Project/Area Number |
22K02962
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09080:Science education-related
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
北沢 千里 山口大学, 教育学部, 准教授 (30403637)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2025: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2024: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | 棘皮動物 / 生物進化 / 発生 |
Outline of Research at the Start |
本研究では、Evolution & Development(エボデボ)の観点から、棘皮動物の発生を基に、中学校・高等学校・大学で活用できる生物進化の教育プログラムを開発する。特に、棘皮動物の各綱をベースに、各種の発生過程を追跡し、それらの情報を基に、発生型の多様性、成体原基形成の様式の多様性、幼生の再生能の有無の観点から、どのように棘皮動物が進化してきたのかを学習するための教育プログラムを検討する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「生物が如何に進化し、人類が他の生物と共存しながらいかに主として存続していけるか」という、生物進化の理解を深め、子どもたちがより身近に体感できるようなエボデボ教育プログラムを開発することを目的としている。特に、海産動物の棘皮動物の発生の学習を中心に、発生過程における多様性を子どもたち自らが観察し、具体的に理解することのできる教材の開発を目指すものである。 当該年度も、山口県沿岸に生息する棘皮動物の発生過程の基礎データ収集に加えて、走査型電子顕微鏡観察・凍結切片作成用の試料も十分に確保できた。特に、ナマコ類の繁殖時期をおおよそ確定でき、発生過程を追跡した。人工受精が成功していないクモヒトデ類については、配偶子の放出は可能となった。また、直接発生型のヒトデ類の変態個体とウニ幼生の凍結切片を作成し、内部構造の観察を行った。 更に、ウニ類の胚や幼生の調節能・再生能の有無について、顕微手術・移植実験を行った。小割球領域の除去により、コシダカウニでは原腸陥入が遅れるのに対して、サンショウウニでは遅れない。その後、これらの胚は4腕幼生になるのに正常発生より遅延して発生し、攪乱された方向に成体原基となる細胞塊も形成した。しかしながら、動物半球への小割球の移植により、サンショウウニの小割球は他種より弱い誘導能をもつことが明らかとなった。次に、ウニ幼生を正中線で切断した。これらは失った部分を再生し、左側部分個体は両側に、右側部分個体は左側に成体原基を形成する。この再生過程において、正常発生で左右極性の決定を担う因子が関与するかを阻害剤処理により検証した。左右部分個体に阻害剤処理を連続的に行ったところ、濃度依存的に骨格形成あるいは再生が阻害され成体原基形成方向や形成の有無に変化が生じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、山口県沿岸に生息する棘皮動物5綱の内、ウニ・ヒトデ・クモヒトデ・ナマコの4綱まで発生過程を網羅的に追跡することが可能となった。その結果、前年度以上に各種の変態に至るまでの発生過程の形態的特徴を網羅できただけでなく、各発生段階における胚や幼生の固定試料も十分に確保することが可能となった。今後、これらを用いて、より詳細な走査型電子顕微鏡観察ならびに切片を作成して内外の形態的特徴を追跡する。人工受精が成功していないクモヒトデ類については、当該年度も継続して人工受精法の確立を試みたところ、配偶子の放出は温度刺激により可能となった。しかしながら、それらが受精し発生するところまでは認められなかったため、今後、改良が必要である。更に、サンショウウニ類の発生初期胚において、割球の能力が種間で異なっていることが、顕微操作により明らかとなった。このことは、近縁種間で見られる”進化“過程のひとつとして、新たな知見となった。一方、発生後期の再生機構は、既に初期発生で用いている経路を活用して行われており、また、種間で保存されていることが予想された。これらは、発生初期と後期の形態形成の違いをも身近に感じられる知見となり、進化発生の分野の教材開発にとって大きな切り口となることが期待される。以上のことから、当該年度の研究の進捗は、おおむね順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに作製した、山口県沿岸に生息する棘皮動物各種の変態に至るまでの各発生段階の固定試料を用いて、走査型電子顕微鏡観察ならびに切片作製により内外の構造を本格的に網羅的に追跡する。また、人工受精法が明らかでない種については、人工受精法と変態まで確実に追跡可能な飼育システムを確立する。引き続き、胚や幼生の調節能ならびに再生能の有無について、各発生段階の個体に対して様々な顕微手術と他の動物で知られている特異因子の阻害実験等を組み合わせて知見を増やす。加えて、成体原基形成様式の異なるウニ類間で、成体原基形成の形態的比較を行う。特に、サンショウウニ類では変態時の詳細な形態形成機構が未だ明らかになっていないため、体内で形成された成体原基がどのように体外に出ていくのかについて、既知種と比較しながら、顕微鏡観察等により明らかにする。以上の結果を基に、各種の個体発生おける発生能の特性の獲得の仕方ならびに内部構造の形成過程の一覧表を完成させる。また、棘皮動物の発生を題材としたエボデボの視点からの教育プログラムを作成し、大学生に対して実施する。例えば、この時切片を用いたカードを利用して、内部構造を立体的に認識しやすい教材の開発や、複雑な変態時における形態形成の各胚葉に分かれた3次元的立体パズルなどの教材に加えて、発生過程や進化を意識させた発生すごろくのような、ゲーム感覚で身近にエボデボを意識できる教材の開発を試みる。
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