Project/Area Number |
22K03962
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 19020:Thermal engineering-related
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
奥山 邦人 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 名誉教授 (60204153)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 熱工学 / 多孔質粒子層 / 水素生成 / 液体燃料 / パッシブプロセス / 応答性 / 多孔質層 / 高速応答性 |
Outline of Research at the Start |
触媒を担持した多孔質粒子の充填層反応管の下端からメタノール液を含侵させ, 側面を加熱すると, 毛管作用により気液の流れが誘起され, 水素を含むガスが生成し, 化学再生によるエネルギー変換の高効率化など新たなエネルギー利用技術につながる。 しかし層内の蒸発による液体含有率分布の変化のため定常状態に達するまで時間がかかり, 応答性が著しく低下するといった問題がある。 本研究は, 異なる特性の多孔質を適切に幾何学配置することで, 液体含有率分布や気液流をパッシブに制御する方法を提案し, 高いプロセス効率を損なうことなく高速な応答性を実現するための反応器設計の指針を構築することを目的とする。
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Outline of Annual Research Achievements |
触媒を担持した多孔質粒子の充填層反応管の下端をメタノール液に浸して含侵させ、管表面から加熱すると、蒸発域(気液二相域)の毛管作用と乾燥した昇温域における触媒反応により水素を含むガスが発生するようになり, 化学再生によるエネルギー変換プロセスの高効率化などに資する。しかし蒸発により局所の液体含有率や乾燥領域が層内で刻々と変化し、安定した流動・反応状態に達するのに時間を要するため、熱負荷への応答性が悪く、プロセス効率が低下してしまうといった問題がある。 本研究はこのような熱のみにより駆動されるパッシブ型反応器の実験及び理論解析を行い、プロセス効率を低下させることなく迅速な応答性を得るための設計の指針を構築することを目的とする。 応答性向上の方法として、(a)反応域(乾燥域)長さが予め規定される(乾燥域の拡大による時間遅れがなくなる)方法、(b)蒸発域の充填層と管壁間に隙間を設け、蒸発が充填層の表面のみで起こるようにする(蒸発の時間遅れがなくなる)方法、具体的には粒径による特性(毛管力及び透過係数)の異なる多孔質粒子や隙間を管内に幾何学配置することで気液流と熱流を受動的に制御する方法が考えられる。 本年度の研究では、昨年度の実験から時間応答として最も律速になると考えられる蒸気の生成速度が(a)の方法では定常状態において蒸発域の管表面からの加熱量相当分の2倍以上もの大きな値となった点に注目し、反応域から蒸発域に流入する熱による蒸発の効果を考慮したモデルにより反応器の理論解析を行い、管表面の加熱分より大きな蒸気生成速度が得られること、また反応域内の軸方向温度勾配による同反応器の特徴的な反応特性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の(a)の方法に関して、昨年度、液体予熱域と蒸発域(気液二相域)には毛管力が大きい小径多孔質粒子、反応域(乾燥域)には毛管力の小さい大径多孔質粒子を充填した複合粒子層を構成することにより、各領域の長さが規定された状態で加熱量に比例した上向きの安定した流れが生じることを確認した。一方、蒸気の生成速度は蒸発域(飽和温度に保たれる領域)の管表面からの加熱量の2.3倍もの大きな値となった。 その理由は、温度レベルが大きく異なる反応域と蒸発域が隣接するため、反応域内で管軸方向に大きな温度勾配を生じ、熱伝導により反応域から蒸発域に流入する熱によっても蒸気が多量に生成していることが推察された。そこで、反応域における充填層、管材料、並びに管外面のセラミック接着剤層(管外面に巻いたヒータ線を固定するための層)それぞれの軸方向熱伝導を考慮した改良モデルを用いて同反応器のプロセスの理論計算を行ったところ、軸方向温度分布(反応域内、定常状態)は実験とほぼ一致する結果が得られること、また蒸気生成速度は、実験と同様、管表面からの加熱量相当分の2.3倍になることが確認された。 この結果から、本反応器の蒸気生成の応答性を考えるとき、蒸発域内だけでなく反応域からの熱流の影響も考慮する必要があること、また軸方向熱伝導はその大きさに応じて反応による吸熱速度と蒸気生成速度のバランス(割合)をある値に保ち、かつ放熱ロスを抑えつつ水素を効率よく生成する作用を生じることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本反応器は、一本の反応管内に高温の反応域と一定温度(液体の飽和温度)に保たれる蒸発域が管軸方向に隣接し、その結果、反応域内で軸方向に大きな温度勾配が発生し、主に管材料内の熱伝導による熱流の蒸気生成への寄与が大きい体系となっている。したがって、時間応答として律速要因となる蒸気生成速度は、蒸発域内の充填層の応答性と反応域から蒸発域に流入する熱量の応答性の両方を考慮する必要があることがわかった。しかし蒸気が生成し始めた時刻において反応域内の温度は定常状態の約70-80%まで上昇していたことから、時間応答はやはり蒸発域内の蒸気生成遅れに主によるものと推定される。 蒸発域では、加熱流と気液流が管壁との間に隙間を設けた充填層表面で受動的対向流になり、充填層内部の液体の温度や分布の影響を受けることなく加熱量に比例した蒸気生成量を迅速に得ることができることを期待したが、充填層が飽和温度に上昇するまで蒸気の生成は見られず、また蒸気生成が開始した後も定常値に増加するまで時間を要した。充填層内部の液体飽和度(隙間に占める液体の体積割合)が蒸発により減少する過程に時間を要した可能性が考えられる。 令和6年度は、蒸発域の液体飽和度の減少過程と管壁との隙間条件の関係について、研究代表者がこれまで開発した多孔質内の気液二相流数値解析モデルを発展させた理論解析により応答性を律速する要因を明らかにする。反応器全体のプロセスの熱流動解析を通じて、応答性と反応プロセス効率やエネルギー利用効率に与える多孔質特性の影響、異なる特性の多孔質層を幾何学配置することの有効性について具体的条件などを明らかにする。得られた結果をもとに、高い応答性を有する多孔質層活用パッシブ水素生成器を設計するための指針を得る。
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