Project/Area Number |
22K04412
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 23010:Building structures and materials-related
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
小幡 昭彦 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (30433147)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺本 尚史 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (00315631)
高舘 祐貴 国立研究開発法人建築研究所, 構造研究グループ, 研究員 (20848311)
丁 威 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (70901768)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | 津波荷重 / 連棟配置 / 津波圧力 / 水理実験 / 数値流体解析 / 定常流 |
Outline of Research at the Start |
先の2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では,地震動による構造被害に比べ地震が引き起こした津波による被害が圧倒的に大きかった。このことを受けて,この地震から10年が経過した今でも建築構造学の分野では精度の高い耐津波設計の確立が社会的な責務であるとともに早急に取り組まなくてはならない喫緊の課題である。津波に対して安全な建築物の構造設計を行うためには,建築物に作用する津波荷重を定量的に評価し,設計荷重に反映させる必要がある。そのような背景を受けて,本研究の目的は,建築構造物周辺に障害物がある場合の津波荷重のメカニズムを解明することである。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、建築構造物周辺に障害物がある場合の津波の流れ場とそれによって生ずる波力が建築物に作用するメカニズムを解明することである。建築構造物は海岸工学分野の構造物と異なり、周辺に同等もしくはそれ以上の規模の構造物が存在することが一般的である。周辺環境による津波の流れの変化は当然存在するはずであるが、この視点は日本建築学会の「建築物荷重指針・同解説(2015)」には含まれていない。津波の流れ場に障害物となるような構造物が存在した場合、津波被害が軽減されることは先の震災による被害調査からも明らかとなっており、周辺環境が津波荷重に影響を及ぼすことへの検討が建築構造物の耐津波設計法には必要である。そのような問題について本研究では、水理実験並びに数値流体解析により、建物群に作用する津波波圧・波力の特性を明らかにするとともに、波力が建築物に作用するメカニズムを解明し合理的な対津波設計を確立する上での基礎的知見を得ることを目的とする。 令和4年度の研究では、フルード数の変化しない流れ場での基本的な性状の把握を目的とし、定常流下での水理実験、数値流体解析を行った。フルード数は既往の調査結果から0.6~0.8程度を目標とし、水理実験および数値流体解析で上記のフルード数の範囲における定常流を再現することができた。しかし、定常流の流れを制御し、フルード数を変数として常流から射流にかけての幅広い検討を行うことができなかった。そこで令和5年度の水理実験、数値流体解析では、常流から射流域にかけてフルード数を変数として変化させ、定常流れによる水理実験、数値流体解析を行った。実験ではセットアップを抜本的に見直し、フルード数2.0程度の射流域までの実験を可能とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度の研究では、フルード数を変数とした定常流下での水理実験、数値流体解析方法の検討を行った。 フルード数を変数とした定常流を再現する水理実験は秋田工業高等専門学校が所有する実験水路を利用した。令和4年度の定常流実験では貯水槽のすぐ外側に自作の遮水板を一定の高さを開けた状態で固定し、流量が一定になるように制御したが、その方法では時間平均したフルード数の大きさは貯水高さによらず約0.7となり、大きく変化させることはできなかった。そのため、令和5年度の実験では限界流発生用ダム模型を水路上流に配置し、そのダム模型を越流した流れを利用して構造物模型に作用させる方法で行った。越流流れの流量でフルード数を制御することができ、令和5年度の実験ではフルード数が0.8程度から2.0程度まで変化させ、その影響を観察することができた。 数値流体解析においては、令和4年度に引き続き流体解析ツールボックスOpenFoamの使用を試みた。まず、令和4年度に行った定常流を再現する数値流体解析を基とし、流入条件を調整することでフルード数を変化させることを考えた。しかし、射流を形成する解析条件下では、床面をnonslipとした場合に床面の速度境界層の影響が強く表れ、極端に流速が低下し、水位が上昇する現象が確認された。そのため、数値流体解析では床面の境界条件をslipとし、排水口の大きさを制限することで射流を再現する方法を採用した。そのほか、格子分割をより詳細にするなどの検討を行い、計算の精度向上を図っている。 以上より、現在までの研究の進捗状況について、当初最低限の目的とした実験および数値流体解析での定常流の再現はできた。以上より、本研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は引き続き水路実験、数値流体解析を行う。令和4年度に行われた建物周辺に障害物を加えた2棟配置におけるダム崩壊型実験で、下流に障害物がある場合について非常に重要な知見が明らかとなっている。下記にその知見を示す。 これまで建物周辺に障害物が存在する場合の水理実験および数値流体解析は、津波の流れに対して計測対象となる建築構造物の上流にまたは並列して障害物が存在する場合のみを対象としており、下流に障害物が存在する場合については想定していなかった。これは、下流に障害物が存在する場合では、障害物は構造物に大きく影響を及ぼさず、単棟の場合と同様に抗力を推定できると考えていたからである。しかし、上記のダム崩壊実験の結果から、下流に障害物がある場合、対象となる建築物とその下流に位置する障害物との間に津波が入り込むことにより背面の水位が上昇し、下流から上流側に対象構造物を押し戻す力が生じ、結果として対象構造物に作用する水平力は減少することが確認された。これは、建物周辺に障害物が存在する場合に流れの変化が生じ、建物が受ける荷重が変化するというこの研究テーマで新たに得られた重要な知見であると位置付けられる。 令和6年度ではこの現象について、令和5年度に手法を確立したフルード数を変数とした水理実験および数値流体解析でさらに掘り下げる。上記の現象の影響はフルード数の変化に大きく影響を受けると考えられ、フルード数がごく小さい上流域では構造物前面と背面の水位差が生じにくいため影響が小さくなるが、フルード数が大きくなるにつれて背面水位の低下ともに建物と障害物間に水の流入がなされるようになり影響が表れ、さらにフルード数が極端に大きい射流域では流れが急すぎるので、建物と障害物間に水が流入することが困難になり影響が小さくと考えられる。フルード数と上記の現象の関係を整理する。
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