Project/Area Number |
22K04271
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 22010:Civil engineering material, execution and construction management-related
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
荒井 康裕 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 准教授 (50326013)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2024: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
|
Keywords | 漏水検知 / 水道管路 / リカレンスプロット / 畳み込みニューラルネットワーク / 漏水判定 |
Outline of Research at the Start |
これまでの多くの研究では「漏水有り」と「漏水無し」の判別に力点が置かれていたのに対し、本研究では「疑似漏水音」にフォーカスを当てる点が最大の特徴と考える。実用に供する精度の達成には、「漏水に似た情報(疑似漏水音)」をいかに識別するかが大切なポイントとなると考える点が、本研究の独自性である。 また、精度不良になった「暗騒音」に、今回の研究で新たに入手した「疑似漏水音」のRPと共通する特徴を発見することができれば、疑似漏水音を「含む暗騒音」と「含まない暗騒音」に分類することになり、より高度な漏水判定モデルの構築が可能となる。
|
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、水道管路で発生する「漏水」の検知を目的に、リカレンスプロット(RP;カオス理論に用いられる図)を活用して管路を伝播する「音」の情報を2次元平面に「可視化」し、その画像を畳み込みニューラルネットワーク(CNN)によって学習させた漏水判別モデルを構築している。しかし、モデル構築に用いていない未学習地点のデータにモデルを適用し、判別精度を確認した結果、良好なケースではBalanced accuracy で90%の精度を示す一方、データによっては期待される結果が得られないことが明らかになった。その原因究明と解決策を検討するため、本研究ではノイズの原因となる柱上変圧器(トランス)等の影響に焦点を当て、疑似漏水音(本当の漏水音ではないが漏水に似た音)の測定と可視化を試み、その疑似漏水音を加味したモデルを構築することで、より実用的な管理手法の実現を目指す。 上記の目的を達成するため、令和4年度の研究では実フィールドにおける「疑似漏水音」の観測に取り組んだ。測定の対象として、トランスや(合併浄化槽等の)ブロアーの影響を受けた管路の「暗騒音」をフィールドで測定した。令和5年度の研究では、音響データの前処理に注目し、バンドパスによるフィルター処理や、実フィールドで取得した擬似音データを活用したノイズ低減処理の適用方法を検討した。調査員が判定困難であった地点(硬質ポリ塩化ビニル管[VP] の3-A、4-B)に関しても、前処理等を施した本モデルでは、良好な判定結果を得るケースも確認された。現在の調査員の作業効率とほぼ同程度の判定能力を獲得し、調査作業を代替し得るレベルに到達したと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
画像描写でのローパスフィルター(高周波数帯を除去する機能)に加え、ハイパスフィルタ―も同時に併用するバウンドパスフィルタの検討も行い、条件の変更によるモデルの精度向上を確認できたと判断している。金属管路のダクタイル鋳鉄管(DIP)、非金属管路の硬質ポリ塩化ビニル管(VP)の双方に関して、80%以上の良好な精度を獲得した地点はともに8 地点であり、従来モデルからDIPで1地点、VPでは4地点で新たに80%以上の精度の獲得に成功したことは大きな成果であったと認識している。 調査員が判定困難なケースにおいても、良好な精度を獲得したことから、本モデルにて一連の前処理を適用することで、調査員の作業効率以上の判定能力を獲得可能であることが示唆された。また、ノイズ低減処理の導入により、不良地点の2 地点(DIPの2-A、VPの1-A)に関して、80%以上の良好な精度を獲得した。この2 地点における従前モデル(前処理なし)の適用時、フィルター処理のみ導入時、フィルター処理・ノイズ低減処理実施時の精度結果を精査した。これら2地点は「Recall は高いがSpecificity は低いケース」に該当するものの、両処理を行うことで、Specificityは80%以上に向上した。他地点でも、Recall およびSpecificity が向上し、精度の改善が確認された。Precision も同様に増加したことから、前処理として未学習データにノイズの低減処理を施すことは、識別問題を単純化させ、構築済みモデルの出力精度の向上に寄与することが明らかになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初は、モデルの「パラメータ調整」を学習時の最重要課題と捉え、トレーニング用のRP画像を描写する際のローパスフィルターやインターバル、モデル学習時のバッチサイズ等、RPとCNNに関する条件設定を変更することを主たる研究対象に想定していた。しかし、実用化を考慮したとき、漏水有無の判定対象となる識別問題を予め単純化させた上で、既存の判定モデルに適用することは、安定的かつ効率的な判定を実現する上で有効なアプローチになり得ると再認識した。すなわち、学習過程から漏水判別に十分なモデルが得られたと仮定し、漏水有無のラベルが未知のデータに対して前処理を施すことで、判別精度の向上を図ることが有効な方法ではないかと考えた。そこで、2023年度以降は、この認識のもと、漏水音のデータに対してノイズを低減させ、判別に有効な漏水音の情報を際立たせる一方、暗騒音のデータでは、漏水音と誤答する恐れがある情報を減少させることで、汎化性能の更なる向上に貢献する研究に発展させたいと考える。 音響の分野では、ひずみや雑音を考慮し、周波数特性を変えて録音や送出が行われている。一般に、音質の補正(平均化)や改善、あるいは特定の周波数帯域を強調または減衰する音響機器として「イコライザー」が知られており、ノイズの対策やハウリング対策が図られている。漏水音が暗騒音に近い状態になっている理由として、録音地点に漏水特有の音色が十分に届いておらず、漏水音データに含まれるべき漏水特有の音色が弱まっていた可能性が挙げられる。こうした場合、漏水音に含まれる漏水特有の音色を際立たせる必要がある。不良地点データの漏水判別精度を高めるため、イコライザー機能のような「特定の周波数帯域を強調または減衰」する前処理が有効な対策となり得るか検討して行きたい。
|