Project/Area Number |
22K02592
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09040:Education on school subjects and primary/secondary education-related
|
Research Institution | Kagoshima Women's Junior College |
Principal Investigator |
内田 豊海 鹿児島女子短期大学, その他部局等, 准教授 (00585846)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
|
Keywords | 個別最適な学び / 学びの個別化 / 教材開発 / 数学教育 / 自由の実質化 / 自由の相互承認 / 自由進度学習 / 民主主義 |
Outline of Research at the Start |
「学びの個別化」とは、従来の学校教育で行われてきた一斉授業とは一線を画す新たな学びの形態であり、学習者が自ら学習計画を立て、主体的に学びを行うものである。本研究は、数学教育において、(1)これまで実際されてきた学びの個別化の体系化とその内実の実証し、(2)そこから浮かび上がる課題を克服すべく、新たな学びの個別化の開発と実践しる。そして(3)学びの個別化の評価枠組みの作成し、数学教育における学びの個別化の方向性を指し示すことを目指す。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、算数・数学教育における個別最適な学び、協働的な学びのあり方を検討すべく、教育哲学を基にそれらの教育目的を明確にし、授業実践と評価・改善を繰り返しながら、学びの個別化・協働化の授業構成原理を導出しようというものである。 23年度には、教育哲学を紐解き、学びの個別化は「自由の実質化」のために、学びの協働化は「自由の相互承認」のために、そしてそれらは相互補完的に結びついており、どちらか一方のみでは成り立たないことを示した。さらに様々な学校で行われている授業実践を参観し、それらの特徴を整理・分類した。「個別最適な学び」の中でも、個別最適化する主体が生徒だけでなく、教師の場合もあれば、AI型教材の場合もあり、その結果として育まれる能力も様々な様相を持つことを見出した。同時に、学びの個別・協同化が実現することが、自由の実質化・相互承認を必ず保障するわけではないことも確認した。 24年度は、自由の実質化と相互承認を担保可能な「学びの個別・協働化」を実現すべく、小学校において授業実践と評価を繰り返し行い、その授業構成原理を提示するに至った。一単元の前半部分を、生徒が自ら学習計画を立て、自由な進度と方法で学習する自由進度学習とし、その中で他者や教師との関わりの中で、自らに最適な学び方を学んでいく。ここでは、学びの個別化と、ゆるい協働化が実現する。後半部分では教師が教材開発を通し、数時間かけて実施するプロジェクト学習を行う。例えば、「拡大図・縮図」の単元では、自由進度学習により単元の学習を個々で終えた後、残りの時間数を用いて「学校の地図作り」を計画した。生徒はグループごとに、各教室や図書室や図工室など校内を周り、議論しながら測量し、その結果を作図していく。この中で強い協働的な学びが自律的に育まれていくことが見られた。これらの学びを検証することが今後の課題である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題は、学びの個別化に関して以下の4点を明らかにすることである。 すなわち(1)現在行われている授業の実態を把握すること、(2)それらの授業における教師の授業観及び行動を知ること、(3)学びの協働化との連続性を探りながら授業実践を行うこと、(4)学びの個別・協働化により育まれる「能力」の評価枠組みを作ること、の4つである。 研究実績の概要で示したように、24年度までに、(1)から(3)までの課題に対応する研究を行うことができ、当初の計画通りである。 25年度には、(3)の授業実践をさらに深め、具体的事例を増やしていくこと、そして(4)の新たな評価の枠組みを提示することを重点的に行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
25年度の研究計画は次の2点である。 1つ目は、24年度に導出した授業構成原理の正当性や成立条件を確認することである。実践と理論を往還しながら、学びの個別化と協働化の配列、そしてプロジェクト化を連続的に行うことで、自由の実質化と相互承認を担保できる授業構成原理を提案した。一方で、これはアクションリサーチの結果であり、様々な諸条件の上で成立した原理である。そのため、単元、生徒、教師といった諸条件を勘案しながら授業実践を繰り返し、諸条件が授業構成原理へ与える影響を分析すること、そして多くの実践事例を広く提示し、教育関係者から広く批評を仰げる環境を整えることを進めていく。 また2つ目として、学びの個別化の評価枠組みを提案することが挙げられる。学びの個別化は、「自由の実質化」を目的とする営みであり、これまでの教育評価の枠組みを当てはめることはできない。ここで、これまでの「学力」を基盤とする評価で重視されてきたことを含め、新たな強化枠組みを設定するか、それとは別途、「自由」を尺度とする枠組みにするかを判断する必要があり、さらにはそれは測定・記述可能なものなのかを詳細に検討しなければならない。 以上が、今年度行う研究の概要であるが、何よりも学びの個別・協働化の妥当性と事例を広く周知することが重要であると考えてる。過去2年間の研究より、現在学校現場で行われている個別最適な学びの実践は、各学校各教員が個別に試行錯誤しながら行っており、目的不在であったり、個別最適化する主体の履き違い、自由を放任と皆して行う実践など、本来の趣旨から離れている場合も多い。それは、この新たな取り組みの理論的整備も実践の蓄積も不十分であることに起因しており、本研究の成果をその環境整備の一端に加えられたらと願っている。
|