり、講読と経験的研究に関する理解の深化と共有が、当初の計画通りには進まなかった。 I~IIIの課題毎の進展については、3年のうちの2年目として、それぞれ可能な限りで課題に対応する作業を推し進めたと言える。課題Ⅰでは、成果を年度内に論文にできなかったが、セルトーの理論的枠組みに準拠しながら、A. シュッツらの生活世界の知識論、他、医療化論、専門知論等の議論を手がかりとし、知識論的な観点を得て課題への新たな角度からのアプローチを押し進めた。課題Ⅱでは、サークル活動のフィールドワークと個人に対する半構造化インタビューを主たる作業として進めた。必要なデータ数はおおむね集まったが、分析作業は計画以上には進まなかった。しかし、分析を進める中で、インタビュー対象者にとって組織を離れるという経験が自らのライフ(生、生活、人生といった多様な意味を含む)の観点から意味づけられていることがわかった。そのため、今後はライフストーリー研究として本課題をまとめていく予定である。課題Ⅲは、アルヴァックス理論について、2つの学会報告をおこなうとともに、2月末に論文を投稿した(年度をまたいで査読中)。 以上より、2023年度の研究は全体としては順調に進んだが、細かくは時間を要し、遅れた作業もあり、計画以上の進展とはならなかったと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究最終年度として、引き続き、第一に、共通基盤セルトーの日常的実践論についての理論的・経験的検討(全員)、第二に、各課題I~IIIへの取り組み(分担者毎)の2層で研究作業を進めていき、その上でそれらを統合し報告書を作成する。 第一の作業としては、セルトーの日常的実践論について、理論的・経験的検討をさらに進め、その理解を研究プロジェクトメンバー間で共有、深化させ、本研究の結論として、セルトーの日常的実践論の現代的・社会学的な応用可能性について論じる。 第二に、3つの課題毎の推進方策としては以下を考えている。課題Ⅰでは、2023年度の成果をまとめた上で、現代社会における身体・生の管理をめぐる権力とそれに応じる戦術的な実践の諸相について、研究をまとめる。課題Ⅱでは、これまでの調査および分析からその必要性が導出された、ライフストーリー研究の観点に立ち、現代社会を「なんとかやっていく」可能性の一つとしての組織からの逃走を論じ、まとめる。。課題Ⅲでは、2022年度以来のアルヴァックス理論研究をまとめるとともに、2023年度の積み残しとして、広島の原爆を対象とした記憶と空間の関係についての研究をまとめる。最終的に、以上の研究をセルトーの議論の社会学的応用という観点から整理する。 最終的に以上の成果を統合する。具体的には、1)第一の作業から構成されるであろうセルトーの日常的実践論の社会学的応用可能性に関する議論を、課題I~IIIに共通の理論的準拠枠組みとして位置付け、2)各課題毎の最終的な成果を取りまとめる。その上で、3)課題間の相互連関、各課題の1)の準拠枠組みとの関係を整理して示し、4)研究プロジェクトとしての最終的なとりまとめを行っていく。 なお本研究課題にはさらなる研究期間が必要であると、この2年の研究を通して認識するに至った。研究を継続できるよう準備も合わせて進めていきたい。
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