Project/Area Number |
22K03618
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 15010:Theoretical studies related to particle-, nuclear-, cosmic ray and astro-physics
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
板垣 直之 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (70322659)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 昭弘 (東崎昭弘) 大阪大学, 核物理研究センター, 協同研究員 (20021173)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 中性子過剰核 / クラスター構造 / シェル構造 / 原子核構造 / 元素合成 / 非中心力 / 核力 |
Outline of Research at the Start |
原子核は陽子や中性子から構成されているが、これらが独立に運動する模型をシェル模型と呼ぶ。一方で、原子核が複数の部分系から構成される構造をクラスター構造と呼ぶ。特にα粒子(4He原子核)は結合が強く、原子核中で良い部分系たり得ることが知られている。代表者が提案し、発展させたAQCMと呼ばれる手法は、αクラスター模型の波動関数をシェル模型へと変換するものであり、両者を同じ枠組みで統一的に記述するものである。今回はこれをさらに発展させ、星の中での元素合成などの未解決問題に挑戦する。
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Outline of Annual Research Achievements |
原子核が複数の部分系から構成される構造をクラスター構造と呼ぶ。特にα粒子(4He原子核)は結合が強く、原子核中で良い部分系たり得ることが知られている。このαクラスター構造が主に軽い原子核の励起状態に現れることが、これまで幅広く研究されてきた。しかし、原子核の基底状態はより一体にまとまっており、それぞれの核子が独立に運動する「シェル模型」の描像が支配的である。星の中における元素合成は、小さな原子核の合成によって行われる。すなわち、小さな原子核が集まってまず励起状態にクラスター的な構造を形成し、そこから電磁遷移によってシェル模型的な基底状態へと移行する。これを理論で扱う際には、クラスター構造とシェル構造のコンシステントな記述が決定的に重要である。 代表者が発展させたAQCMは、αクラスター模型の波動関数をシェル模型へと変換するものであり、両者を同じ枠組みで統一的に記述する。今年度は、この模型を用い、20Ne原子核が16O+4Heクラスター構造を持つのか、それとも一体的なシェル構造を持つのかを明らかにした。 また、元素合成の過程では、軽い中性子過剰核が大きな役割を果たしたことが知られている。中性子過剰核などの結合の弱い原子核には特殊な構造が現れる。本年度は、原子核内における4中性子の持つ相関の探索のため,8Heを例として取り上げ,微視的クラスター模型に立脚した大規模な数値計算を実行した。8Heにおいては,「2中性子の塊が2個が4Heの周りに存在する」成分が多く含まれることを示し、さらに2個の塊同士が引き合い、相関した幾何学的配置を持つことを明らかにした。中性子過剰核において,弱結合した2中性子が空間的な相関を持つことは研究されてきたが、今回は、4つの弱結合した中性子が織りなす新奇な相関構造を明らかにした。この結果はプレスリリースされ、マイナビニュースなどで取り上げられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
課題の1つは、元素合成過程において、原子核中のごくわずかなアイススピン対称性の破れがいかに貢献するか、という永年の問題である。星の中での3つのα(4He)からの12C(炭素)の合成や、12Cとαから16O(酸素)の合成は、最も重要な元素合成過程でありながら、長年の未解決の問題を含んでいる。元素合成では、複数の原子核が集まった際に、合成される原子核の励起状態としてクラスター構造が形成され、そこからシェル的(より一体的)な構造を持った基底状態へと電磁遷移する。ここで、12Cや16Oは陽子と中性子の数が等しく、これらの原子核の波動関数の陽子部分と中性子部分は基本的に対称である(アイソスピン対称性がある)。核子(陽子・中性子)間に作用する核力も、基本的にはこの対称性を支持する。しかし、電気的な力であるクーロン力は陽子間のみに作用し、陽子と中性子の波動関数の微妙な違いを引き起こす。この微妙な違いこそがアイソスピン対称性の破れであり、わずかな破れの成分の混合により、クラスター的な励起状態からシェル的な基底状態への遷移の際、E1電磁遷移が可能となる。E1遷移は電磁遷移の中でも最も遷移確率が高く重要であるが、アイソスピンが対称では貢献しえない。したがって、原子核中のごくわずかなアイソスピン対称性の破れが非常に大きな効果として元素合成確率を左右することになる。実際、星の中で12Cとαから16Oが合成される元素合成過程においては、E1遷移由来が半分程度貢献すると示唆されているが、実験的な不定性も大きく、元素合成のシナリオ全体においても長年の重要な課題である。 今年度は、酸素の波動関数に微妙なアイソスピンの破れを許した計算を開始した。その結果、12C原子核とα粒子が接近する過程で、相対距離が近づくにつれ、クーロン斥力の効果が強まり、これによってアイソスピンの破れが引き起こされることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度の酸素16の合成過程におけるアイソスピンの破れについての研究を完成させると共に、3αの合成過程についても考察する。 さらに、もうひとつの課題である、jj-couplingシェル模型を部分系に用いた、新しいクラスター構造が一般にあり得るか、という問いにも着手する。核力の一成分であるスピン・軌道力は、αクラスターを壊し、jj-couplingシェル模型状態を安定化するように作用する。この効果は原子核を構成する核子の個数(質量数)の増加と共に重要になる。このため、これまでクラスター構造は一部の軽い原子核に限定的に現れると考えられてきた。しかし、ひとたびそのようなjj-couplingシェル模型の原子核を複数用意した場合、それらを部分系とした新しいクラスター構造はが、より一般的にあり得るのではないかと考えられる。特にjj-couplingシェル模型の閉殻(魔法数)に対応した、特に安定な原子核をクラスターとして考えた場合、スピン・軌道力はそれぞれのクラスター内部の安定化に寄与し、原子核が部分系に分かれる状況を助長すると考えられる。これは当然考えられる原子核の存在形態であるが、これまではクラスター模型とシェル模型の統一が進んでおらず、シェル模型の魔法数に対応した原子核を部分系とするクラスター構造はほとんど研究されてこなかった。今回の試みは、クラスター構造が一部の軽い原子核のみならず、重い原子核においても重要になるのではないか、という根源的な問いを追求する。
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