Project/Area Number |
22K03171
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 10030:Clinical psychology-related
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岩永 誠 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (40203393)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大山 真貴子 群馬医療福祉大学, 看護学部, 教授 (10369431)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 過剰適応状態 / 過剰適応傾向 / 自己志向的完全主義 / 社会規定的完全主義 / 見捨てられ不安 / 承認欲求 / タイプA行動 / 組織風土 / 共分散構造分析 / 確認的因子分析 / 労働者 / 過剰適応 / 評価懸念 / バーンアウト |
Outline of Research at the Start |
職場において上司や同僚の期待に応えようと自己犠牲的に過剰労働をする状態を過剰適応という。本研究は,うつ病や強迫症といった病理的問題と関連する個人特性である完全主義に焦点を当て,自己志向的完全主義と社会規定的完全主義が過剰適応に及ぼす影響過程を明らかにし,ストレス関連個人特性やバーンアウトとの関連について,以下の3つの検討を行う。①ストレス関連個人特性が自己志向的・社会規定的な完全主義に及ぼす影響過程の検討,②完全主義の下位因子が過剰適応の下位因子に及ぼす影響過程の違いに関する検討,③過剰適応の下位因子がストレス反応やバーンアウト,仕事の充実感に及ぼす影響過程の違いに関する検討。
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Outline of Annual Research Achievements |
過剰適応とは,社会や文化といった外的環境に過度に適応し,その結果として自己の内的安定性が損なわれた状態を指す。過剰適応により過剰労働に陥る原因として,他者からの承認を得て拒否されないようにする外発的側面と,仕事を完全に仕上げたいという内発的側面が考えられる。令和5年度は,自己志向的および社会規定的完全主義を規定する要因の検討,およびこれらの要因が過剰適応に及ぼす影響について検討した。環境要因として組織風土を,個人要因として職業的アイデンティティや達成動機,承認欲求,タイプA行動を取り上げて検討した。 企業等に就労する労働者1120名(男性540名,女性572名,無回答8名,年齢40.39歳±11.34)を対象に,ウェブ調査を実施した。使用した尺度は確認的因子分析により因子構造の適合度が十分であることを確認した。成人用過剰適応傾向尺度の強迫性格を除いて,いずれの因子もα係数が0.743以上であり,十分な内的整合性があることを確認した。変数間の関連の検討は重回帰分析を行った。その結果,自己志向的完全主義と正の相関を示した変数は,タイプA行動の完璧主義,社会的・個人的達成動機,見捨てられ不安,敵対的組織風土であり,社会規定的完全主義には,見捨てられ不安,社会的達成動機,敵対的風土と支持的風土,タイプA行動の日本的ワーカホリックと完璧主義が正の関連を示した。過剰適応状態の外発的側面に正の関連を示したのは,タイプA行動の日本的ワーカホリック,見捨てられ不安,社会規定的完全主義,承認欲求,社会的達成動機であり,内発的側面にはタイプA行動の日本的ワーカホリック,自己志向的完全主義,強迫性格,敵対的風土が正の関連を示すことがわかった。このように過剰適応状態の外発的・内発的側面には日本的ワーカホリックが共通して関連しているものの,外発的側面には他者との関係性に関する要因が関連していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過剰適応は,職場などの外的環境への適応を重視することによって,自己の安定性といった内面的な適応とのバランスが崩れた状態であると定義されているにも関わらず,これまで過剰適応への陥りやすさである傾向を測定評価する尺度を用いた検討が行われてきた。申請者は過剰適応に陥っている状態を測定する過剰適応状態尺度を開発し,過剰適応を傾向と状態に区分けした評価を行うこととした。過剰適応状態尺度は,過剰適応の外発的側面として他者からの拒否回避と自己犠牲的労働の2因子,内発的側面としてワーカホリックと完璧な仕事遂行の2因子から構成される。令和4年度は,完全主義の下位要素である自己志向的完全主義と社会規定的完全主義,および過剰適応傾向が過剰適応状態に及ぼす影響の検討を行い,過剰適応状態の内発的・外発的側面で規定する要因に違いのあることを明らかにした。令和5年度は,自己志向的完全主義と社会規定的完全主義を規定する要因の検討,およびこれらの要因が過剰適応状態に及ぼす検討を行った。これまで概ね計画通りに進捗している。両調査ともにウェブ調査会社に依頼して年齢層や性別に偏りのないサンプリングすることができていることから,会社等へ就労している労働者の一般的傾向を反映していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は,令和4年と5年で得られた知見をもとに関連の認められた変数に焦点を当て,,また測定する項目数も減らすことで,完全主義と過剰適応を中心に,それらに関連する要因も含めて,過剰適応におよびストレスに及ぼす影響過程を明らかにする。 環境要因として組織風土を,個人要因としてタイプA行動,見捨てられ不安,達成動機を取り上げ,これらの要因が自己志向的・社会規定的完全主義や過剰適応傾向,過剰適応状態に及ぼす影響過程を検討するとともに,過剰適応によってストレス反応やバーンアウト,職務満足感に及ぼす影響過程を検討する。また,過剰適応状態の外発的側面と内発的側面に影響する規定要因と影響過程の違いについて明らかにする。仮説として,(1)タイプA行動や達成動機は自己志向的完全主義と共に過剰適応状態の内発的側面を促進し,ストレス反応を高めると共に,職務満足感も高めると予想される。(2)組織風土や見捨てられ不安といった対人関係に関連する要因は社会規定的完全主義と共に過剰適応状態の外発的側面を促進し,ストレス反応を高めバーンアウトに結びつくと予想される。得られた知見をもとに,職場で過剰適応に陥らないようにするための対処法や介入法について考察する。
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