Project/Area Number |
22K03409
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 12030:Basic mathematics-related
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
只木 孝太郎 中部大学, 工学部, 教授 (70407881)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2025: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 典型性原理 / 観測問題 / ウィグナーの友人 / ボルン則 / 多世界解釈 / 確率解釈 / アルゴリズム的ランダムネス / Martin-Loefランダム性 / 確率概念 / 量子力学の観測問題 |
Outline of Research at the Start |
量子力学では確率概念が本質的な役割を果たす。しかし、量子力学を記述する今日の数学において確率論とは測度論のことであり、確率概念の操作的な意味については不問のままである。これまでの研究で私は、アルゴリズム的ランダムネスの概念装置に基いて、“典型性原理”と呼ぶ量子力学の確率解釈を操作的に明確化した代替規則を導入した。そしてこれを量子情報理論に適用し、その有効性を実証した。ウィグナーの友人は、波動関数の波束の収縮はいつ起こるのかという、量子力学の観測問題の核心をなす思考実験である。本研究では、ウィグナーの友人の解析に基いて典型性原理の適用ルールの厳密化を行い、その結果として、観測問題の解決を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
量子力学では確率概念が本質的な役割を果たす。それはボルン則として量子力学に導入される。しかしながら、量子力学を記述する今日の数学において確率論とは測度論のことであり、ボルン則が基づく“確率概念”に関して操作的な特徴付けは見当らない。これまでの研究で私は、アルゴリズム的ランダムネスの概念装置に基づいて、“典型性原理”と呼ぶボルン則を操作主義的に明確化した代替規則を導入した。そして、これを量子情報理論の各技術に適用しその再構成と精密化を行うことで、典型性原理の有効性を実証した。 ウィグナーの友人は、波動関数の波束の収縮はいつ起こるのかという、量子力学の観測問題の核心をなす思考実験である。本研究では、典型性原理をウィグナーの友人に適用し、その解析結果の整合性を規範として、典型性原理の適用ルールの厳格化を行い、その結果として、観測問題の解決を目指す。 フォン・ノイマンは量子測定をユニタリ的時間発展で表現した(以下、これをノイマンスキームと呼ぶ)。現行の典型性原理は、対象量子系の各測定過程を表現するノイマンスキームを一つの大きなノイマンスキームにまとめ、それに対して適用するものである。2023年度は、この適用プロセスを精密に理解するため、より弱い仮定から、即ち、ボルン則を用いずに、ノイマンスキームの導出を行った。更に、ユニタリ的時間発展がノイマンスキームになるための必要十分条件を導き、現代物理学で未だ曖昧なままにされている測定装置・測定過程の定義について、その明確化に挑戦した。 2022年度は、ウィグナーの友人の拡張版に対して典型性原理で再構成と精密化を試みた。2023年度は、それに立脚し、典型性原理の厳格化を試みた。即ち、上記拡張版において、複数観測者の意識(認識)の量子状態のエンタングルメントは、どのような“選択則”を満たすべきか等について、幾つかの仮説を立て、思考実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今日、ウィグナーの友人の拡張が活発に議論され、論争化している。本研究課題では、開始初年度である2022年度の研究において、「交付申請書」に記載した「研究実施計画」の通りに研究を進め、これら先行研究によるウィグナーの友人の拡張版の議論に対し、典型性原理で再構成・精密化を試みた。そして、そのような解析結果に基づいて、現行の典型性原理の適用で曖昧となっているポイントを洗い出し、リスト化することに取り組んだ。 2023年度は、上記成果に立脚し、典型性原理の適用ルールの厳格化を試みた。2023年度は、特に、その目的達成の一つのアプローチとして、複数観測者の意識(認識)の量子力学的な重ね合わせについて、観測者間の認識が互いに矛盾しないための“選択則”の導入等について検討し、幾つかの仮説を立て、それぞれの仮説の帰結について、思考実験を行い検討した。 更に、2023年度は、現行の典型性原理の適用プロセスを精密に理解するために、フォン・ノイマンのオリジナルの議論よりもずっと弱い仮定から、即ち、ボルン則という確率概念を用いることなく、ノイマンスキームの導出を行うことに成功した。更に、ユニタリ的時間発展がノイマンスキームになるための必要十分条件を導き、測定装置・測定過程の定義の明確化に挑戦した。 ところで、典型性原理のお陰で、量子力学における測定結果の無限列において大数の法則が成り立つことが、数学的に厳密に証明できる。2022年度は、測定結果の無限列に対して成り立つこの大数の法則が、実効化できる可能性を数学的に明らかにした。これは、当初計画にはない想定外の成果である。本成果は、量子力学の予言を統計的ではなく、確定的なものにできる可能性を示すものであり、確率概念を根本的に転換し得るものである。本研究課題の枠すらを超えて、今後の発展が期待できる。 このようにして、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、典型性原理をウィグナーの友人に適用し、その解析結果の整合性を規範として、典型性原理の適用ルールの厳密化を行う。 さて、量子力学の公理により、閉じた量子系はユニタリ的に時間発展する。フォン・ノイマンは、この公理に基づいて量子測定をユニタリ的時間発展で表現した(これをノイマンスキームと呼ぶ)。現行の典型性原理は、対象量子系の各測定過程を表現するノイマンスキームを一つの大きなノイマンスキームにまとめ、それに対して適用するものである。このとき、“自然な”適用ルールを設定することにより、「対象量子系+“友人”」のノイマンスキームと「友人を含む実験室+“ウィグナー”」のノイマンスキームとを“自然に”分離することができ、これにより、波束の収縮がどちらで起こるかを決定できると考えられる。2023年度までの研究で行ったウィグナーの友人の拡張版に関する解析結果に基づいて、このような方針で典型性原理の適用ルールの厳格化を策定し、その厳格化された典型性原理の有効性と妥当性を確認する。 本研究は、典型性原理の適用の必然性と整合性を追求するものである。そして、その作業を通じて、典型性原理の完全化を目指すものである。我々の立場では典型性原理が量子力学そのものであり、結果的に、本研究は観測問題の解決をも目指すものとなる。 本研究は純粋に理論的な考察のみから成る研究である。従って、本研究を成功させるためには、研究推進者である私が、如何に効率良く関連情報を収集し、本研究の着想を如何に拡充するかが重要な鍵となる。そのために、研究期間中は関連する学術会議に参加し、まず自身で発表を行い、それに関して他の研究者との討議を行う。そして同時に、本研究の成就に繋がり得る情報収集を行う。また、私が勤務する中部大学の日常の研究活動においては、必要となる様々な文献に目を通し、本研究の着想を育み、本研究の達成を目指す。
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