超量子極限状態におけるBiSb合金の磁場誘起相転移
Project/Area Number |
22K03522
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13030:Magnetism, superconductivity and strongly correlated systems-related
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
徳永 将史 東京大学, 物性研究所, 准教授 (50300885)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 達磨 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (30370472)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
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Keywords | 強磁場 / 量子極限 / 励起子相 / 金属絶縁体転移 / トポロジカル絶縁体 |
Outline of Research at the Start |
金属と絶縁体の境界領域では劇的な外場応答を実現できる場合がある。本研究では量子効果が顕著に表れやすいことが知られているBiSb合金を対象とし、組成調整で半金属と半導体の境界付近に位置する試料に対して強磁場下での物性測定を行う。特に予備的な研究で見出している磁場誘起絶縁体状態の起源を探るため、磁歪、磁気熱量効果、超音波などの測定を行う。この絶縁体状態の起源として励起子相の可能性が考えられている。電子正孔対の量子凝縮状態である励起子相が実現するのか、実現している場合には物性にどのような特徴が現れるのかについて詳細に調べる。。
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Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまで約10%Sb置換したトポロジカル絶縁体試料に対して、結晶の3回軸方向への磁場印加で起こる半導体半金属転移の強磁場側で新たな絶縁体状態の出現を見出してきた。この結果に対する補足的な追加実験を加えて成果を論文として公表した。当初計画していた磁歪や熱測定に関しては実験に必要な高品質単結晶試料が得られておらず、現在新しい手法で合成中である。 一方でSb濃度の低い試料に関しては複数の試料を保有しているため、本年度はそれらの試料の磁気輸送特性を調べた。これらの試料は無磁場下で半金属状態にあり、磁場を3回軸と垂直に印加することで半導体への転移が期待されている。我々は最大60Tまでのパルス強磁場中でいくつかの組成の試料の磁気輸送特性を調べたが、この磁場領域で半金属半導体転移を示す振る舞いは認められなかった。一方で、磁場と電流が平行な縦磁気抵抗配置においては、電子状態に小さいギャップが形成されたことを示す振る舞いが観測された。この縦磁気抵抗だけが絶縁体的に見える振る舞いは、我々が先にSb10%置換試料で見出したものと類似する振る舞いである。現在、Sb約4%置換の半金属試料における磁場誘起絶縁化の実験結果に関して論文投稿の準備を進めている。また、無磁場下の状態が半金属の試料(Sb4%)とトポロジカル絶縁体の試料(Sb10%)でともに見られる縦磁気抵抗の絶縁化に関して、両者を統一的に説明できるモデルを考察中である。 これらの成果は2022年度中に3件の国際会議発表(うち1件は招待講演)および3件の国内会議での口頭発表として、積極的に公開している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実績欄にも記載したようにSb置換試料の良質な単結晶試料の作製に想定以上の時間を要している。本課題で計画している磁歪測定や熱力学的測定ではある程度の大きさにわたって組成の均一な試料が不可欠である。これまで封管して溶融した試料の徐冷で試料作製を試みてきたが、この方法では組成の勾配が大きく、望んだ高品質試料を得るに至っていない。そこで過去の合成例を再検討した結果、研究代表者及び研究分担者の使用可能な設備を用いて、ゾーンメルト法で作製できることが明らかになった。 このような理由により熱力学的物理量を通した相転移の研究は少し遅れているが、その代わりとして、磁気輸送特性の研究に焦点を当てた研究を展開してきた。以前研究してきたSb10%試料に加えて、Sb4%試料に対する磁気輸送特性の研究を行ったところ、10%試料と同様に電流と磁場を平行に印加した時にだけ系が絶縁化したように見える振る舞いを見出している。無磁場下の電子状態が大きく異なる両者の間で共通しているように見える振る舞いの起源を知るには、これらの中間組成をもつ試料に対する系統的な研究が有効であるが、そのような組成の良質単結晶試料がないため研究が行えていない。2023年度に向けて試料準備環境の改善を見込んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況欄にも記載したように今年度は新しい手法を用いて良質単結晶の作製を試みる。Sb10%近傍の大型単結晶ができれば、その熱量測定および磁歪測定を通して、磁場誘起絶縁体状態の熱力学的評価を進める。同様の熱力学評価はSb4%試料に対しても行う。この組成の試料は無磁場下で半金属であり、磁場印加で量子振動を起こす。この量子振動現象の詳細な解析が磁場下における電子状態を決めるために非常に重要になる。熱力学量の中でも磁歪は、Biにおけるバレー分極を決定するために非常に有力な手段であるため、Sb4%の大型単結晶が得られれば、その試料に対する磁歪測定を行う。 これまでの研究でSb4%およびSb10%試料における磁場誘起絶縁体化を見出してきた。その解釈にはこれらの中間組成における電子状態変化の評価が不可欠である。全ての組成で大型試料が揃わない場合には、磁気輸送特性の実験で電子状態を議論する。それに加えてより敏感に電子状態を評価する手法として磁場中の熱電測定がある。現在我々は最高60Tまでのパルス磁場中におけるゼーベック効果およびネルンスト効果の測定を開発中である。その測定対象としてBiSb合金を使用し、磁場中で起こる量子振動現象などを明瞭に観察する。BiSb合金の磁場中電子状態の解析については最近理論グループとの共同研究を展開中である。実験と理論の密な連携を通して、この系の半金属半導体転移近傍の磁場中絶縁化現象の起源解明を目指す。
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Report
(1 results)
Research Products
(7 results)