Project/Area Number |
22K03700
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 17010:Space and planetary sciences-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 淳 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (00536138)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
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Keywords | 対流 / 氷天体 / 熱輸送 / 進化 / 衛星 / 氷 / 内部構造 / 大気 / 地形 |
Outline of Research at the Start |
氷天体の多くは内部に海を持つことが分かり,そこでの生命発生の可能性も議論されている.しかしそれには海(液体)の有無だけでは不十分であり,物質的あるいは熱的な環境とその変化も理解することが不可欠だ.氷天体では中心の岩石核と水との相互作用で生成した様々な有機物が海や表層へと輸送される過程が重要だが,半径5000km級の巨大な氷天体では岩石核の上面に高圧結晶相の氷層が出現し,岩石核から上層への熱や物質の輸送を妨げる.本研究は,複数の固体相変化が起こる高圧氷多層系の流体計算を行うことでこの領域での輸送過程を定量評価し,生命材料物質の苗床である岩石核と物質進化の場である海や大気表層との繋がりを調べる.
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Outline of Annual Research Achievements |
大きな氷天体の内部で地下海と海底岩石とを隔てる高圧氷層の詳細なダイナミクスと輸送過程を数値的手法を用いて明らかにし,氷天体の進化に与える影響を評価するため,計画2年度目となる令和5年度(2023年度)は,前年度までに完成させたice I-IIIやIII-Vなどの2層高圧氷系の数値モデルを,実際の氷天体の内部進化に適用した. 具体的には木星衛星エウロパの地下海の厚さや温度の長期進化や,金属核の熱史の影響を定量的に評価した.エウロパは天体全体に占めるH2Oの体積比が小さいため,内部の岩石や金属の密度が高くその半径が小さい場合に高圧氷層が現れる.しかしその厚さは大きくなくice IIIを超えた高圧相は出現しないため,地下海が消滅した場合のice I-IIIの2層モデルを試行する好適な対象となる.氷の融点粘性率や潮汐加熱率が小さい場合には初期条件に依らず現在までに地下海は完全に固化し,上層のice Iと下層のice IIIの2層系となるが,その層(相)境界をなすClapeyron勾配(C勾配)がいかなる値をとっても地下海は二度と再形成しないことが分かった.また,さらに深部の岩石マントルや金属核の熱進化へ与える影響を調べた結果,高圧氷はマントルの粘性率よりも有意に小さいためにマントルや核の熱進化にはほとんど寄与しないことも分かった.これらの結果は国際学会(2023 Asia-Pacific Regional IAU Meeting)にて発表したほか,Planetary and Space Science誌に査読付き論文として出版した. また,ice III-V-VIのような3層系の数値実験も開始した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ice III-V系のような2層系モデルを構築した後,ice III-V-VIのような3層系への実験へと拡張することについては順調に進んでいる一方で,高圧氷層の内部で生じた溶融水の振る舞いについてのモデル化が若干遅れている.これは,2層系モデルが完成した時点で木星衛星エウロパの内部進化への実装を先行して行ったことと,申請時よりも性能の低い計算機を用いざるを得なかったことでパラメタスタディのために要した多数の計算に時間を要したためである.しかしこれは,論文執筆および出版までを達成したことに引き換えての遅れとも言えるため,計画全体で達成されるべき実績に大きな影響はないと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
計画最終年度となる次年度は,ice III-V-VIのような3層系での数値実験への拡張を継続して進める一方で,高圧氷層内での融解水のダイナミクスをモデル化することに注力し,実際に高圧氷層が多層(相)を成す木星衛星ガニメデ内部への実装を目論む.高圧氷層が多層系を成す場合でも単一層として取り扱っていた従来の場合と比べて熱輸送率に有意な違いが生じる場合は,従来の熱輸送率に適切な係数を乗じるなどの修正を行い,進化の描像を見直す.物性の不定性や層厚,温度条件などの様々なパラメタ・サーチを行うことによって不定性を狭め,内部から大気表層への熱と物質の輸送効率を見直すことで,来たるべき2030年代の新たな木星系探査で実証する態勢を整える.
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