Project/Area Number |
22K04662
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 25030:Disaster prevention engineering-related
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyota College |
Principal Investigator |
高橋 清吾 豊田工業高等専門学校, 一般学科, 講師 (10597313)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2025: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
Fiscal Year 2024: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2023: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2022: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
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Keywords | 城下町 / 自然災害 / 水害 / 高潮 / 治水 / 佐賀 / 松江 / 高松 / 災害 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、現代都市の原型である近世城下町における自然災害の発生および復興状況について、歴史的資料の分析と現地調査から明確化し、その情報をGISデータ化する。得られた成果を都市計画に取り入れ、「災害に強いまちづくり」に貢献させる。国土交通省は、日本の自然災害の被災状況や都市部の災害脆弱性等に対し、都市再生特別措置法等を改正する法律を成立、一部の内容を施行するも、災害ハザードエリアに指定された区域の災害発生年が、いつの時代まで遡るのかは不明である。そこで歴史的資料によって前近代まで遡り、災害の発生と復興状況を確定させ、電子地図化したものを都市計画に取り入れることで安全性の高い都市の構築に貢献する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は現代都市の原型である江戸時代の城下町における自然災害の発生および復興状況について歴史的資料の分析と現地調査から明確化し、その情報をGISデータ化することで将来の都市計画に貢献することを目的とする。2023年度は国内各所の城下町の自然災害による被災状況の把握と整理、それに対する為政者の防災対策、城下町絵図の収集・検証に取り組んだ。前年度に引き続き、佐賀城下町における水害の被害と復興について調査を進めた他、大垣、桑名、名古屋、松江、土浦、江戸城東部の現地調査も実施した。佐賀城下町については、公益財団法人鍋島報效会徴古館所蔵の城下町絵図データを分析し、都市形態の歴史的変容を追った。その結果、慶安2(1649)年に台風により有明海で発生した高波が佐賀城下に続く水系を遡上し、武家地で内水氾濫を引き起こしたため、排水用水路を設置したことが判明した。また、城下町南部の沿岸部には寛永、寛文年間にかけ、全長約30kmに及ぶ防潮堤である松土居が佐賀藩によって設置された。松土居と佐賀城下町との関係を『疏導要書』(翻刻版)で確認すると、正徳5(1708)年の台風による高潮で松土居が決壊し、数十日に渡り満潮が佐賀城二の丸南西部まで押し寄せたとされる。ゆえに有明海から直線距離にして8kmほど潮が遡上していたことが判明した。このため、同書の中で松土居の維持管理の徹底が叫ばれた。以上より、佐賀城下町は高潮の被害を受けやすい環境におかれており、この対応として都市内部に排水路を設置したほか、都市内部の一部及び城下町南部には水田が設置された。水田については、領主である鍋島氏が遊水池機能を果たすことを目的に設置したと解される。以上を踏まえ、近世の佐賀城下町は水害対策を講じた都市構造であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度まで佐賀城下町を中心として調査を進めてきた。また、その他の城下町(大垣、桑名、名古屋、松江、土浦、江戸城東部)についても調査を進めており、前年度の遅れを取り戻すように取り組んでいる。佐賀城下町の調査結果については、2023年11月実施の人文地理学会で発表し、そこで得られた疑問点について再調査した結果を2024年3月実施の歴史地理学会第265例会で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらに城下町の調査地を広げていく。現段階で東日本の城下町で調査を実施したものは土浦に留まっており、その他の都市についても調査を進めていくことにする(例として新潟県高田、岩手県盛岡など)。さらに災害情報の電子地図化に取り組む。研究成果については学会発表を実施し、それを踏まえ学術雑誌への投稿を目指す。2023年度に調査を実施したなかで注目したいのが松江城下町である。当地は斐伊川が運搬した土砂が堆積する宍道湖の畔に位置しており、城下には堀が設置しやすく水運が発達したほか、防御点からも有効であるとされた。とはいえ、水系に極めて接近していることから他地域と同様に水害を受けやすいという一面があった。その理由の一つに、斐伊川上流の奥出雲地方では鉄の採掘が盛んであり、採掘時に流出した土砂が河川を通じて運搬され宍道湖に堆積を始めた結果、湖底に土砂が堆積し、水深が浅くなったため、同湖東岸の松江城下町で水害が頻発したとされる。一方で宍道湖西岸の斐伊川の河口付近では土砂が堆積・陸地化したことで耕地開発が開始されており、領主が地域経済の発展と都市防災についてどのような差配を行ったのかに注目すべく、歴史地理学的視点から各種資料を用いて実証を試みる予定である。また、佐賀城下町と同様に現代(2006年)において水害を被っており、過去の水害の教訓が現代の都市づくりに生かされているのかが疑問である。そこで、江戸時代の城下町絵図等の歴史的資料の分析だけでなく、近代以降の都市形成にも目を向けることで当地における水害対策についても検証していく。以上について明らかにし得た内容を学会で発表する。
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