Project/Area Number |
22K03079
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 10020:Educational psychology-related
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
渡邊 ひとみ 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 准教授 (90614850)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 肯定的意味づけ / アイデンティティ / ネガティブ経験 / 意味づけ / benefit-finding / 精神的健康 |
Outline of Research at the Start |
ネガティブな過去の経験がアイデンティティの中核をなす場合、つまり自己のライフストーリーに組み込まれ、自分らしさや自己定義について考える際の参照点になってしまう場合に精神的健康度の低下は深刻となる。そこで本研究では、ネガティブな経験がアイデンティティの中核をなすとは具体的にどのような状態を意味するのかを明らかにし、どのようなアイデンティティ構造と肯定的な意味づけの組み合わせがもっとも精神的健康の回復・維持につながるのか、そしてその効果はどの程度の期間維持されるのかを解明する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は(1)ネガティブ経験がアイデンティティの中核をなす状態を構造的側面から具体的に記述すること(1年目)、(2)アイデンティティ構造の違いを考慮しながら、ネガティブ経験に対する肯定的意味づけの効果を検討すること(2-3年目)、である。 今年度は目的(2)を明らかにするための縦断研究を開始する予定であったが、前年度に得られた結果が仮説とは異なる内容であったため、前年度の追試研究を行った。具体的には、全国の成人を対象とするオンライン調査を実施した(700名対象)。「今現在の自分自身・自分らしさ」にもっとも強く影響を及ぼしている出来事について尋ね、ネガティブ経験を記述した者を対象に分析を行った。 その結果、前回と同様に、約4割の者が日常的に1文脈(家庭や職場等の日常文脈のこと)にしか参加しておらず、さらにその文脈が過去のネガティブ経験と深く関わっていることが明らかとなった。また、日常的に複数の文脈に参加している者においても、その中にネガティブ経験と関連深い文脈が含まれているケースが多かった。このことから、ネガティブ経験と深く結びついた文脈において形成されているアイデンティティが「個全体としてのアイデンティティ」にも組み込まれており、とりわけ1文脈構造の者においてはその程度が大きいことが示された。 詳細な分析から、1文脈構造の者はネガティブ経験に対する肯定的意味づけ(対人関係や生きる目的に関する意味づけ)の程度が低く、アイデンティティ確立の程度も低いことが示された。したがって、特に1文脈のアイデンティティ構造をもつ者にとっては、これらの意味づけを促進することが重要であるかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度に実施した研究では、「ネガティブ経験がアイデンティティの中核をなす状態」が多様なパターンによって記述される(特定のパターンがみられるわけではない)といった知見が得られた。本研究テーマについての先行知見はほとんどないため、大規模な縦断研究に着手する前段階において、前年度に得られた知見がきちんと再現されるかどうか(たまたま観察された結果ではないこと)を確認すべきであると判断した。また、前回の研究データ数が十分でなかったことも、上述の判断の一因となった。 研究進度はやや遅れたものの、前年度の結果がおおよそ再現されるに至ったため、次年度は計画通りに縦断研究を開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ネガティブ経験がアイデンティティの中核をなす状態は精神的不健康に結びつくため、その経験に肯定的意味を見出し、経験自体を捉え直すことが精神的健康の促進において重要となる。「ネガティブ経験がアイデンティティの中核をなす場合のアイデンティティ構造」は一様ではないことがここまでの研究で示されたため、今後はアイデンティティ構造の詳細なパターン分けを行いながら、どのような構造パターンの時にどのような肯定的意味づけをすることが効果的であるのかを明らかにする。2024年度以降は、全国の成人を対象とし、3時点における縦断研究を実施する。 また同時に、今年度(2023年度)の研究成果をまとめ、国内外の学会およびジャーナルにおいて報告する。
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