韓国における教員団体交渉の機能と構造-日本との制度比較の視点から-
Project/Area Number |
22K02274
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09010:Education-related
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鄭 修娟 九州大学, 人間環境学研究院, 助教 (10882897)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 教師の労働基本権 / 教員組合 / 団体交渉 / 教員団体 / 教員の労働基本権 / 教員の専門性 / 教育労働法 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、日本との比較分析の視点から、教員団体の団体交渉が教員の労働条件にいかなる影響を与えているかを検証し、その役割を問い直すことを目的とする。韓国では、教員労働組合の団体交渉(協約)と専門職団体の団体協議が別の法制度を根拠として同時に行われており、本研究では、両団体が「教員は専門職か、労働職か」という二項対立図式を変容してきた点を認めつつも、「団体交渉」の内実(プロセス)の側面に着目することで、教育行政との関係性から各自の特色をも見出す。そこで、団体交渉の二元化の保障が、両団体の特色を生かす「場」を提供し、教員の労働環境を改善するにあたり、有効的手段として活用されていることを解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、現地でのインタビュー調査及び資料収集を通じて、二大教員団体(韓国教員団体総連合会、全国教職員労働組合)が実施してきた法制定・法改正運動について分析を行った。具体的には、「法社会学」の分析枠組みを用い、従来、違法とされてきた教師の教育労働運動が、当事者たちの「法意識」を反映し成文法化していく過程(法の上昇機能)及び、法成立後の団体交渉や法解釈をめぐる論争・紛争を通じて、法が社会に浸透していく過程(法の下降機能)を検討した。 まず、前者については、韓国国立中央図書館等で収集した一次資料(個人のメモや感想文等)を分析し、教師集団自らが自主的な組織結成のために「教師の労働基本権の保障が必要である」と意識し始めていたこと、法に対する批判や改正を要求するにとどまらず、自ら法律の改正案を作成・提案するに至る両組織の戦略に着目し、当事者たちの法意識がより発展していくプロセスを明らかにした。 後者については、教員組合関係者(前委員長)へのインタビュー調査及び二大教員団体による団体交渉(協定及び協約)の内容(議事録等)を通じて、教員団体と教育部・教育庁による団体交渉を媒体に、法制度(教員地位法及び教員労組法)が社会でどのように機能しているのかを分析した。特に、交渉の結果だけでなく、行政との間で行われる交渉プロセスに着目し、「労使自治のフィールド」として団体交渉が持つ意義を導き出した。さらに、保護者団体や市民団体、学生団体等、幅広い利益集団が、教師の労働条件の改善を公教育の前提条件(子どもの学習権保障のための条件整備)として認識していたことを明らかにした。これらの支持基盤を土台にして教師の労働運動が支えられ、展開してきた点が韓国の特徴であり、教師の権利保障のための「立法条件」であったことを述べた。 令和4年度は、以上の成果を博士論文としてまとめ、学位を取得することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、当初予定していた現地での資料収集及び関係者へのインタビュー調査等を実施し、教員労組法の成立と展開を分析することができ、その成果を学位論文としてまとめ、学位を取得した。具体的には、①「法社会学」の分析枠組みを設定し、②二大教員団体の団体交渉に関するデータを整理、さらに③教師の労働基本権をめぐる最新の政策動向を紹介・分析した。 まず、「法社会学」の分析枠組みを用いたことによって法の形成・成立、運用、変化の全体像を見渡すことができた。特に関係者たちの「法意識」の形成と発展を法成立の重要な変数として位置づけ、組織内部での議論を分析することに重点を置き、その結果、従来の先行研究とは異なり、教員労組法の成立には一般労働法の法理のみならず、「教育法」の側面も重視されていたことが明らかになった。この点は、関係者らの「教職観」を比較することによって読み取ることができ、教員労組法の成立過程に対して新たな分析視点を与えうると考える。 次に、教職員組合と専門職団体が過去20年間行ってきた団体交渉協約・協議内容のデータを整理し、団体協約・協議に至るまでのプロセスを、議事録分析を通して明らかにした。そこで教員団体との団体交渉において教育行政(教育監)の政治的性向や理念が影響している可能性があること、この点から、当該地域の「教育自治」を実現しうるフィールドとして団体交渉を活用できることを問題提起した。 最後に、全教組の法外労組事件(2013年~2020年)をめぐる判決を分析し、法解釈による当該社会の権利意識の変化を検討した。2020年の大法院(最高裁判所)の判決では、教師の労働基本権をすべての人間に保障される「普遍的」な権利として位置付け、教員組合の法的地位を復権させた。今年度は同裁判の内容に加え、教師の権利保障をめぐる新たな政策動向についても紹介・分析することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、教員労組により重点を置きつつ、引き続き現地での資料収集及び関係者へのインタビュー調査等を実施し、団体交渉の実際を明らかにする。 まず、公務員労組とは異なる「教員労組」としての特質を把握するために、教員の労働条件や報酬体系の改善に、教員労組がどのように関与しているのか、どれほど関与しうるのかを調査する。日本と異なり、政治的変化(政権交代)が激しい韓国の特徴を考慮し、政治的要因の影響を受けつつも、それを教員労組がどのように利用し、社会との連携を図っているのか、より動態的な検討を試みる。具体的には、団体交渉を経て協約を締結するにあたって教育監の影響力がいかに作用しているのか、革新系・保守系という二項対立図式を乗り超え、公教育の条件整備という側面から、教育行政が教師の権利保障をどのように位置付け、どれほど重視しているのか、それによって団体交渉の内実は変わりうるのかを分析する。 加えて、教師の権利保障の場面は、教育行政との団体交渉という外部での働きかけのみならず、学校内部での意思形成・決定プロセスにおいてもみられると考える。今後はミクロな事例研究にも目を向け、教育実践における団体交渉の機能も分析する予定である。 また、教師の社会的・経済的地位の変遷をより精緻に検討するために、その給与体系を法制史的に分析する作業も必要である。その変化に教員労組の団体交渉がどのように影響したのかを実証できるならば、関連の立法論まで発展させうると考えられる。そのために、現地での一次・二次資料の収集を行う予定である。 さらに、日本との比較研究をより意識した分析枠組みを設定し、日本における教員労組運動との関連性を明らかにしたい。このために、教員労組の研修会・教育資料等を収集し、日教組が韓国の教員労組の結成や運動にどのような影響を与えてきたのかを実証することで、日本の研究にも新たな視点を与えうると考える。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)