Project/Area Number |
22K04215
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 21060:Electron device and electronic equipment-related
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
小野島 紀夫 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (40500195)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 有機不揮発性メモリ / 有機トランジスタ / コンタクトドーピング / 有機整流素子 / プリンテッドエレクトロニクス / 低環境負荷 / 低分子/ポリマーブレンド / 静電スプレー堆積 / ポリマーブレンド / 静電スプレーエッチング |
Outline of Research at the Start |
新型コロナウイルスの感染拡大によって,非接触で人やモノを検知できるセンサや無線情報タグが注目されている. 本研究では,我々がこれまでに確立している技術“グリーンプリンテッドエレクトロニクス”を拡張して,高度に発達しているシリコン半導体デバイス技術と融合し,非接触デバイスに向けた有機不揮発性メモリを開発する. 本研究で得られる成果は,有機半導体レーザーやOLED,有機薄膜太陽電池などの光デバイスを用いた光無線給電技術と組み合わせた非接触IoTネットワーク社会への波及が期待できる.
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Outline of Annual Research Achievements |
本課題の目的は,非接触で検知できるフレキシブルなスマートタグの実現に向けて有機不揮発性メモリを作製することである.成熟したシリコンデバイス技術から学び,有機デバイス技術の基盤を構築する.今年度の研究実績として次の3点を挙げる. (1) MoO3を用いたコンタクトドーピングのメカニズム解明 (2) MoO3の選択ドーピングによる有機整流素子の作製 (3) ReRAMを用いたアナログ抵抗変化特性の実証 我々は,MoO3を堆積することで有機分子間に電荷移動準位が形成される電荷移動ドーピングによりキャリア伝導度が増加することを報告している.昨年度,OFETのトップコンタクト電極下部にMoO3を堆積することでAlやCuなどの非貴金属電極においても大きな出力電流が得られることを見出した.一般に,OFETのコンタクト電極には仕事関数の高いAuなどの貴金属が用いられるが,この成果は,低コストな作製技術につながると期待される.今年度,MoO3を用いたコンタクトドーピングのメカニズム解明に取り組んだ.XPSの深さ方向分析から,MoO3を堆積することで有機膜中にエネルギー準位の異なる酸化準位が形成されることが分かった.これにより,連続的に分布したエネルギー準位がキャリア伝導パスとなり,低仕事関数のAlやCuをコンタクト電極に用いた場合でも良好なトランジスタ特性が得られたと考えられる.さらに,Alをコンタクト電極に用いたダイオードにおいて,アノード電極下部にのみMoO3を堆積することで良好な整流性の見られる有機整流素子の作製に成功した.また,金属/有機ハイブリッドポリマーを用いたReRAMを作製し,デジタルな不揮発性メモリ特性を報告している.今年度,アナログデータの記憶が可能なメモリスタを作製し,アナログ抵抗変化特性を実証した.この成果は,脳神経のシナプス機能を模倣したAIデバイスへの展開が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況は,研究計画どおりにおおむね順調に進んでいる. 我々はこれまでに,静電スプレー堆積という印刷プロセスを用いて1ステップで低分子/ポリマーブレンドを成膜し,半導体/絶縁膜の自己組織的な垂直方向相分離による高性能なOFETの作製について報告している.そこで当初,有機不揮発性メモリして強誘電性ポリマーを用いた強誘電体メモリトランジスタ(FeRAM)の作製を計画していた.しかし,強誘電性ポリマーの結晶状態により自発分極の大きさが影響されることが分かり,安定した不揮発性メモリ動作を得ることが困難であった.そこで研究計画で述べた通り,代わりの有機不揮発性メモリとしてエレクトロクロミック特性のある有機/金属ハイブリッドポリマーを用いたReRAMを作製し,保持特性や疲労特性などのメモリ動作を実証した.さらに今年度の研究において,アナログ抵抗変化特性を実証して,印刷技術よる人工シナプス素子を開発した.この成果は,2024年度の有機分子・バイオエレクトロニクス国際会議で報告する予定である.また本研究では,高度に発達しているシリコンデバイス技術から学んで有機デバイス技術の基盤を構築することを目的としている.今年度の研究では,MoO3を堆積することで有機半導体中にエネルギー準位の異なるMoOx(酸化準位)が形成されることが分かり,連続的に分布したエネルギー準位がキャリア伝導パスとなることを明らかにした.さらに,アノード電極下部にのみMoO3を堆積することで良好な整流性の見られるショットキーダイオードの作製に成功した.これは,シリコンにおける不純物ドーピングと同様に電極界面でのコンタクト形成を制御できることを示している.これらの成果は,2024年度の固体材料デバイス国際会議で報告する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は以下の3点に取り組む. (1) 有機整流素子の高周波測定(ワイヤレス電力伝送への応用) (2) ReRAMの抵抗変化メカニズム解明とデバイス構造の最適化 (3) 強誘電性ポリマーの結晶状態制御によるFeRAMのメモリ特性向上 (1)に関して,バッテリーフリーのフレキシブルスマートタグ実現に向けて,有機整流素子を用いたAC/DCコンバータへの応用を目指す.具体的には,平滑コンデンサや負荷抵抗と合わせた半波整流回路を作製して高周波応答特性を調べる.また,アノード電極としてAuを用いた場合と比較して,非貴金属アノード電極下部にのみMoO3を堆積する低コストプロセスで作製したデバイスの実用可能性を評価する.(2)に関して,電気化学的な酸化還元反応によって抵抗変化を生じる原因を調査するために,横型構造を作製してXPSのケミカルシフトや透過吸収スペクトルの変化を調べる.また,ON/OFF比の向上をはかるために,コンタクト電極の選択や電極/有機界面制御に取り組む.(3)に関して,熱処理による強誘電性ポリマーの結晶状態制御とFeRAMのメモリ特性の関係について調べる.好ましい強誘電性ポリマーの結晶構造について,XRD測定から明らかにする.有機デバイスの特長は低コスト・低消費電力で簡便な印刷法で作製できることであり,無機材料のような微細加工や積層化によるメモリ容量の増大をはかるのは困難である.そこで,有機不揮発性メモリの多値化(複数ビットの記憶)に向けたデバイス構造を検討する.また,有機/金属ハイブリッドポリマーを用いたReRAMでは錯体イオンが酸化還元により変化することで抵抗変化すると考えられることから,単分子層程度に薄膜化してメモリ特性を評価するなど,単分子メモリに向けて膜厚依存性を調べる.
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