加速的手法による自然由来重金属含有土壌の長期変質・溶出挙動予測に関する研究
Project/Area Number |
22K04319
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 22030:Geotechnical engineering-related
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
伊藤 健一 宮崎大学, 国際連携機構, 准教授 (90524695)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,640,000 (Direct Cost: ¥2,800,000、Indirect Cost: ¥840,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 液固比バッチ試験 / 溶出リスク / 酸性硫酸塩土壌 / 加速変質 / 土壌汚染 / 自然由来 / 重金属 / 変質 / 加速試験 |
Outline of Research at the Start |
土壌汚染分野では汚染の長期溶出挙動の予測が重要となっており、バッチ式溶出試験等から得た重金属溶出の平衡定数を用いて予測されているが、自然由来重金属含有土壌については予測と実現象の乖離が課題となっている。これは、対象土壌が酸化進行に伴い酸性化や溶出量増加などの経時変化を生じるのに対して、固定値である平衡定数等ではその変化が反映できないためである。本研究では、連続的に土壌の変質に伴う性状の変化や成分溶出の挙動を把握するために、加速変質の操作を導入新たなカラム通水試験を開発する。これを長期変質溶出挙動の連続的把握方法として提案し、地盤環境分野における土壌中の長期物質挙動の把握と理解の発展に貢献する。
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Outline of Annual Research Achievements |
土壌を加湿加温する酸化促進処理と液固比バッチ試験の組み合わせによる土壌の長期溶出挙動の評価方法は、閉鎖系であり、系内で溶出した各種イオンが滞留する。一方、実現象は開放系であり、溶出物質が逐次流亡する。1年目の成果を踏まえて、実現象と同じ動的条件で開放系のカラム通水試験を恒温層内で加熱しながら通水する加速変質通水試験を試行した。しかし、バッチの酸化促進処理と比べて酸化が進まない結果となった。これは、カラム内では酸素の供給が低いために加温しても酸化が促進されないことが原因と考えられた。 そこで、酸化促進処理土壌をカラム通水試験で評価することを検討した。その結果、加速変質通水試験よりも酸化が進行し酸性硫酸塩土壌は低いpHを示した。そこで、手法の汎用性に向けて複数種の土壌を用いることを検討した。しかし、その過程において、海成粘土等の土壌では水が通らず、カラム通水試験が適応できない課題に直面し、酸化促進処理土壌を閉鎖系のバッチ型から開放系のカラム型に移行できないと判断された。 ここで、1年目の成果に立ち返り、通水型試験の溶出濃度をバッチ型と同じ条件を想定した「累積平均濃度」の有効性について、複数の土壌を用いて、改めてカラム通水試験および雨水曝露試験と対比して検討した。その結果、複数の土壌で酸化促進処理と液固比バッチ試験を組み合わせたバッチ試験法により長期溶出挙動の予測精度を向上させる可能性が示された。ただし、pHについては頁岩などの土壌では、通水型試験に比べてバッチ型試験においてpHが高い、即ち酸化しても低下しない結果となった。そこで土壌の成分や構成鉱物の分析を行い、酸性硫酸塩土壌の酸化に伴う酸性化について、土壌の酸性化指標のS/Caだけでは酸性化の傾向を示すことができず、Caと同程度にMgも強く影響し、かつそれらがドロマイトなどの炭酸塩として含まれる場合であることの新たな知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年目の結果を踏まえて、長期変質溶出挙動の連続的把握方法として「加速変質通水試験」を検討した。しかし、カラム内では加温しても酸素の供給が加速される酸化に追い付かず、バッチ型の酸化促進処理と比べて酸化が進行しない結果となった。また、酸化促進処理土壌のカラム通水試験による評価を検討し、酸化進行による酸性化と酸性化土壌の連続的な溶出の評価を行うことができた。しかし、複数種の土壌に対して汎用性を検討する過程で、海成粘土等の土壌では水が通らず通水型試験が適応できない課題に直面し、本研究の目標の一つである「加速変質通水試験」による長期変質溶出挙動の連続的把握が困難であることが示された。 一方、学術的な問いに掲げた「経時的な変質を伴う土壌からの成分溶出の挙動への理解」については、1年目の成果である、通水型試験の累積平均濃度を、複数種の土壌によるカラム通水試験や雨水曝露試験と対比して、その適応性、妥当性を検証することができた。また、pHについて酸化しても酸性化しない種類の土壌については、その原因として、既往研究に示されている土壌の酸性化指標のS/Caだけでは酸性化の傾向を示すことができず、Caと同程度にMgも強く影響し、かつそれらがドロマイトなどの炭酸塩として含まれる場合であることの新たな知見を得た。これらは試験で粉砕時の微粒子に多く含むことから、この微粒子の扱いを検討することで試験法そのものを改善し、長期溶出挙動の予測の精度向上が期待される。 2年目は、当初案に対してネガティブな結果を得たが、評価手法の普遍的な適用に向けた成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目の令和5年度の検討において、「加速変質通水試験」がその適応性や酸化促進の効果に課題があること発見されたことから、1年目の成果で得た、通水型試験の累積平均濃度をバッチ型試験の濃度と比較する手法について、複数土壌で適応性を検証し、評価手法の普遍的な適用に向けた成果を得た。 3年目の令和6年度は、新たに改良を加えて、溶出挙動のみならずpHの酸性化の予測を可能とする取り組みを行う。具体的には、成分に着目した評価対象である土壌の加速変質前の前処理を行う。「加速変質通水試験」は、成分の流亡を再現することで適切な溶出挙動やpHの連続的な把握を目的としている。そこで、手法は変われどもその目的の達成に向けて、2年目の成果で得た、ドロマイトなどの炭酸塩のバッチ型試験における過度な影響の除外を行う。バッチ型試験では、供試体は<2mmに粉砕するが、その際にシルト以下の微粒子が多く発生する。雨水曝露試験のような通水型試験や実際の盛土ではこれら微粒子の発生は比較的少ない。また、ドロマイトなどの炭酸塩は比較的もろく、人為的に粉砕の際に、微粒子に多く混在する。そのため、酸化処理を行い通水型試験程度に硫酸が溶出しても、微粒子に含むドロマイト等炭酸塩由来のCaやMgが作用してpH低下を妨げることが考えられる。そこで、バッチ型試験に供する土壌について、<2mmに粉砕しかつ微粒子をふるい分けて試験を行うことで、より実現象に近い溶出挙動を模擬し、長期溶出挙動およびpH挙動の予測の精度を向上させる計画である。
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Report
(2 results)
Research Products
(3 results)