Project/Area Number |
22K03953
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 19020:Thermal engineering-related
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
平沢 太郎 中部大学, 工学部, 教授 (30350987)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,340,000 (Direct Cost: ¥1,800,000、Indirect Cost: ¥540,000)
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Keywords | 積層表面の微細構造の評価 / 積層表面の制御 / 積層速度の計測 / 微小拡散火炎 / ペクレ数 / 積層 |
Outline of Research at the Start |
ミリスケールの微小な拡散火炎では,通常のバーナで形成される火炎に比べ対流の影響が小さく,分子拡散や熱伝導の効果が大きい.申請者は,「低ペクレ数場」と定義できるこのような火炎を用いることで,火炎内で高融点の無機材料や金属材料を融解し,融解した粒子を積層できることを明らかにした.そこで本研究では,低ペクレ数場の気相反応系,伝熱系,相変化系の理解を深め,理想的な積層を実現する適切な火炎制御方法を明らかにし,「火炎噴霧融解造形法」という新たな金属・無機材料3Dプリンティング手法の基盤の創成を目指す.
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Outline of Annual Research Achievements |
対流の影響が小さく分子拡散や熱伝導の効果が大きくなる低ペクレ数場の高発熱密度の微小拡散火炎では,火炎内は局所的に高温になるが発熱量は低い.この局所的に高温になる火炎を用いることで,火炎内で金属・無機粒子を融解し,積層表面に接触した粒子の凝固・積層が可能であることが見いだされた.本研究は,この低ペクレ数場の気相反応系、伝熱系、相変化系の理解を深めながら,「低ペクレ数場の燃焼がもたらす火炎噴霧融解造形」という新たな金属・無機材料の造形手法の基盤を創成することを目的としたものである. 一年目である本年度は,特に現在金属3Dプリンティングで利用されているレーザーや電子線による造形手法と異なる点,すなわち低ペクレ数場の火炎噴霧融解造形法の特徴を明らかにすることにも重点を置きながら,融解と積層の基礎特性を把握する実験を実施した.まずその基礎特性として棒状の積層を行い,その積層物の長さの増加速度,すなわち積層速度を測定した.さらに,SEM(走査型電子顕微鏡)やEDX(エネルギー分散型X線分光法)を用いて造形された表面の評価を行った.積層用粒子として,SUS304をはじめ複数の材質の粒子を空気流に供給し,材質による積層特性の違いについても観測を行った.積層物表面は,積層面の火炎内での位置で異なる微細構造を持つこと,火炎内の特定の位置に積層面を保持することで,特定の微細構造を連続して積層できることなどを明らかにすることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
粒径 140μm 以下のSUS304粒子を中央のノズルから噴出される空気流に供給し,ステンレスパイプ表面に棒状に積層させた.その積層物の表面をSEMやEDXを用いて造形された表面の評価を行った.火炎群の内側の火炎の頂点付近では,粒成長した結晶粒が,内側の火炎の上流側(酸化剤側)では,微細な多孔質表面をもつ球状の粒が観察された. 積層物表面は,積層面の火炎内での位置で異なる微細構造を持つことがわかった.このことは,積層面を火炎内のどの位置で保持するかが,積層物の構造を制御する上で重要であることを意味する.火炎内の特定の位置に積層面を保持することで,特定の微細構造を連続して積層できることも明らかになった.例えば,低次酸化チタンの結晶が見られる位置に積層面を保持しながら,積層を継続させることで,長さ9mmほどの棒状の低次酸化チタンの結晶を造形することができた. 低ペクレ数場の火炎噴霧融解造形法の基礎特性の把握のため,一定の長さの積層にかかる時間を測定した.空気流量が多いほど,時間当たりの噴出する金属粒子の量が増えることから,当然ながら積層にかかる時間は短縮された.また,燃料流量が多いほど金属粒子の溶融が進み,積層にかかる時間が短縮される傾向も見られた. さらに,金属表面とバーナとの距離を固定した上で,積層物の長さの増加速度すなわち積層速度の変化を,画像計測により測定した.積層速度は,金属表面への積層開始時に遅く,徐々に増加するものの,その後再び徐々に減速し,ある地点を過ぎると積層が停止することが確認された.この積層の停止は,火炎の底部に近づくことで温度が低下し,粒子や積層物の溶融が不十分となったためと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況で報告したとおり,SEMでの観測結果から,様々な積層表面となり得ることが確認された.構造材としては,緻密でなめらかな表面が望ましい一方,触媒や電極材料,生体組織への接合性など,機能性を備えた表面としては,多孔質表面の方が適している場合がある.次年度では単純に金属の積層造形ではなく,火炎内で目的の無機材料に合成したうえで積層させて造形することや,合成した金属・無機材料を機能性のある多孔質表面へ積層し造形するなど,レーザーや電子ビームでは実現できない積層に重点をおいた研究を進める. 積層速度は,第一に粒子の気流への供給量に依存する.粒子の気流への供給量は,粒子性状によっても大きく変化するため,粒子性状と気流への供給方法を適切に制御することが,積層速度を制御するために必要である.次年度においては,粒子の供給方法の制御についても,改良を図る予定である. さらに積層時の観測結果から,積層速度は粒子の気流への供給量のみならず,積層前後における材料の融解状態に影響されている可能性が示唆された.次年度では,非接触計測法を用いて,積層前後の材料の状態について計測し,火炎噴霧融解造形法における融解および積層現象の詳細についての理解を深める. 積層粒子の融点に合わせ,積層面および積層粒子の適切な温度制御が重要と考えられる.特に内側の火炎面近傍では,最高温度となること,上流側で温度勾配が大きいことを踏まえ,その特性を利用した積層の制御の検討を進める.また,積層方向の温度勾配は,下向き火炎では大きく変化すると考えられる.下向き火炎による積層は大型の造形には不可欠であるため,早期に着手することを計画している.このような点を踏まえ,様々な積層状態の実現に向けた火炎噴霧融解造形の実験研究を実施していく.
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