Project/Area Number |
22K03299
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 11020:Geometry-related
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
佐藤 隆夫 東京理科大学, 理学部第二部数学科, 教授 (70533256)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,000,000、Indirect Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 自由群の自己同型群 / 群のコホモロジー / Johnson準同型 / McCool群 / 非安定コホモロジー / リー代数 / ジョンソン準同型 |
Outline of Research at the Start |
研究代表者はこれまでに一貫して自由群の自己同型群に関する様々な研究に注力してきた.その究極的な目標は,自由群の自己同型群のねじれ係数有理(コ)ホモロジー群の構造を完全に決定することであり,その目的は,群の(コ)ホモロジーを通して,曲面の写像類群と自由群の自己同型群との関係や違いについて,代数的,位相幾何的な記述を与えるためである.
本研究では特に非安定域を中心とする(コ)ホモロジーに関する研究を継続・進展させるとともに,次数付きリー代数のコホモロジー等を用いた新しい課題も積極的に取り入れ,より深く幅広く研究を展開させていきたいと考えている.
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Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に,Outer spaceを利用した階数2の自由群の自己同型群のねじれ係数コホモロジーの計算と,自由群の基底-共役自己同型群のねじれ係数1次元コホモロジー群の計算に関するいくつかの結果が得られた. 自由群のアーベル化に自明に作用する自由群の自己同型たちのなす群を自由群のIA自己同型群という.IA自己同型群のアーベル化を記述する自由群の自己同型群のJohnson準同型は,河澄響矢氏の結果により自由群の自己同型群上に非自明なcrossed homomorphismとして拡張することが知られている.一方,研究代表者の先行研究により,自由群のSL(2,C)指標多様体の座標環と自明表現における極大イデアルを用いて,Johnson準同型の類似物が構成されること,並びに自由群の自己同型群上に非自明なcrossed homomorphismとして拡張することが知られている.しかしながら,コホモロジー群そのものの情報は殆ど分かっていない.指導原理としての,古典的なJohnson準同型に関する自由群の自己同型群のコホモロジーの計算例はあるものの,指標多様体の座標環のイデアル降下列の次数商の構造が大変複雑であり,一般の階数での計算は極めて困難である.今年度は階数が2の場合に,Outer spaceの幾何を利用することで,有理1次元コホモロジー群が計算でき,研究代表者が得ていたコサイクルによって生成されていることを示すことができた.この結果は階数が一般の場合の状況を推測する手がかりとしても大変重要であると考えている. 他方,Johnson準同型の理論を自由群の基底-共役自己同型群に制限することで,これまでの先行研究の枠組みを適用できるが,Johnson余核,Andreadakis予想,コホモロジー群に関するいくつかの結果が得られ,榎本直也氏と共同で表現論的観点からも精力的に研究中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自由群のSL(2,C)指標多様体の座標環におけるイデアル降下列を用いた,Johnson準同型の類似物に関する一連研究においては,自由群の自己同型群が作用するベクトル空間の基底の複雑さなどから,コホモロジー群を決定することはおろか,予測することも非常に困難であった.今回,階数が2ではあるが,その足掛かりが得られたことは今後の研究の予測にも役立つため有益である.また,Johnson準同型の理論を自由群の基底-共役自己同型群に制限した研究では,これまでの10年以上に亘る先行研究の蓄積を直接的に応用することができ,比較的順調に研究が進んだ.特に,自由群の自己同型群の場合との比較研究ができること,並びに将来的には組みひも群のJohnson準同型の計算に応用できることなどから,相応のインパクトも見込める.これらの観点から,概ね順調に研究が進展していると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
自由群のSL(2,C)指標多様体の座標環における自明表現に対応する極大イデアルをJとするとき,Jのべきによりイデアル降下列が定まる.このk次の次数商をJ(k)とおく.今年度の研究により,階数が2の場合に,J(1)からJ(2)への有理線型写像全体のなす加群を係数とする自由群の自己同型群のコホモロジーが計算された.この結果と,GL表現論に関する一般論を用いると,任意のkに対して,J(1)からJ(k)への有理線型写像全体のなす加群を係数とする自由群の自己同型群の1次元コホモロジーは非自明であることが分かる.今後はまずこの1次元コホモロジーを決定することを目標とする.これは,高次のJohnson準同型(の類似物)の終域を係数として考えていることに相当し,将来的に階数を一般化する上でも有益な研究であると考えている.また,階数が3の場合にも同様の計算を勧めたいと考えている. 一方,自由群の基底-共役自己同型群のJohnson準同型を用いたねじれ係数コホモロジー群の研究においては,まず,Johnson像を決定することが問題になるが,そのためにはTrace写像を性質を明らかにする必要がある.しかしながら,自由群の自己同型群の場合とは異なり,かなり複雑なふるまいをしていることが分かってきた.自由群の基底-共役自己同型群のJohnson準同型や,Trace写像はGL同変ではなく,対称群の作用に関して同変であるため記述が複雑になる.現在,表現論が専門の榎本直也氏と共同で,Trace写像の像,Johnson準同型の像などについて低次の場合に既約分解を与えているが,今後は高次の場合の既約分解の規則性などについて研究を進めたいと考えている.
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