Project/Area Number |
22K04631
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 25020:Safety engineering-related
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Research Institution | National Institute of Occupational Safety and Health,Japan |
Principal Investigator |
佐藤 嘉彦 独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所, 化学安全研究グループ, 上席研究員 (60706779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 賢 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究グループ長 (80356683)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | 爆発災害防止 / チタン / 硝酸 / 塩酸 / 薄膜剥離工程 / 発熱挙動 / 硝酸-塩酸水溶液 / ニッケル / 銅 / 金属薄膜剥離工程 / チタン-銅-硝酸-塩酸共存系 / 安全取扱条件 |
Outline of Research at the Start |
近年,チタンと硝酸を共存して取り扱う薄膜剥離工程における爆発事故が連続して発生している.これまでに申請者らは爆発的反応の原因となっている反応機構の一つを解明したが,その機構で説明できない衝撃波を伴う爆発事例が存在する.本研究では,同種の爆発災害を未然に防止することを目的として,爆発的現象の原因となる未知の原因を明らかにし,安全な取り扱い条件を確立する.
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Outline of Annual Research Achievements |
近年,チタンと硝酸を共存して取り扱う薄膜剥離工程における爆発事故が発生している.電子産業の発展に伴い,薄膜剥離工程の作業量が増加していく中,同様の事故が今後頻発する恐れがあるため,爆発原因の解明を行い,硝酸環境下におけるチタンの爆発危険性の詳細及びその安全な取扱方法を明らかにすることが,同種の爆発災害防止には必要不可欠である.本研究では,爆発的現象の原因を明らかにし,安全な取り扱い条件を確立することを目的とする.まずチタン-銅-硝酸-塩酸を共存させた試料について熱分析や小型反応熱量計による熱量測定を行い,急激な発熱を確認することで,爆発的な反応の有無を確認する.その後,液相及び生成すれば固相の化学分析を行い,爆発的な反応の起因となっている物質の同定を行う.さらに,チタン,銅,硝酸,塩酸の組成比を変化させて爆発的現象等の有無を調べ,爆発性物質の生成条件,爆発的現象の発生条件を確定する. 今年度は,硝酸-塩酸混合溶液と金属の共存条件での加熱時の基礎的な発熱挙動の変化を,化学平衡計算及びガラス密閉容器を用いた示差走査熱量計により検討した.また,硝酸-塩酸混合溶液の組成の経時変化について分光分析や双子型反応熱量計により調査した.その結果,今年度における検討での条件では爆発的な発熱は観測されなかったが,硝酸と塩酸が混合することにより塩素が発生する可能性があり,その塩素等の揮発等による溶液の組成変化がチタンとの反応に影響を及ぼす可能性が示唆された.また,チタン表面の酸化物被膜の状態が発熱挙動に影響を及ぼしている可能性が示唆された.さらに,濃硝酸に微量の塩酸が添加された硝酸-塩酸混合溶液について,塩化ニトロシルが生成し,その蓄積量が密封で増大,開放で減少することが判明し,調製後の貯蔵時間および容器開放の差異により危険性評価試験の再現性に大きな影響が生じることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までに,熱分析の試料容器内での環境を想定した化学平衡計算を各種組成で実施した結果,塩酸を硝酸と共存させると,低温では一部の塩酸が酸化され,塩素ガスとなり,その濃度は塩酸濃度が大きくなるとともに大きくなることが推定された.並びに,ガラス製密閉容器を用いた示差走査熱量計により各種組成の試料を熱分析した結果,何らかの揮発成分が試料の発熱挙動に影響を及ぼすことが示唆されるとともに,チタンの表面状態がチタンと硝酸-塩酸混合溶液の共存系での発熱挙動に影響を及ぼすことが示唆された.また,硝酸-塩酸混合溶液について紫外可視分光光度計及びラマン分光分析装置による分光分析を行った結果,密封条件で塩化ニトロシルに由来すると考えられるピークが観測され,揮発が抑制される条件では,塩酸濃度が低い場合でも塩化ニトロシルを生成する硝酸と塩酸との相互作用が生じることが示唆された.さらに,塩化ニトロシルが蓄積すると考えられる密閉条件と,塩化ニトロシルが生成しないもしくは消失すると考えられる開放条件での硝酸-塩酸混合溶液とニッケル箔の発熱挙動の比較を行った結果,密閉条件の方が開放条件より高い発熱速度を示し,硝酸-塩酸混合溶液の貯蔵条件が金属と硝酸-塩酸混合溶液の発熱挙動に影響を及ぼすことが示唆された.以上のようにチタンを硝酸-塩酸混合溶液で処理する際の反応に関する重要な知見を得た一方,いずれの計算条件及び実験条件においても,爆発性物質の分解等の急激な発熱やガス発生は確認されておらず,爆発的な反応が生じることを確認するには至らなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
種々の条件において硝酸-塩酸混合溶液とチタン等の金属との共存系で爆発的な反応が生じなかったことから,一般的な硝酸-塩酸混合溶液とチタンとの共存系では爆発は生じないと考えられる.一方,硝酸-塩酸混合溶液から塩化ニトロシルや塩素及びその加水分解生成物として次亜塩素酸が生成する可能性が示唆された.またチタンの表面状態がチタンと硝酸-塩酸混合溶液の共存系での発熱挙動に影響を及ぼすことが示唆された.チタンの表面は,通常では強固な酸化物被膜に覆われているため,その酸化性被膜を物理的及び化学的に破壊し,チタンの新生面が露出させた状態での発火等の有無を調べる.また,塩酸濃度を高くして,塩化ニトロシルや塩素等をより蓄積させた状態での硝酸-塩酸混合溶液とチタン等との反応挙動を調べる.特に,チタンの新生面が露出したと同時に硝酸-塩酸混合溶液が接触するような実験系を構築し,爆発・発火の有無を調べる.
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