Project/Area Number |
22K04892
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 28040:Nanobioscience-related
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
三井 敏之 青山学院大学, 理工学部, 教授 (40406814)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 心臓 / 心筋細胞 / 自律拍動 / メカノバイオロジー / 同期現象 |
Outline of Research at the Start |
心臓の拍動は、心臓の収縮と弛緩のサイクルが、リズミカルに起こることです。これは心臓を構成する心筋細胞の自律拍動が、活動電位の伝搬に基づき同期化するからです。逆に、このリズムが乱れると不整脈になります。我々は発生期の心臓や、その細胞に刺激を与えて、リズムの乱れの誘発や、逆に乱れたリズムの制御を目的とした装置の開発を行っています。具体的には心臓の発生を3Dで観測したり、細胞集合体の自律拍動を精査したりして、その動きに応じた適切な刺激を選んで与える装置をつくって実験をしています。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、心臓について、ミクロの細胞スケールとマクロの心臓本体に外的刺激を与え、その応答を短期的および長期的に観測することにより、心臓疾患のメカニズムや未病医学への応用につながるヒントを実験的に探るものである。したがって、実験手法は細胞レベルから心臓の発生過程に至るまで多層的なスケールで行われ、観測や刺激を与える装置は研究室オリジナルで開発した。細胞スケールでの心臓への刺激は、発生期の心臓細胞(心筋及び繊維芽細胞)に力学的刺激を与える装置を構築し、細胞自体の自律的な拍動のリズムと刺激のタイミングを制御するために、高速画像処理によるリアルタイムフィードバック機構を組み込んだ。マクロの心臓への刺激は、初めに試薬投与を行い、その後物理的な刺激として超音波を印加する。観測装置にはOCT(光干渉断層計)を使用し、心臓の発生を時系列で追うために、プラカップ上での無殻培養法を適用した。
ミクロの心臓の細胞について、鶏胚心臓から初代培養を行い、心筋および繊維芽細胞を得て、in vitroの系で自律拍動を行う細胞の集合体に刺激を与えた。ソフトマテリアルであるPDMS上に一次元の集合体を構築し、高速画像処理によるフィードバックを用いて、自律拍動の位相に対して、拍動の直前と逆位相のタイミングで刺激を与える実験を行った。拍動の直前の刺激では、細動を励起し、刺激箇所が一次元の集合体のペースメーカーとなった。逆位相の刺激では、細動の励起は起こらなかった。
マクロの心臓への刺激に関しては、化学的環境因子の影響を調査し、エタノールとカフェインを添加した。エタノール添加では、拍動の低下と心臓の異形化の二つのタイプが観察され、また、造血細胞への影響も確認された。カフェインは心臓の拍動間隔を短縮し、心臓のサイズに顕著な影響を与えた。さらに、心臓に5MHzおよび10MHzの超音波を与える機構を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標は大きく二つに分けられる。①細胞スケールで自律拍動のペースメイキングの可能性を高速画像処理によるフィードバック機構を用いて探り、疾患の予兆である筋線維芽細胞の分化と刺激の関係を調査すること。②OCT(光干渉断層計)を使用した心臓発生のライブイメージングと、化学的および物理的な環境因子による発生への影響を直接観測すること。
①では、自律拍動の位相に応じたフィードバック機構を利用し、同位相および逆位相のタイミングで一次元培養された細胞集合体に力学的刺激を与えた。逆位相の刺激では応答が見られなかったが、同位相の刺激では、拍動間隔が一時的に短縮される現象が観察された。これに基づいて、タイミングを集合体の拍動後から次の拍動直前に調整したところ、拍動間隔の一貫した減少がみられた。オプティカルフローによる画像処理で刺激箇所が一時的にペースメーカーとして機能していることが明らかになった。しかし、拍動間隔が元の大きさに戻るタイミングで、ペースメーカーの位置も変わった。
②では、エタノールによる心停止が二つの異なる過程で確認された。拍動間隔が徐々に長くなり最終的に停止するタイプでは、エタノール添加後の心壁に特異的な狭窄が観察された。もう一つのタイプは、正常な拍動間隔から急激に拍動が停止した。対照的に、カフェインでは拍動間隔が短くなり、心臓の動きも速くなった。そして、心臓のサイズは小さくなったが、形態変化は無添加と同等であった。これらの結果から、拍動の頻度と心臓の発生段階、サイズの関係をさらに詳しく調査する必要がある。さらに、心臓に直接超音波を当てる新しい刺激装置を開発し、無殻培養を用いて胚が卵黄の上部に位置する構造から心臓に垂直上から超音波を照射可能とした。初期の観察で心臓の形状異常が確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
① フィードバック機構を用いて自律拍動を行う心筋細胞の集合体に対して、刺激のタイミングを制御することで拍動間隔が短縮し、一時的な細動が観測され、ペースメーカー化も確認された。今後は拍動間隔を適切に短縮しつつ、刺激箇所が完全なペースメーカーになる可能性を探る。特に、拍動間隔が変化しても刺激を持続することで、拍動間隔の減少割合に応じて刺激の停止や自律拍動に同期するタイミングでの刺激調整を試みる。また、長期間にわたる刺激が細胞集合体の形状や分化に及ぼす影響を詳細に調査する。
② OCTを用いた心臓発生のライブイメージングでは、エタノールとカフェインが拍動間隔に異なる影響を与えることが確認された。これらの拍動間隔の変化が心臓の発生段階やサイズとどのように関連しているかを統計的に解析する。さらに、添加の時期をパラメータとして設定し、発生段階における環境因子への感受性を探る。また、発生初期の鶏胚では、血管が体外にも張り巡らされており、エタノール添加時には血管の成長にも変化が見られた。これを踏まえて、心壁の動きや狭窄と血管形成との関連を調査する。
超音波刺激の研究では、強度を増すことにより心臓の形態のバランスが変化することが観察された。今後は、刺激を与える時期もパラメータとして設定し、各部位の形態変化の制御の可能性を探査する。最終的なゴールは、心臓の発生において形態異常が見られた際に、その修復に超音波が利用できるかを検証することである。
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