いじめ常套句の言語論的分析と対抗言説による啓発教育
Project/Area Number |
22K03034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 10010:Social psychology-related
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
八ツ塚 一郎 熊本大学, 大学院教育学研究科, 教授 (10289126)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | いじめ / 言説分析 / 集団力学 / メタファー / 言語論 |
Outline of Research at the Start |
いじめは集団の病理であると同時に言語の生み出す社会問題である。加害行為を正当化する粗雑な弁解、被害者に対する責任転嫁、傍観の自己正当化など、いじめをめぐっては、事態を悪化させ、適切な対応を阻害する、定型化した言説が大きな弊害をもたらしている。本研究では、いじめにおけるこのような常套句の作用と弊害を言語論的に分析するとともに、対抗言説を用いた啓発教育プログラムを構想する。当事者だけでなく教師をはじめとする大人の言説、さらに、いじめを報道し論評するマクロな言説に通底する常套句のパターンを整理し、それらが人々に与える影響を考察するとともに、対抗言説の創出を通した予防啓発教育を構想する。
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Outline of Annual Research Achievements |
「いじめ」は集団の病理であると同時に、病理や集合体のあり方を記述し同定する言語の歪みがもたらす現象、すなわち「言語の生み出す社会問題」である。いじめ行為において用いられるミクロの言語には常套句や特定のパターンといった偏りを見出すことができる。そうしたいじめを報道し論評する言説にも、いまや手垢のついた常套句や特定の言語的パターンを見出さざるを得ない。このような構造を摘出し対象化するとともに、こうした構造を打開し乗り越えるための対抗言説を見出すことが本研究の目的である。本年度はまず第1に、ミクロとマクロに通底し両者を接合する構造を明確化するため、マクロ言説、特に研究者や評論家の手になる論考やルポの言説を中心に体系的な分析的再検討を行った。この作業を通して、前述した問題意識や申請者の直感を資料をもとに確認するとともに、両者を整合的に位置づける入れ子構造の図式についての着想を得て、資料の追加検討を行うとともにいくつかの試論としてまとめ上げ、学会等での検討に付した。第2に、ミクロな言説における偏りや影響について、かねて取り組んできた教員養成課程学生のテキスト収集をさらに体系的に展開するとともに、メタファーを活用した対抗言説の創出を試みた。第3に、こうした言説分析および言説実践について、方法論的基盤を整備するための理論的な検討を行った。これらの研究および現時点での知見についても学会等での検討に付している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度はコロナ禍の継続により当初予定していた出張等も一部取りやめざるを得ず、資料収集等の活動にも若干の影響が生じた。また同年度途中、申請者の居住自治体でいじめ疑い事案が発生したことに伴い、申請者が第三者調査委員会の委員として調査活動を行うことを行政から求められるなど、当初予定していた研究活動にも幾分かの影響が生じている。しかし、あくまで研究目的を主眼としつつ、活動の方針を修正する、時間的配分を検討するなどのマネジメントを行い、本申請についても研究上一定程度の進捗を得ることができた。第1に、マクロ言説については、見込みとの変更はあったものの、ある程度体系的な検討を蓄積することができ、常套句や言説的パターンというモチーフに通底する論理構造についても重要な洞察を得た。第2に、特にミクロな言説について、収集してきた学生による言説の特徴と傾向を整理するとともに、メタファーを活用した言説実践の可能性とさらなる研究への展望を得た。第3に、これらの活動を支える方法論的基盤についても、関連分野の研究者と討議するなどの機会を得て、方向の妥当性を確認するとともに新たな広がりを持つことができた。次年度以降につながるおおむね順調な進捗を得ることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降に向けた研究の方向性については、前述した状況の変化も踏まえて以下の方策を立てている。いじめ事案の第三者調査委員会委員という、当初想定していなかった社会的活動に継続して携わる必要があり、研究の方向性についても引き続き修正対応が必要である。しかしこの事態は、報道を中心とするマクロ言説の生成過程やその影響を、研究者として詳らかに観察する機会を得たということでもある。もとより社会的活動に対しては誠実かつ倫理的に対応を続ける一方、研究者としての立場から、メディアを中心とするマクロな言説の構造と生成過程を真摯に検討することとしたい。こうした背景をもとに研究としては、第1に、報道や論考というマクロな言説の帯びるパターン、発生する常套句について、本年度の研究を継続して検討を重ね、さらに理論的な精緻化へとつなげていくこととする。第2に、こうしたマクロ言説がミクロな言説に及ぼす影響という観点から既存資料をあらためて検討するとともに、メタファーを用いた実践についても新たな方向性を探索する。第3に、体系的な基礎資料の収集と分析も継続し、言語の生み出す社会問題という根本の問題意識に、経時的な比較の視点も加味することとする。
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Report
(1 results)
Research Products
(5 results)