Project/Area Number |
22K02247
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09010:Education-related
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
勝山 吉章 福岡大学, 人文学部, 教授 (30214357)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
|
Keywords | フレーベル / ナチズム / 幼児教育 / 幼稚園 |
Outline of Research at the Start |
一般的に、ナチズムは強権的にドイツの教育を支配していったように受け取られているが、ナチスが期待した以上に、フレーベル主義者たちはナチズムに擦り寄っていった。そして、反ユダヤ主義、国家社会主義精神を幼稚園の遊びのなかで子どもたちに涵養していった。その事跡を追っていくことで、自由主義的教育、民主主義的教育のあり方を幼児教育の段階において考察していく。
|
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度に引き続き資料の蒐集・分析を行った。とくに雑誌Kindergartenを、ナチの政権獲得年である1933年から大戦終了まで蒐集し分析した。また資料蒐集では、ドイツ本国でナチズムと幼稚園に関する研究の第一人者Manfred Berger氏の知遇を得て、彼が主催するIda-Seele-Archivから貴重な資料(文献、写真等)の寄贈を受けた。資料分析なかで、フレーベル主義幼稚園がナチに主体的に同質化(gleichschaltung)していくにあたり、反ユダヤ主義の絵本(Bilderbuch)と命令と服従の指導者原理を問う「戦争ごっこ」(Kriegsspiel)が重要な役割を演じていたことに気付いた。そこでErnst HiemerのDer Giftplitz(毒キノコ)を邦訳し解説を付けて紀要に掲載した。またこの紀要内容を基に、フレーベル主義幼稚園と反ユダヤ主義であったかを日本ペスタロッチ-・フレーベル学会第40回大会で報告した。「戦争ごっこ」については、雑誌Kindergartenや、カトリックの幼児教育雑誌に描かれている「戦争ごっこ」の実際、およびIda-Seele-Archivが保有する写真資料等から分析した。これらのことから、ナチスドイツでは、幼稚園教師が率先して子どもたちにSA(突撃隊)やSS(親衛隊)の真似をさせ、ヒトラーへの忠誠と、命令と服従による指導者原理に基づく保育を行っていたことが分かった。この 内容を共著『いま、教室に生きる教育の思想と歴史』の第8章第2節「ナチズムとフレーベル主義幼稚園」にまとめた。フレーベル主義幼稚園がナチによっていかに賞賛されたかの集大成が、1940年にドイツ各地で開催されたフレーベル幼稚園誕生100周年祭であることが分かった。それらの内容を、幼児教育史学会会報に掲載した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度では、ナチと幼稚園に関する研究の第一人者Manfred Bergerの著作Der Kindergarten im Nationalsozialismus(2019)およびDer Kindergarten im nationalsozialistishen Deutschland am Beispiel der Fachzeitschrift Kindergarten(2015)を将来の邦訳出版を視座に全訳した。また、ドイツ・フレーベル連盟の機関誌Kindergartenを蒐集し分析した。それらから得た知見を基に、九州教育学会で、「ナチズムと幼稚園」と題する報告を行った。 令和5年度では、共著『いま、教室に生きる教育の思想と歴史』の第8章において、フレーベル主義幼稚園が「戦争ごっこ」において、ナチズムに主体的に協力していったことを書いた。また日本ペスタロッチ-・フレーベル学会紀要『人間教育の探究』に「教育思想史研究としてのフレーベル-旧東ドイツとナチズムのフレーベル研究から-」を掲載し、ナチズムがフレーベルの対ナポレオン祖国解放戦争への従軍や愛国心、および個が全体に奉仕する部分的全体の思想を高く評価したことを明らかにした。 フレーベル主義幼稚園とナチの蜜月を問うために、反ユダヤ主義を幼稚園がいかに保育実践に取り上げたかについて、エルンスト・ヒーマーの『毒キノコ』を邦訳し、紀要に掲載した。この内容を基に、日本ペスタロッチ-・フレーベル学会第40回大会で、「フレーベル主義とナチズム-ドイツの幼稚園がいかにナチズムに協力したかに焦点をあてて-」と題する報告を行った。さらに、フレーベル主義幼稚園のナチへの忠誠の見返りに、ナチがフレーベル幼稚園誕生100周年を大々的に祝ったことを「幼児教育史学会会報」で述べた。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和6年度においても、必要資料の蒐集・分析にあたらねばならない。令和4年度、5年度は、国内で入手できる資料、国外にあるものでもウェブ等で入手できる資料の蒐集にあたったが、令和6年度は、渡独してBBF(ベルリン教育史研究所)附属図書館や、DillingenのIsa-Seele-Archivなどで資料蒐集にあたる所存である。 次に得られた資料などを基に、ナチズム期のフレーベル主義幼稚園の運動と理論について論究していく。運動については、ドイツ・フレーベル連盟の議長だったHans Volkeltを、理論についてはPFH(ペスタロッチ・フレーベルハウス)の指導者だったErika Hoffmannについて、彼らの著作・論考をもとに研究していく。また、フレーベル主義幼稚園の反ユダヤ主義を明らかにするために、Elviva Bauerの子ども向けの絵本、Trau keinem Fuchs auf gruener Heid und keinem Jud bei seinem Eid!を邦訳していく。ナチとフレーベル幼稚園との結びつきは「戦争ごっこ」において明白に表出されることから、令和5年度に引き続き、雑誌Kindergartenなどから戦争ごっこの実際例を引き出していく。それから、フレーベル幼稚園誕生100周年をいかにナチが祝福したかについて、当時の記念誌などをもとに分析していく。 これらの研究で得た知見を、国内の教育学関係学会(例えば「九州教育学会」「ペスタロッチ-・フレーベル学会」など)や、国際学会(例えば「国際フレーベル学会」など)で報告していく所存である。
|