Project/Area Number |
22K04918
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 29020:Thin film/surface and interfacial physical properties-related
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Research Institution | Sendai National College of Technology (2023) Tohoku University (2022) |
Principal Investigator |
松原 正樹 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (40746111)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | 銅ナノ粒子 / 低温焼結 / 導電インク / ジカルボン酸 / 熱分解 / 導電薄膜 / プリンテッドエレクトロニクス |
Outline of Research at the Start |
プリンテッドエレクトロニクス(PE)は,インクジェットプリンタのような既存の印刷技術をデバイス製造プロセスとして応用する次世代技術として期待されている.PEで用いられる導電ナノインクは,金属ナノ粒子を有機溶媒に高濃度分散させたもので,基板上に塗布することで導電性を発現する.導電ナノインクの基材として期待されている銅ナノ粒子は,コストや導電性の面で優れているが,表面が酸化されやく耐酸化層を形成する必要があるが,通常,耐酸化層の除去には高温処理が必要となる.そこで,本研究では低温熱分解性を示すジカルボン酸分子に着目し,二座配位による耐酸化性と低温焼結性を兼ね備えた銅ナノ粒子の開発をおこなう.
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,ナノ粒子表面での分子の熱挙動を精査することで,大気下で酸化せず,100 ℃ 以下の低温処理で焼結可能な二座配位分子保護銅ナノ粒子の開発を行う.銅ナノ粒子は酸化しやすく,ナノ粒子表面に耐酸化層を形成する必要があるが,通常,耐酸化層の除去には高温処理が必要となる.そこで,低温で特異な熱応答性を示すジカルボン酸分子に新たに着目し,二座配位による耐酸化性の付与と低温焼結性の同時付与を実現する.そのようなナノインクによる低温プロセスは従来のデバイス製造と比較して省エネルギーかつ省資源化可能であり,耐熱温度の低いプラスチック基板などを利用可能なデバイス製造プロセスとして期待される次世代プリンテッドエレクトロニクス技術の早期実現を加速させる. 前年度はジカルボン酸としてマロン酸およびこはく酸を用いて銅ナノ粒子合成をおこなった.今年度はより長鎖のグルタル酸でも銅ナノ粒子合成をおこない,その耐酸化性と低温焼結性について議論した.短鎖のマロン酸は合成後はほとんど酸化していなかったが,空気中での保管では約3日後には表面が酸化し始めた.長鎖のグルタル酸は,合成後は金属銅で,空気中で約2週間以上保管しても酸化は見られなかった.一方で,マロン酸保護銅微粒子は,100, 150, 200 ℃での焼成でそれぞれ8.6,12.7, 1.6×10-5 Ω・cmの抵抗率を示し,低温焼成でも導電性が発現できることが示された.耐酸化性の高かったグルタル酸保護銅微粒子は,200 ℃での焼成でも導電性は発現しなかった.したがって,長鎖のジカルボン酸は耐酸化性付与の面では有利だが,低温焼結性の付与には短鎖のジカルボン酸が有利であることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,直鎖ジカルボン酸であるマロン酸(C3),こはく酸(C4),グルタル酸(C5)および不飽和ジカルボン酸であるマレイン酸(シス体)およびフマル酸(トランス体)により銅ナノ粒子の表面を保護することで,ジカルボン酸の鎖長および低温熱挙動が銅ナノ粒子の低温焼結性に与える影響と,単座配位および二座配位が銅ナノ粒子の耐酸化性に与える影響を精査する.研究は,①ナノ粒子合成,②ナノ粒子のキャラクタリゼーション・耐酸化性の評価,③ナノインクの調製および基板上での焼成処理,④焼成基板の評価の項目に分けて推進する. 前年度はマロン酸およびこはく酸を用いて銅ナノ粒子およびインクの合成をおこなったが,二年目となる今年度はより長鎖のグルタル酸を用いて微粒子合成をおこなった.銅ナノ粒子は,ぎ酸銅およびジカルボン酸を水に溶解させ,塩酸または水酸化ナトリウム水溶液によりpHを調整した後,ヒドラジンにより還元することで調製した.pHが7-8の中性付近では銅に加えて帰属不可能な複相が生成した.一方で,pH=3または9以上で,酸化せず銅単相で得られた.また,pHが2以下では塩化銅も生成した.また,マロン酸保護銅微粒子についても実験条件を見直しグラムスケールでの大量合成をおこなった.得られたマロン酸およびグルタル酸保護銅ナノ粒子を質量比が50wt%となるようにα-テルピネオールに濃厚分散させ,ガラス基板上に塗布し,窒素フロー下,100, 150, 200℃で2時間焼成した.焼成したグルタル酸保護銅ナノ粒子基板は,XRD測定より酸化せず金属銅膜であることが示されたが200℃でも高抵抗で導電性は発現しなかった.グルタル酸保護銅微粒子はマロン酸保護銅微粒子より耐酸化性を示したが,マロン酸保護銅微粒子の方が低温焼結性に優れていた.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度,長鎖のジカルボン酸は耐酸化性付与の面では有利だが,低温焼結性の付与には短鎖のジカルボン酸が有利であることが示唆された.また,耐酸化性の高い配位子では焼成後の銅基板の抵抗率が高く,低温焼結性の発現が新たな課題となった.一方で,ジカルボン酸が二座配位で耐酸化性を発現しているかどうかは検討できておらず,次年度はオレフィン部位を有するマレイン酸保護により二座配位が耐酸化性発現に有効であることを示すとともに,低温焼結性発現の焼成条件についても検討する.また,銅微粒子の空気下および窒素下での熱重量測定などにより,銅ナノ粒子自身の熱的挙動も明らかにすることで,低温焼成での実用的な高導電性化についても検討を進める. また,耐酸化性の評価については,今年度と同様に,新に合成した銅微粒子も含めて,大気保存下で3か月,6か月,12か月の長期保存安定性の評価を引き続きおこなっていく.また,恒湿恒温条件下での短期間安定性も評価し,二座配位が耐酸化性付与に有効であることを示す.焼成後の基板の機械的特性を評価し,堅牢でかつ高導電性の銅基板を作製し,導電性の評価のみならず,CO2還元の触媒活性評価についても検討する. 以上から,低温焼結性と耐酸化性を同時付与可能なジカルボン酸配位子について精査し,そのインク化および低温焼結により,高い導電性を発揮する銅薄膜の調製を実現する.
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