Project/Area Number |
22K04786
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 26060:Metals production and resources production-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岩間 崇之 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (40914007)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植田 滋 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (80359497)
禹 華芳 東北大学, 工学研究科, 特任助教 (90880477)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | リチウム電池 / 電気自動車 / リチウム鉄リン酸 / バイポーラ膜電気透析法 / イオン交換膜 / リン資源枯渇 / リン回収 / 製鋼スラグ / LFPバッテリー / 溶液合成 / 高温合成 / リサイクル / 希少元素リサイクル / 電極正極材 |
Outline of Research at the Start |
近年、レアメタルを含まず低価格である正極材としてLiFePO4(LFP)が注目されており、今後は、工業用電池や電気自動車用電池の正極材としてLFPの使用が増大すると思われる。しかし、原料となるリンもまだ顕在化はしていないが枯渇が進行しつつあり、需要の急増が想定されるLFP用のリン原料の確保は今後非常に困難になると思われる。本研究はLFP用の原料のリンとLiを廃LFP自体から化学薬品を消費せず、(1)電解溶液中のLFPへ正電圧を印加し電気化学反応でLiイオンを溶出し、(2)残留FePO4をバイポーラ膜の利用によりFe2+とPO43-イオンに分離してリンとLiを効率的に回収するプロセスを開発する。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は(1)廃LFP (LiFePO4)からのLiの分離、(2)その結果得られるFePO4残渣を溶解し、その溶液からイオン交換膜を用いてFeとPイオンに分離するプロセスの開発を目的とする。しかし現時点では廃LFPの入手は困難なため、LFPを作成する必要がある。そのため初年度はFPを溶解し、その溶液からFe(OH)3を析出させ、溶液中のNa+とPO43-イオンをイオン交換膜を利用して分離回収するプロセスの開発を行った。本年度に達成した結果について以下に示す。 1. FePO4のFeとPへの分離 実験用のFePO4は、試薬FePO4・2H2Oを用いた。FePO4はアルカリ性溶液中において高い溶解度を持ち, 溶液中で容易に溶解する一方で, Feイオンはアルカリ性溶液中でFe(OH)3となることが知られている。このことを利用し, FePO4を NaOH溶液中に溶解することにより, リンを溶液中に抽出し, FeイオンはFe(OH)3として沈殿させて分離した。この工程でのPの抽出率はpH12のときに最も高くなり, 30 min経過した段階でFePO4のPは100%抽出された。この時, 溶液中にFeは存在しておらず、FePO4のFeとPを完全に分離することができた。 2. イオン交換膜によるNaとLiイオンを分離回収 Fe(OH)3を分離した残液に含まれるNa+とPO43-イオンをバイポーラ膜を利用してNaOHとH3PO4として分離する検討をおこなった。バイポーラ膜による分離装置として株式会社アストム製アシライザーEX3Bを用いた。0.1Mリン酸ナトリウム水溶液500mLをバイポーラ膜電気透析法により60min電気透析を行い、リン酸の回収槽である酸溶液槽では供給溶液中のPを81.5%、またナトリウムの回収槽であるアルカリ溶液槽では供給溶液中のNaの93.7%を回収することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた廃LFP (LiFePO4)の所定量の入手が困難なため、LFPは当研究室で作成する必要が生じ、LFPからのLi分離の実験の初年度からの開始はできなくなった。令和4年度と令和5年度の課題は関連しているが互いに独立しており、どちらの課題を先に行っても問題はない。そのためLFPの作成実験を進めながら、当初の研究計画において令和5年度で行う予定であった課題を初年度(令和4年度)に行った。令和4年度に行ったイオン交換膜によるNaとPイオンを分離回収に関してはバイポーラ膜電気透析法を適用することにより、NaとLiイオンを完全に分離できることを実証した。さらに供給液中のNaイオンは約80%、Liイオンは約90%程度回収できた。実験に用いた小型バイポーラ膜電気透析法装置のアノードおよびカソード槽の数は8槽であるが、工業的プロセにおいては1000槽以上のシステムも用いられており、槽数を増やすことにより容易に回収率を上げることができる。廃LFPの入手が困難なため、並行して進めていたLFPの作成技術も確立したので、次年度からは作成したLFP からのLiの分離実験を行うことが可能となった。 以上のことから令和4年度と令和5年度の課題の入れ替えはあったが、前倒ししたイオン交換膜によるNaとLiイオンを分離回収に関して、(1)FPからのFeとPの完全分離を実証したこと、さらに次年度の課題であるLFPからにLi分離の実験を進めるのに必要となる(2)LFPの作成技術を確立したことから、研究計画の実行年度変更後の研究目標はほぼ達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は当初令和5年度行う予定であったLFP (LiFePO4)からのLi分離の検討を行う。実験は計画に示した(1)電気化学的手法によるLFPからのLi分離、(2)熱炭素還元によるLi分離について検討する。用いるLFPは実験室で製作したLFPを用いるが、比較のため一部の実験は市販のLFP電池を分解して得られる正極材のLFPを用いて行う。 電気化学的手法に関してはLi-Fe-P-H2O系の電圧-pH線図から約0.1V以上、(1)の電解溶液のpHが3から5の範囲でLiイオンとFePO4が共存すること、つまり、前述した実験条件下においてLFPからLiイオンのみが溶出することがわかる。ただし、電気化学的手法によるLiイオンの実際の溶解速度は不明なため、印可電圧、pH, 溶液温度、Liイオン濃度などを変化させて、溶解速度を最大にする最適条を確立する。電気化学的手法の場合、反応の進行によりLFP中のLiイオンが少なくなるとLiイオンの溶出速度が減少し、結果としてLiの回収率が上がらなくなることが予想される。そのため、その場合の対策として熱炭素還元法についても検討する。 (2)の熱炭素還元によるLi分離についてはLFP粉に当モル比以上の炭素を混合して作成したペレットを1300℃程度1100℃以上で還元し、LiはガスとしてLFPから昇華させ反応炉内部に設置した小型冷却管表面にLi2Oとして析出させる。さらにLi2Oは水に溶解して噴霧乾燥によりLi(OH)として回収する。この熱還元過程においてLiが分離した後のFePO4は炭素によりFeとPガスに還元されるが、Pガスは直ちにFeに固溶するのでFe-P合金として回収する。得られたFe-P合金を酸溶解し、初年度に確立したFePO4からのFeとPの分離回収法を適用してFeとPを回収する。
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