Project/Area Number |
22K03074
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 10020:Educational psychology-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 麻衣子 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任講師 (60534592)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 視写 / ノートテイク / 書きの流暢性 / 個別最適な学び / ICT教育 / ICT活用 / 視写スキル / 書字 / ワーキングメモリ / 作文 |
Outline of Research at the Start |
黒板に書かれたものをノートに書き写す視写の活動は,学校場面で多く用いられ,児童・生徒はそのスキルの習得と向上を暗黙に求められている。しかし,視写による学習がすべての学習者の記憶や理解を促進させるわけではなく,学習者の認知特性によっては妨害的に働くことも予想される。そこで本研究では提示された内容を視写することが学習効果に与える影響を学習者の特性ごとに検討し,視写に代替するICT等を用いた学習活動を提案しその効果を検証する。一連の研究によって,ICTを活用して学習者の適性に応じた学び方を推進する基礎的知見を提供することを目的としている。
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Outline of Annual Research Achievements |
黒板に書かれたものをノートに写す等の視写の活動は,学校場面で多く用いられ,児童・生徒はそのスキルの習得と向上が求められている。一方で,GIGAスクール構想の推進による一人一台端末の整備により,教育場面でのノートテイクの在り方が変容する可能性が高い。本研究は,視写活動が学習過程に及ぼす効果を再検討し,視写に代替する学習活動の提案と実証を行う研究を通して,ICTを活用して学習者の適性に応じた学び方を推進するための基礎的知見の提供を大きな目的としている。 今年度は,提示された情報を視写する活動が内容の記憶や理解にどのように影響するかを,成人を対象とした2つの実験によって検討を行なった。視写活動に代わる学習活動としては,学習すべき内容がプリントやGIGA端末等で共有され,そこに書きこみを加える活動や,特に何もせずに内容を読んだり聞いたりすることが考えられる。そこで本研究では,学習すべきスライドを提示し,1.内容をすべて書き写す,2.コメント等を書きこむ,3.何も書かない,の3条件で各スライドを学習してもらった。実験1では,大学生20名を対象に,学習スライドを視覚的に提示し,上記3種類の方法で学習してもらった。学習後にスライド内で提示された用語の説明をする課題を課したところ,すべて書き写す条件の成績が他の条件での成績よりも低いことが明らかとなった。 実験2では大学生15名を対象として,実際の授業場面を模して,学習スライドを提示しながら実験者が口頭で説明を加えた。実験参加者には説明を聞きながら上記の3種類の方法でスライドを学習してもらった。その結果,コメント等を書きこむ条件の成績が他の条件よりも高いことが明らかとなった。 どちらの実験においても最も効果的があったと感じた学習方法を参加者に尋ねたところ,半数以上がコメントのみと回答したが,その他の学習方法を支持する学習者も若干名存在した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
視写の活動が学習成績に及ぼす影響について,成人を対象に複数の実験を実施して検討しており,おおむね順調に進展している。 本研究では,視写の活動を問い直し,新しいノートテイクの在り方の提案を目指している。今年度は,情報をすべて書き写す視写の活動と,それに置き換わる活動としてあらかじめ用意されたスライドにコメントを書きこむ活動,さらに,何も書かずにスライド内容を読んだり話を聞いたりすることに注力する活動を条件として設定し,それぞれの学習効果を比較した。複数の実験から,情報をすべて書き写す活動よりも,コメントのみを書く,もしくは何も書かないほうが,提示された学習内容をより記憶している可能性が示された。学校現場では黒板に書かれた情報をノートに書き写す活動が頻繁に行われているが,ただ書き写すだけの活動よりもより効率のよい学習活動があることが示唆され,ICTを活用した今後のノートテイクの方法を考える基礎的資料を提案することができたと考える。 一方で,どの学習方法が最も効果的だと考えたかという質問については,コメントを書きこむ活動が最も支持されたとはいえ,その他の学習方法を挙げた参加者も少なからず存在した。個別最適なノートテイクの方法を提案するために,学習者の特性と効果的な学習方法に交互作用があることが考えられる。個別最適なノートテイクの方法を提案するために,学習者の特性を考慮して本研究の結果を再検討する必要がある。 さらに,今年度は大学生を対象とした実験を実施したが,学校現場により近づけるため,今後は小学生や中学生を対象として同様の実験を行なう必要があると考える。次年度以降に,連携している小中学校に協力を募り,対象者を拡大して実験を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究内容は,以下の二点に集約される。 一点目に,視写による学習活動に影響する学習者の特性をより詳細に検討することである。今年度は視写活動が学習に及ぼす影響について,参加者の特性を考慮せずに検討を行なった。その結果,大学生においては情報をすべて書き写すよりもコメント等を書きこみながらスライド内容を読んだり話を聞いたりするほうがその後の学習成績が高いことが示された。ただし,視写の効果は書きの流暢性スキルなど,学習者の特性によって異なることが考えられる。また,書きの流暢性が低いと視写行動そのものが難しくなることは容易に想像できるが,書きの流暢性が高くても視写が難しい可能性も指摘できる。本研究では視写を支える下位スキルとして他に学習者のワーキングメモリと同時処理能力にも着目し,これらのスキルの習得度合いが視写行動にどの程度寄与するのかを実験的に検討する。視写スキルを支える要因を明確化することで,視写が難しい場合の代替の学習方法を個別に提案できると考えている。 二点目に,小中学生を対象に,今年度実施した視写行動が学習に及ぼす効果を検討する実験を実施することである。特に小中学校で導入されているノートテイクや漢字の反復視写行動は,内容を記憶するために行う行動であることが暗黙の前提とされているが,今年度の大学生を対象とした実験においては視写活動は火なら筋も情報の保持や理解を促進するわけではないことが示された。大学生は書字の流暢性スキルにある程度習熟しており,書字をすること自体に負荷がかからないことが想定されるが,相対的に書字への心的負荷が高くなる小学生や中学生で同じ結果が得られるとは限らない。次年度は小中学生を対象に,視写活動の学習効果を測定する実験を実施する。さらに,上述した参加者の書字の流暢性スキルをはじめとした学習者特性を測定し,学習効果との交互作用を検討することも予定している。
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