ボールねじ駆動によるサブナノメートル分解能位置決めのための振動抑制手法の探求
Project/Area Number |
22K03996
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 20010:Mechanics and mechatronics-related
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
深田 茂生 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (70156743)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,990,000 (Direct Cost: ¥2,300,000、Indirect Cost: ¥690,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | ボールねじ / 超精密位置決め / サブナノメートル / 振動抑制 / 高分解能 |
Outline of Research at the Start |
本研究ではボールねじ駆動による超精密位置決め機構に着目し,変位センサとして分解能0.06nmの超高分解能リニアエンコーダを用いて実験的に検討を行ってゆく.現状では,ステージ変位をフィードバックして目標値をゼロ保持とした場合に,振幅が約1nmの定常振動が残留する.この定常振動を0.1nm程度まで低減することが本研究の目標である.そのために,サブナノメートルレベルの制振方法を理論と実験により検討し,次の三つの方法を比較して,最も効果的かつ実用的な方法を実証的に構築する.① 受動的ダンパを用いる方法,② 機構内のセンサ情報に基づく状態フィードバックによる方法,③ 能動的ダンパによる方法.
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Outline of Annual Research Achievements |
剛性と精度の両立が要求される事例では,位置決め駆動要素としてボールねじを用いる場合が最も多い.高分解能化への要求の高まりとともに,ボールねじを用いた位置決め機構においても,サブナノメートルレベルの位置決め分解能の実現が期待されている.本研究は,サブナノレベルにおいて効果的かつ実用的な振動抑制手法を構築することを目的とし,令和4年度は実験装置の構築を行うとともに,受動的制振機構の効果について実験的に検討した.また,内部センサ情報に基づく状態フィードバック制御による振動抑制法について基礎的検討を行い,受動的方法との比較を行った. まず,ストローク200mmのエアスライドで案内されるステージを,ボールねじ(ねじ軸外径20mm,リード5mm,オーバサイズボール予圧型)と定格出力130WのDCサーボモータで駆動する位置決め実験システムを構築した.ステージ変位を分解能0.06nmのリニアエンコーダで,ねじ軸回転角度を0.0227μradのロータリエンコーダで検出する.本位置決め機構を集中定数モデルで表現し,周波数応答実験により検証した結果,本機構は6慣性の集中定数モデルでノミナルに記述されることを確認した.次に本位置決め機構をステージ変位の直接フィードバックのみで位置決めした場合の残留振動を実験により測定した.その結果,残留振動は移動ステージ質量と出力端剛性で決まる固有振動成分によって支配されていることが分かった. 以上の知見に基づいて,シリコンオイルを用いたオイルフィルムダンパをステージ端に設置したところ,残留振動(RMS値)を約1/3に低減することができた.さらに本機構の簡易な2慣性系モデルについて,状態フィードバック制御系を構成し,シミュレーションと実験によりその制振効果を検討した.その結果,残留振動の低減は認められたが,受動ダンパの制振効果には及ばなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,サブナノメートルレベルの実用的な振動抑制手法を構築することを目的としており,理論的検討だけでなく,実証実験が欠かせない.そのためには位置決め機構における振動現象をサブナノメートルレベルで測定可能な信頼性の高い実験装置が必要不可欠であり,令和4年度にはそのための実験システムの構築を完了している. 本機構の振動挙動と制御系を検討するために,運動方程式で記述された集中定数モデルを導出した.これは全ての検討のベースとなるノミナルモデルを与える.モデルの妥当性を確認するために周波数応答実験を行った.そこでは,入力端であるモータへの電流指令から出力端であるステージ加速度までの順方向の応答と,ステージ端に設置した非接触のボイスコイルモータ(VCM)による外乱入力からステージ加速度までの逆方向の応答の両方を取得し検討を行っている.その結果,本機構は6慣性の集中定数モデルでノミナルに記述されることを確認している.また本位置決め機構をステージ変位の直接フィードバックのみで位置決めした場合の残留振動を実験により測定し,末端のステージ質量と出力端剛性で決まる固有振動成分が主要な振動モードであることを確認できた.この末端の振動系の減衰効果を高めるために,振動系の減衰比ζ=0.08を設計目標値として設定し,それを実現するために長さ75mm,深さ20mm,隙間0.2mmのオイルフィルムをステージの両サイドに4枚設置する平行溝状の受動ダンパを製作して設置した.その結果,ダンパによるサブナノメートルレベルでの振動低減効果が確認できた. 次に次年度のための準備段階として,導出したノミナルモデルを無次元化し,振動低減のために設定した高減衰の極配置を実現する状態フィードバックゲインを導出して実験を行った結果,振動低減効果は確認できたが,受動ダンパ単体の効果には及ばなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度には,機構内センサ情報に基づく状態フィードバックによる方法をさらに詳細に検討する.令和4年度において基礎的な検討を行ったが,未だ十分な制振効果は得られていない.ノミナルモデルでは,ねじ軸のねじり変形のみを考慮したが,分布定数系や弾性波伝播時間による応答遅れも考慮した場合の動的モデルを検討しなければならない.また力学モデルを低次元化するにあたっては,システム同定実験を行って適切なモデルを導出する必要がある.得られたモデルの振動を低減するための極配置と最適レギュレータを併用した制御系を設計して,シミュレーションと実験により振動抑制効果を検証する.高次元化した場合に必要となる状態オブザーバの可能性についても検討する. さらに,本位置決めシステムの信号の伝達経路を検討する.定常振動を励起する外乱には,除振台経由や雰囲気経由の微小不規則外乱,アナログ電気系のノイズおよびエンコーダとDA変換器による量子化雑音がある.これらの外乱によって励起される機構各部の相対振動変位および回転角度をサブナノメートルレベルで詳細に測定し,不規則信号に対する動的エラーバジェット手法を援用して各要因の出力端への影響度について考察する. 令和6年度は能動ダンパによる方法の検討と,研究全体のまとめを行う.非接触のボイスコイルモータ(VCM)を利用した能動ダンパをステージ端に設置する.アクチュエータとしてねじ軸回転モータとVCMを持つ2入力系となるので,前年度に検討した制御系を2入力系に拡張して制御ゲインを決定する.次に能動ダンパによる制振効果を実験により検証する.最後に,①受動ダンパ,②状態フィードバック,③能動ダンパの三つの方法による振動抑制効果を比較して考察する.またそれぞれの方法を併用した場合の効果についても実験により確認し,実用的かつ効果的な振動抑制手法を提案する.
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Report
(1 results)
Research Products
(1 results)