山岳域の過剰利用による土砂生産環境のリスク評価と将来予測の可能性
Project/Area Number |
22K04651
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 25030:Disaster prevention engineering-related
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
平松 晋也 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (70294824)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 登山道侵食 / オーバーユース / 表面流出 / 湿原の陸地化 / 登山道の過剰利用 / 土砂生産環境のリスク評価 / 侵食土砂量の将来予測 |
Outline of Research at the Start |
本研究は,将来の「望ましい登山道利用や整備の在り方」に対する方向性を示し,「山岳域の荒廃化を抑制するための対策工法を考える」上での一助とすることを目的として実施するものである。具体的には,近年の山岳域の過剰利用に伴う流域の土砂生産環境の変化実態を把握するとともに,登山道上で発生する土砂生産予測モデルを構築し,同モデルを用いて登山道をはじめとする流域の荒廃化の将来予測を行い,将来の登山者の動向を加味した「登山道の土砂生産危険度評価」を実施する。さらに,本研究成果を基に将来の望ましい登山道利用方法や整備の在り方について提案する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本年度研究では,登山者数の増加に伴う侵食土砂量の定量的把握を行うとともに,登山道侵食のプロセスとその流出過程を明らかにした。さらに,これらの調査・観測結果を踏まえ,「登山道での表面侵食進行モデル」を構築し,同モデルを用いて登山道上で生じる表面侵食現象の再現の可能性について考察を加えた。 本研究により観測した表面流出イベントでは,表面流出水量は降雨に対して鋭敏に反応し,表面流出土砂量は表面流出水量の最初のピーク(以後,流量第1ピークと示す)に対しては鋭敏に反応しているものの,次のピーク(以後,流量第2ピークと示す)に対する反応は流量第1ピークに対する反応に比べて鈍くなっている事実が確認された。また,表面流出水量と表面流出土砂量との関係については,流量第1ピークを境に増水期と減水期において明瞭なヒステリシスが認めらるイベントが複数確認された。この結果は,出水時の流量第1ピークの増水期と減水期には,表面流出水量に対する流出可能土砂(不安定土砂)が登山道上に十分存在していたことを示唆するものであり,表面流出土砂量は表面流出水の掃流力と登山道上に存在する不安定土砂量とのバランスによって変化するといった興味深い事実が明らかとなった。 さらに,登山道上で生起する表面流出土砂の動態を再現することを目的とし,表面流出土砂量推定式を構築した。同モデルを用いて降雪期と融雪期を除く4~11月までの期間内には毎年,0.883~1.170m3もの土砂が登山道上から流出していたであろう事実が確認された。しかしながら,この土砂量には凍上・融解により一年で最も多くの土砂が流出すると推察される融雪期(3~5月)が含まれていないため,一年間で実際に登山道を流下して湿原内へと流入していた土砂量は,本研究により得られた事後評価値(0.883~1.170m3)をはるかに上回っていたであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
登山道上で生起する表面流出水量と表面流出土砂量の現地観測結果より,表面流出土砂量は同じ表面流出水量に対して様々な値を示し,表面流出水量と表面流出土砂量との間には時計回りのヒステリシスが認められた。この事実を勘案すると,表面流出土砂量は表面流出水量(表面流の掃流力)だけではなく登山道上に存在する不安定土砂により規定されるものと推察された。また,登山道上の不安定土砂は,通常期(夏や秋に登山者の踏みつけにより不安定土砂が生産される時期)よりも凍上・融解期(登山道を構成する表層土壌の凍上・融解により不安定土砂が生産される時期)に多量に流出することが確認されたため,登山道上の不安定土砂は,登山者の踏みつけに加え登山道を構成する表層土壌の凍上・融解現象により多量に生産される事実が確認された。 さらに,表面流出土砂量(湿原への流入土砂量)の将来予測を行うことを目的として,観測結果を基に河川などで用いられる既往の流砂量式と浮遊砂量式に改良を加えることにより登山道上で生起する流砂現象に適した表面流出土砂量推定式を構築した。本推定式を用いて,4月から11月までの事後評価を行った結果,1年間に0.883~1.170 m3もの土砂が流出し得る可能性が示唆された。しかしながら,本事後評価対象期間には,表面流出土砂の推定に必要となる表面流出水量の欠測期間が多く,融雪期(3月~5月)が含まれていないため,一年間で実際に登山道上を流下し,湿原内へと流入していた土砂量は,本研究により得られた事後評価値(0.883~1.170 m3)をはるかに上回っていたであろう。 今後の課題としては,融雪期の土砂流出特性を定量的に把握するとともに,登山道上の不安定土砂量を把握することによって,表面流出土砂量推定式の精度の向上を行うことが先決である。 以上のように,本年度研究は概ね順調に進捗しているものと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度研究において,表面流出土砂は融雪期に多量に発生している事実が確認された。今後は,これまでに得られた登山道利用者数と表面流出水量並びに表面流出土砂量との関係を明らかにし,これらの成果を用いて登山道侵食の事後評価と将来予測を実施する予定である。本年土研究において,このため,精度の高い表面流出土砂量推定式を確立し表面流出土砂量の将来予測を行う上で,登山道上の不安定土砂が活発に生産されることになる融雪期のデータを蓄積するとともに,登山道上の不安定土砂量を把握することが不可欠となる事実が確認された。今後は,湿原内へと流入する土砂量の将来予測を行い登山道侵食対策事業支援ツールとして活用するとともに,効果的な登山道侵食対策工法の提案や配置および事前評価などを行うことを前提に,本研究で提示した表面流出土砂量推定式により得られる地点通過土砂量と河床変動計算を組み合わせることにより,湿原内へと流入する土砂量の予測モデルを構築する予定である。
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Report
(1 results)
Research Products
(2 results)