Dynamic hierarchical structure of dielectric relaxation of ice in frozen aqueous solutions and hydration
Project/Area Number |
22K03559
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13040:Biophysics, chemical physics and soft matter physics-related
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
新屋敷 直木 東海大学, 理学部, 教授 (00266363)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2025: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | 誘電緩和 / 氷 / PNIPAMマイクロゲル / 水性懸濁液 / 緩和時間 / 動的不均一性 / 水溶液 / 水和 / 不凍水 / 結晶構造 / 高分子 / タンパク質 |
Outline of Research at the Start |
純水から得た氷の分子運動に関する研究は、以前より盛んに行われてきたが、水溶液中の氷の緩和に注目した研究はごくわずかである。これは氷結水溶液の氷の緩和からは有意義な情報が得られないと考えられてきたためである。氷は結晶化して不凍溶液相と分離するため、氷の緩和が溶質の影響を受けるという発想すら存在しない。 本研究では「不凍水」および「溶質」の緩和の知見を利用し、『濃縮溶液相』と『氷』の界面付近の水と溶質と氷の緩和の関係を明らかにする。水和という現象は古くから水を含んだ物質の性質として議論されてきたが、本研究により、氷の速度分布と動的階層性を通してさらなる水和の多様性を示す。
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Outline of Annual Research Achievements |
部分的に氷結した10 wt%のポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)[PNIPAM]マイクロゲル水性懸濁液の広帯域誘電分光測定(BDS)を10mHz~10MHzの周波数域、123K~273Kの温度域で行い、2種類の緩和が観測された。一つは「PNIPAMの局所的な分子鎖運動」と「不凍溶液相と氷の界面分極」が合わさった緩和であり、もう一つは緩和時間の異なる複数の氷の緩和である。従来報告したゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP)、牛血清アルブミン(BSA)などの他の溶質の氷結した溶質濃度10wt%水溶液とPNIPAMマイクロゲル水性懸濁液で観測された氷の緩和を比較した。その結果、PNIPAMマイクロゲルと球状タンパク質のBSAは純水の氷と似た氷の緩和が観測され、ゼラチンは結晶化プロセスを遅くし、PVPは結晶化プロセスを促進すると解釈できる結果が得られた。Khamzinら[Chem. Phys., 2021, 541, 111040.]によって示されたトラップ制御型プロトン移動モデルを氷の誘電緩和の議論に用い、複数の氷の緩和の存在を一般的に議論されやすい氷の空間的不均一性とは考えず、氷の動的不均一性によるものと解釈して議論を行った。 高分子水溶液中の氷の結晶構造を調べるため、PVP濃度0~55wt.%のPVP水溶液のX線回折測定を冷却速度を0.8~76.8℃/minの範囲で変化させ-70℃で行った。様々なPVP濃度と冷却速度で得られたPVP水溶液のX線回折パターンを六方晶の氷(Ih)、立方晶の配列と六方晶の積層不整氷(Isd)、氷のピークがない(Liquid)の3つに分類し濃度と冷却速度の平面上にX線回折パターンマップを作成した。マップ上の低PVP濃度、低冷却速度は氷のIh領域、高PVP濃度、高冷却速度で液体の領域が観測され、Ih領域とLiquid領域の間にIsd領域が観測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(A)氷の誘電緩和に対する温度履歴の影響に関しては、氷の誘電緩和を調べる前に、温度履歴が氷結晶構造に与える影響を把握する必要があると考え、まずは水溶液中の氷の結晶構造をX線回折測定によって調べている。対象とする水溶液はPVP水溶液、ポリビニルメチルエーテル(PVME)水溶液、フルクトース水溶液である。糖については様々な構造があり、分子量も様々であるため、類似構造で分子量の影響を調べるため優先的に導入した。 (B)溶質濃度の低い水溶液のBDS測定:溶質濃度10 wt.%以下のPVP水溶液のBDS測定は試料を詰める電極の問題により、濃度の低い資料はBDS測定中に水が蒸発するという問題が発生した。2023年度中に対策を立てることができたため、現在測定を進めている。10 wt.%以上のPVP水溶液は200 K以上の温度で観測される氷の緩和の緩和時間が小さい。10 wt.%以下の濃度でこの緩和時間の小さいPVP水溶液の氷の緩和が、純水の氷の緩和へと変化していく過程を調べ、PVP水溶液の氷の緩和時間が小さいメカニズムを調べる。 (C)溶質濃度の高い水溶液のBDS測定:溶質濃度40~60wt.%のPVP水溶液のBDS測定を行ったところ、50wt%以上で氷の緩和が大きく変化することが確認された。この研究によって、cubic iceができる濃度域での誘電緩和の特徴を調べる。この濃度域は氷の緩和が小さいため、不凍水の緩和と氷の緩和の関係を調べる。さらにこの濃度域は界面分極の影響が小さいことが予測されるため、水和した高分子の緩和と界面分極の定量的な分離を試みる。 (D)PVME水溶液の氷のBDS測定を開始し、0~60wt%の測定が完了し、現在データを解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
(A)温度履歴が氷結晶構造に与える影響を明らかにするため、水溶液中の氷の結晶構造をX線回折測定で、また氷の氷結および融解温度を示差走査熱量計(DSC)を用いて調べる。今後、ポリビニルメチルエーテル(PVME)、ポリエチレンイミン(PEI)、フルクトース、スクロース、トレハロース水溶液を対象とする。 (B)溶質濃度の低い水溶液のBDS測定:溶質濃度10 wt.%以下のPVP水溶液のBDS測定の電極の問題は2023年度中に対策を立てることができたため、現在測定を進めている。 (C)溶質濃度の高い水溶液のBDS測定:溶質濃度40~60wt.%のPVP水溶液のBDS測定を行ったところ、50wt%以上で氷の緩和が大きく変化することが確認されたため、50 wt%から氷結しない濃度まで詳しく濃度依存性を調べる。 (D)PVME濃度0~60wt%水溶液の氷のBDS測定がほぼ完了したため、データを解析し、PVP水溶液で観測された氷の緩和と比較しまとめる。
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Report
(2 results)
Research Products
(16 results)