Project/Area Number |
22K04678
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 26010:Metallic material properties-related
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Research Institution | 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発 |
Principal Investigator |
社本 真一 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発, 中性子科学センター, 特任研究員 (90235698)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 充孝 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究主幹 (00370445)
飯田 一樹 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発, 中性子科学センター, 副主任研究員 (00721987)
樹神 克明 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (10313115)
山内 宏樹 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究副主幹 (50367827)
稲村 泰弘 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究副主幹 (80343937)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 中性子散乱 / 動的磁気PDF解析法 / 磁気クラスターダイナミクス / スピン揺らぎ / 大強度陽子加速器施設 / 物質・生命科学実験施設 / 動的磁気対相関関数解析法 |
Outline of Research at the Start |
空間反転対称性のないスピン系で期待される新しい相転移を探索する中で、短距離磁気秩序状態(SRO)を3次元スピンフラストレーション系ハイパーカゴメ格子の新物質Mn3RhSiで発見した。このSROは常磁性相だけでなく長距離秩序相とも共存する。同じbeta-Mn構造をもつスキルミオン物質Co7Zn7Mn6でもよく似たSROが観測された。そこで本研究では、新しい手法「動的磁気対相関関数(DymPDF) 解析法」を開発するとともに、従来の単結晶による中性子非弾性散乱法を併用して、それぞれのスピン相関長に対応した実空間と逆格子空間の両面から調べることで、これらの関連を明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
磁石の性能は、電子の持つスピンの「揺らぎ」と関係しています。これまでこのスピン揺らぎの測定は、スピンに敏感な中性子散乱法により「分散」として測定されてきました。この「分散」は波の性質を持っており、波数とエネルギーとの関係を示しています。したがって、フーリエ変換により波数は距離に変換することができ、理解しやすくなります。しかし、これまで非弾性中性子磁気散乱の測定はデータ強度の不足により、フーリエ変換は困難でした。近年、大強度陽子加速器施設J-PARCの物質・生命科学実験施設(MLF)では、最終目標である1MWの中性子ビーム強度に到達しつつあります。今回、弱いデータ強度にも対応可能な新しい「動的磁気PDF解析法」ソフトウェアを開発し、高強度中性子データを用いることで、スピン揺らぎの対相関による観測に初めて成功しました。 これまでフーリエ変換による解析法は二体分布関数(PDF)解析と呼ばれ、古くからありますが、最近の代表的なものに、1990年の米国アルゴンヌ国立研究所のデータを用いた結晶PDF解析法、1992年の英国ラザフォードアップルトン研究所のデータを用いた動的PDF解析法、2014年仏国のラウエランジュバン研究所のデータを用いた磁気PDF解析法の開発があります。これらはどれも世界的に有名な高強度中性子源施設での成果です。今回、動的磁気PDF解析法という最も強度的に難しい解析法に、日本のJ-PARC/MLFで、初めて成功したのです。 今回開発した解析法やそれを組み込んだソフトウェアの妥当性を調べるために、これまでスピン波がよく調べられているFeTiO3という磁性体を調べ、0.3 nm離れた2つのスピン揺らぎの方向が、エネルギーにより同方向と反対方向の2種類のモードが存在することを観測しました。この研究成果は、昨年12月16日に論文発表と共に科学新聞で紹介されました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
開発した動的磁気PDF解析ソフトウェアをJ-PARC/MLFで使われていた画像化解析ソフト「空蝉」に実装し、一般公開しました(空蝉ポータル)。これにより、世界標準のファイルフォーマットのデータ(これまでのdmpファイルに加えて、SPE,又はNXSPE形式)であれば、誰でも解析できるようになりました。開発後に常磁性状態に出現する磁気クラスター相(短距離磁気秩序相)の解析を行っていますが、その中で、第一段階として、ノンコリニア磁気クラスターの逆格子空間の単結晶用シミュレーションソフトを代表者が開発しました。この結果、スピンと散乱ベクトルとの制約が予想外に大きいことがわかりました。弾性磁気散乱では、散乱ベクトルに垂直なスピンの成分だけが、磁気散乱強度として観測されます。Mn3RhSiの(111)では、この効果により、弾性中性子磁気散乱は観測されないにも関わらず、非弾性中性子磁気散乱では強く観測されました。これまでこの強度差は謎でしたが、上記シミュレーションソフトの開発により、その原因がこの効果であることが明らかになりました。この効果では、弾性中性子磁気散乱では消えても、非弾性中性子磁気散乱では消えないと言えます。反対に、動的磁気PDFでは見えていても、磁気PDFでは消える場合があるということがわかりました。その意味で、低エネルギーから測定可能な動的磁気PDFは、非常に汎用性に富むと言えます。これまでに反強磁性・超伝導転移や銅酸化物高温超伝導体のスピンレゾナンスモードの観測に挑戦しました。その結果、非偏極中性子散乱を用いたこの手法では、磁気励起強度がフォノン強度よりも強い必要があるという条件がわかりました。もちろん、それぞれの散乱強度は、散乱ベクトルQの大きさに依存しますので、磁気散乱が観測される5 A-1よりも小さなQ領域で、この条件が必要です。
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Strategy for Future Research Activity |
まず今後、開発したソフトウェアを用いて、具体的に何ができるのかを調査する必要があります。上記の条件の他に、その利用例として、以下のものが考えられます。常磁性状態に出現する新規磁気相の解析、アモルファス磁性体、準結晶磁性体、パーコレーション磁性体、モット転移への適用などです。またスピン波計算ソフトウェアSpinWにより、FeTiO3スピン波の動的磁気PDF関数のシミュレーションに成功しましたが、これにはスピン交換相互作用の値が必要でした。今後、これらの値がわからない一般的な磁性体でもシミュレーションできるようにする必要があります。この点については、すでにこれまでにノンコリニア磁気クラスターの逆格子空間の単結晶用シミュレーションソフトを開発しています。これを粉末散乱パターンシミュレーションソフトへと発展させる必要があります。またさらに野心的な発展として、まずは低エネルギーだけでも、リバースモンテカルロ法との組み合わせにより、動的磁気PDF解析をフィットできるソフトの開発が挙げられます。さらにエネルギー依存性をフィットすれば、ナノスピンクラスターなどのスピン間の相互作用もわかるようになります。
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