応力履歴依存粘性3次元球殻マントル対流モデルによるプレート運動の解明
Project/Area Number |
22K03788
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 17040:Solid earth sciences-related
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
宮腰 剛広 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(数理科学・先端技術研究開発センター), 主任研究員 (60435807)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2025: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | プレート運動 / マントル対流 / 応力履歴依存粘性 / 3次元球殻 / 3次元球殻 |
Outline of Research at the Start |
地球上のプレートは、かなり高い応力がかかるまで破壊に耐えられるが、一旦破壊を受けて割れた後は、応力が破壊強度以下に下がっても直ちに固着する事はなく、大きく応力が低下してようやく固着する。そのため地球上では、同じ応力が掛かっていても、割れている部分とそうでない部分が併存しており、プレートが取る状態はそれまでプレートが受けた応力の履歴に依存する。本研究では応力履歴依存粘性を導入した3次元球殻マントル対流モデルの開発を行い、プレート上の熱流量分布、数十億年に渡るプレート運動とマントル内部構造の共進化過程、プレートの沈み込みによる核-マントル境界の熱流量や温度の空間分布とその変遷等を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では「応力履歴依存粘性」を導入した「3次元球殻」マントル対流モデルの開発を行い、プレート運動やそれに伴うマントル内部構造等を明らかにする事を目標としている。 プレートを構成する岩盤が一旦破壊を受けてプレート境界が形成された場合、その後掛かる応力が弱くなっても、プレート境界は直ちに消滅することはない。地球上では同じ応力が掛かっていても、プレート境界が形成されている領域と破壊を受けていない領域の双方が存在している。すなわち、プレートの状態は過去の応力履歴に依存している。このような「応力履歴依存粘性」モデル(Ogawa, 2003)が、Miyagoshi et al. (2020)によって3次元箱型モデルに導入されたが、本研究課題ではそれを「3次元球殻」モデルに拡張し、実際の地球に即したプレート運動とそれに伴うマントル対流構造等を調べる事を目指している。 本年度は、昨年度に開発した3次元球殻版の応力履歴依存粘性モデルを用いて、「地球シミュレータ」等のスーパーコンピュータによりプレート運動を伴うマントル対流計算を実施した。プレート運動が生じるために重要なパラメータはいくつかあるが、最も重要なものの一つがプレート境界とプレート内部の粘性率比である。この値が充分に高くないとプレート運動が生じない。しかしこの値が高いという事は、空間的に細いプレート境界とそれ以外の広大な領域の粘性率比が大きいという事なので、物理量の局所的に急激な変化及び空間的非一様性を意味する事になり、計算が難しくなる。昨年度末時点ではこの値がプレート運動を生じさせるのに必要な値まで達していなかったのだが、本年度の計算の結果、この値を必要な値(約3200程度)まで到達させる事が出来た。さらに、他の重要パラメータも必要な値まで到達でき、結果としてプレート運動が生じる対流レジームで数億年の計算を進行させる事が出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度に開発した3次元球殻版の応力履歴依存粘性マントル対流モデルを用いて、プレート境界とプレート内部の粘性率比を始めとする重要パラメータを全て、プレート運動が実現する対流レジームに必要な値に到達させる事ができ、数億年分の時間積分を伴う計算進行が出来たため、おおむね順調に進展している。 計算の結果、プレート境界に集中するプレート破壊領域や、海嶺と海溝の形成、プレート内部でのほぼ剛体的(一方向かつ一様な)運動など、実際のプレート運動により生じている特徴が計算結果内でも観察されており、計画通りプレート運動を伴うマントル対流が実現出来ている。またプレート運動の速度も、箱型モデル(Miyagoshi et al., 2020)とそれほど大きくは変わらないものが得られており、箱型モデルで実現できたプレート運動を伴う対流レジームが3次元球殻版でも実現されつつあると考えている。 一方で現在の計算結果を見ると、速く運動している一部のプレートが存在する一方、それよりかなり低速で運動しているプレート領域が多くある。これはプレート運動の対流レジームでは計算に非常に時間がかかる(局所的に急激に何桁も物理量が変化するような空間構造を持つ系で毎時間ステップ計算を収束させながら進行させなくてはいけないため、それ以外の対流レジームと比較して計算の困難さが大きく増大する)ため、そのようなプレートの運動状態がまた充分に成長しきっていない可能性が推定される。また、この困難さにも関わることであるが、状況によってプレート境界構造が空間的に非常に細かくなったり複雑になったりした場合、収束が非常に困難になり、時間積分がほとんど進まない(実質計算停止に近い)状況に陥ってしまう事がある。そのような状況でもどう適切に計算を進められるかが重要な課題の一つとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の計算で、対流がプレート運動を伴うレジームに到達できたため、次年度は引き続き計算を進め、さらに数億年~数十億年の時間積分を行い、プレート運動とそれにともなうマントル対流構造の関係や、その発展を調べることを目標とする。特に最初のステップとしては、あと数億年~程度の時間積分が安定して行えれば、空間的にだいたいどの領域もプレート運動の様子が落ち着いてくると予想され、まずはそこでのプレート運動や対流構造を詳細に調べることを目指す。 現在、主な障害となっている課題は、プレート境界の構造によっては(非常に空間構造が細かくなっていったり、複雑な構造を取っているなど)、状況により収束解を求めるのにかかる時間が著しく増加し、時間積分がほとんど進まない(実質、計算停止に近い)状態になってしまう場合がある事である。そのような場合は、結果を詳しく調べる事により、状況によって対応策を導入して計算を進めて行く方針である。例えば、このような状況は対流速度が比較的速い場合に生じる事が多いが、対流速度を若干遅くしてもプレート運動を伴う対流レジームが継続し得るような状況であれば、対流速度を抑えることに関わる物理パラメータを調節することにより、このような困難さが生じる状況を回避しつつ計算が進行できないかを試行する。あるいは、対流速度をこれ以上下げるとプレート破壊が抑えられすぎてプレート運動が継続できなさそうな状況では、収束に関する数値計算に関わるパラメータを調節する(例としては、収束させるための反復計算の試行回数を増やす、等)ことで、計算をスムーズに進行させられるか試行してみる、等である。以上のような対応策を個別の状況に応じて導入していくことにより、次年度は継続してさらに数億年~ 以上の時間積分を実現する事を目指す。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)