電流印加によるナノカーボンの構造変化と抵抗変化の関係解明
Project/Area Number |
22K04222
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 21060:Electron device and electronic equipment-related
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
上野 和良 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (10433765)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2022: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | ナノカーボン / 結合状態変化 / 抵抗変化 / ダイヤモンド結合 / グラファイト結合 / 電流印加 / 抵抗変化型メモリ / ラマン分光 / 電流作用 / 構造変化 |
Outline of Research at the Start |
電流は電子などの電荷をもった粒子の流れであり、物質中では荷電粒子と原子が頻繁に衝突する。衝突された原子は、電流に押されて移動しうる。この電流の力によって、物質中の局所的な原子の結合状態は変化するのだろうか。炭素膜を抵抗変化層に用いた抵抗変化メモリでは、電流によって、電気を流すグラファイトと、流さないダイヤモンドの間で構造変化が生じると推測されているが、それを直接観察した報告はなく、電流が炭素の結合変化にどのように作用するかわかっていない。本研究では、電流による炭素膜の構造変化を、電流印加前後でラマン分光法などを用いて直接観察し、電流が物質の結合構造の変化にどのように作用するのかを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
近年、人工知能(AI)の研究がさかんに行われている。現在のAIは、複数のトランジスタを用いた論理回路で構成され、消費電力が大きく、よりAIに適した素子が望まれている。抵抗変化素子は、加えた電流に応じて抵抗が変化し、シナプスのような動作をひとつの素子で実現でき、従来より少ない素子数でAIを構成できる。抵抗変化素子のひとつとして、炭素膜の抵抗変化を用いた素子が提案されている。炭素にはグラファイトを構成するsp2結合の導電性の構造と、ダイヤモンドを構成するsp3結合の絶縁性の構造の2つがあり、炭素膜の抵抗変化では、この2つの構造変化が電流によって生じると考えられているが、その構造変化を直接観察した例はあまり報告されていない。本研究では、電流による炭素の構造変化を直接観察するための試料作製や観察方法を検討する。 2022年度は、まず銅(Cu)膜の上にアモルファス炭素(a-C)膜を積層した膜に電流を流す実験を行った。その結果、Cu膜が破断した箇所で、XPSとラマン分光法により電流印加後にsp2結合の割合が増加し、電流による構造変化の可能性が得られた。一方、a-C/Cu構造では電流が主にCuを流れるため、ジュール熱による構造変化の可能性も否定できない。そこで、斜め蒸着によるシャドー効果を応用したナノギャップ電極を形成し、高抵抗のa-Cに電流が流れる試料作製を検討し、150nm幅のナノギャップを形成できた。 2023年度は、ナノギャップの作製方法を改良し、斜め蒸着の角度調整により最小15nm幅までの狭いギャップを形成できた。また構造変化の観察領域を特定しやすくするため、電流を流す電極幅を狭めるパターンの工夫を行った。さらにa-C膜より電流が流れやすい多層グラフェン(MLG)のパターンを固相析出法で形成することを検討し、課題である密着性をチタン(Ti)密着層を用いて改善した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Au電極のナノギャップ間に電流印加して抵抗変化した際に、構造変化は電流が流れたフィラメントの局所的な領域で生じる可能性が高い。ナノギャップ幅(電流を流す電極幅)が広いと、sp2-sp3構造変化が生じた局所的な場所を特定するのが難しくなる。そのため、電流を流す電極幅をできるだけ狭くして、構造変化が生じる可能性のある領域(観察箇所)を狭くすることが有効と考え、電極幅の狭いナノギャップ試料の作製を検討した。当初、10μm程度に電極幅を設定したところ、狭い幅の電極が作製中のプロセスで剥離してしまう問題が生じた。剥離を抑制する方法を種々試して、最終的には30μm幅に幅を広くし、蒸着するAuの膜厚を最適化することで、剥離を防ぐことができたが、その試行錯誤や作製方法の最適化に時間を要したため、当初の予定の電流印加実験には至っておらず、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
観察領域を絞れるナノギャップ試料の作製方法が確立したので、その試料に電流を印加し抵抗変化前後のa-C膜の構造変化をラマン分光法により検出できるか検討する。さらに、電流印加条件(電流値、ランプレート、印加時間、温度等)を変化させて、条件の違いによる抵抗変化、構造変化の違いを調べる。 また固相析出したMLGパターンに電流を印加し、抵抗変化や構造変化が生じるか、ラマン分光法を用いて調べる。さらに、a-Cと同様に電流印加条件を変化させ、条件の違いがどのように結果に影響するか調べる。 通常のラマン分光法による構造変化の観察が困難な場合に備え、ラマン散乱強度を増強する方法として、a-C膜上へのAuナノ粒子形成によるラマン増強効果を調べ、sp2-sp3構造変化の観察に適用できるか効果を検証する。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)