疑似科学信念とESBで働く認知プロセスの解明とクリティカルシンキング教育への応用
Project/Area Number |
22K03001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09080:Science education-related
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
菊池 聡 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (30262679)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 批判的思考 / 疑似科学 / 超常信奉 / クリティカル・シンキング |
Outline of Research at the Start |
疑似科学信念や超常信念、陰謀論などの実証的根拠を欠いた信念は、現在の日本の市民社会に数々の深刻な問題を引き起こしている。本研究では、これらの信念は単なる知識不足に起因すると考えるのではなく、認知的な過程の中で形成・強化された信念という性質からとらえる。そして、こうした信念の構成要素やその関連性、信念の強化を規定する認知要因などについて、大学生や成人に広汎な調査を実施してそのデータから実証的に明らかにする。その上で、これらの信念を適切な理解へと修正していくクリティカル・シンキングの取り組みについて、教育上の提案を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
疑似科学信奉や超常信奉、陰謀論などの「実証的根拠を欠いた信念(ESB: empirically suspect beliefs)」の特性や規定因を総合的に明らかにするため、当初の研究実施計画にもとづき、大学生のべ436名を対象とした多面的な自己報告式の尺度項目を用いた調査を継続的に実施した。これらのデータをもとに、まずESBの因子構造と相互関連を検討したところ、おおよそ先行研究と合致する結果が得られた。原題の社会状況のもとで重要性が高まっている陰謀論信奉に関して分析を行ったところ、現実の事象の背景に組織的な意図の存在を想定する高次信念としての「陰謀論(Conspiracy Theories)」信奉は、一般の大学生に広く見られること、および批判的思考態度の一部と正の相関を示すことが明らかとなった。ただし、この陰謀論信奉の傾向は、具体的な陰謀の実在を支持する態度とは弱い関連しか見られなかった。これらの点は、非合理的信念の抑制が期待される批判的思考概念をさらに検討する上で重要な知見となったと考えられる。この結果は、次年度の日本心理学会にて発表予定である。また、この分析の結果から、ESBと遅延報酬割引課題の関連をはじめとした当初予定の諸検討を行い、次年度の調査計画を精緻化することができた。 また、ESBが省察的なメタ認知を促進する批判的思考の有効な教材となりうるという仮説にもとづいて、大学生に向けた汎用的な批判的思考の教材試作を進め、教科書として次年度に公刊するはこびとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では、(1) 自己評価式の質問尺度を使った広範囲な調査と、認知特性を測定する実験的手法を併用して、疑似科学をはじめとした非合理的信念としてのESBの成立と強化の認知プロセスを精緻に明らかにする段階と、(2)その成果をもとに省察的なメタ認知を促進する汎用的な批判的思考の教材を作成し、ESBについての知見が批判的思考の向上において有効性が見られるかを検討する段階が予定されていた。(1)に対しては、大学生を対象とした調査データから有意義な結果が得られ、その成果を学会発表や論文執筆に取り入れて公表し、関連研究者と議論を重ねることができた。本年度に予定していた高校生を対象とした調査は、実施の都合によって次年度に延期となった問題はあるものの、全体はおおよそ順調に進行している。また(2)の段階においても、ESBを単なる欠如モデルにもとづいてとらえるのではなく、科学研究において起こりうる反証不能性やQRP(好ましくない研究行為)などの影響を受けた情報バイアスという観点から分析することで、日常に適用しうる科学的思考としての批判的思考の教材化を具体的に進めることができた点で、おおよそ順調な進捗状況と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に行った調査活動では対象者が大学生に限定されていたが、次年度は大学生とともに高校生に広げて、心理特性を広い範囲でとらえることを念頭に置く。高校生での実施の具体的予定も策定済みである。また、調査を継続する中で、心理的なエージェント検知にかかわる課題などを探索的に組み込むことで、ESBの特性と批判的思考の関連性を、実証データからさらに明らかにしていく方針である。 また、本年度の研究成果を反映させた大学生向けの批判的思考の教材が次年度初頭に公刊され、実際に教育現場で使用される予定である。これを用いた授業に対する受講生からのフィードバックをもとに、本教材の有効性を検討する段階に進むことができると考えている。
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Report
(1 results)
Research Products
(4 results)