Project/Area Number |
22K03934
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 19010:Fluid engineering-related
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
大友 涼子 関西大学, システム理工学部, 助教 (00726862)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
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Keywords | 赤血球 / 浸透圧 / 溶血 / ヘモグロビン / 吸光度 / 個体差 / ドラッグデリバリーシステム |
Outline of Research at the Start |
赤血球を浸透圧の低い低張液中におくと,水の浸入により赤血球は膨張変形し,さらに膜に破損や細孔が生じると溶血が起こる.本研究では,低張環境下での個々の赤血球の形状変化,体積変化,およびヘモグロビン等の内部物質浸出挙動の同時可視化計測を試みる.実験,および実験を再現する1次元シミュレーションにより,環境や条件にきわめて敏感な赤血球の溶血現象について,個体差によるばらつきの幅を定量的に評価する.さらに,Drug delivery systemへの応用を期待し,個体差の影響を考慮した,赤血球への薬剤等のカプセル化のための最適な方法・条件の提案を目指す.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,赤血球が低張条件下で膨張変形し溶血に至るまでの過程について,個々の赤血球の形状変化,体積変化,およびヘモグロビンをはじめとする内部物質浸出挙動の同時可視化計測を行う.2022年度は,赤血球の形状・体積変化と内部物質の浸出挙動の可視化計測実験に重点を置いて取り組んだ. まずは赤血球懸濁液に浸透圧の低い低張液を加える実験を実施した.懸濁液中の1つの赤血球に注目して顕微鏡下で観察すると,浸透圧差によって赤血球膜を通して外から内部に水が浸入し,赤血球は両凹形状から球に近い形へと変形した.顕微鏡で観察された二次元の画像をもとに,赤血球形状が軸対称であると近似して,実験中の赤血球の体積変化を求めた.低張液を加えた直後から体積は増加し,その後少し収縮した状態で赤血球は溶血(膜が破損して内部物質が外部へと浸出)したことが計測できた. 赤血球が浸透圧差によって膨張変形し,溶血する際のヘモグロビン(Hb)の浸出挙動を可視化するために,Hbの吸光波長(405nm)の光源を照射した状態で, 同様の実験を行った.実験結果では,Hbによる吸光が起こり,赤血球内部が周囲よりも暗く写ることが確認できた.低張液を加えて溶血が起こる際には,赤血球内部の吸光度が低下し,Hbが赤血球外に浸出したことが示された.本実験は,研究室現有のEMCCDカメラを用いて行ったが,溶血現象をより詳細に調べる(Hb量の時間・空間変化から細孔の位置や浸出速度を探る)ために,ハイスピードカメラを導入予定である.ハイスピードカメラを用いる際には,より強い光源が必要であるため,本年度には光源の選定やデモ実験を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,「赤血球の形状・体積変化と内部物質の浸出挙動の可視化計測実験」が目標であった.観察対象を1個の赤血球に固定し,低張液を加えた際の形状変化を実験により観察し,体積を見積もることができた.また,吸光度に基づき,実験で得られた画像から赤血球内に含まれるヘモグロビン量の時間変化を求めることができた.これらの実験は日時や実験者が異なる条件で複数回行ったが,一度の実験に時間を要することから,十分な量のデータを集めるために,予定通り次年度以降も引き続き同様の実験を継続する.ヘモグロビン以外の分子量の小さなイオン(例えばNa+イオン)の挙動の計測には至らなかったが,それは次年度以降の検討課題とした.その他に,2023年度,2024年度にそれぞれ実施予定である本現象の1次元シミュレーション,マイクロチャネルを利用した赤血球カプセル化について,わずかではあるが情報収集や準備を前倒しで進めることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に実施予定である「浸透圧差による赤血球の膨張・溶血挙動の1次元シミュレーション」については,当該年度にある程度の準備を進めてきた.具体的には,Geら(Eur. Biophys. J., 2018)に基づき,膨張過程,伸張過程における赤血球の表面積・体積変化・浸透圧変化などをすでに計算可能な状態にある.細孔形成とその後の現象に関しては,本実験条件に合わせたモデルの構築が必要であり,2023年度はそれに取り組む予定である.モデルおよび計算コードが完成すれば,赤血球の健常時の表面積・体積,膜の透水係数,膜の剛性など,さまざまなパラメータを変えて計算を実施し,赤血球の個体差が膨張変形・溶血挙動に及ぼす影響を調べる. 実験に関しても,2022年度に引き続き同様の実験を行い,できるだけ多くのデータを集めてシミュレーション結果との比較を行う.2022年度に未達成であった,ヘモグロビン以外のイオンの浸出挙動の計測に対しても,引き続き取り組む. また,結果を整理し,国内外の学会発表や論文投稿にも重点的に取り組む.
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