Project/Area Number |
22K05086
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 33010:Structural organic chemistry and physical organic chemistry-related
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
岩澤 哲郎 龍谷大学, 先端理工学部, 教授 (80452655)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,080,000 (Direct Cost: ¥1,600,000、Indirect Cost: ¥480,000)
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Keywords | バッキーボウル / ジインダセノクリセン / ジベンゾクリセン / 液相合成 / 非平面性パイ共役系 / 多環芳香族炭化水素 / ジインデノクリセン |
Outline of Research at the Start |
お椀型芳香族分子の研究は、バックミンスターフラーレンの部分構造であるバッキーボウルを中心に行われてきた。バッキーボウルは、独特の機能的な構造美を有するからである。実際、コランニュレンとスマネンの二つは、バッキーボウルの金字塔として長年関心を集めてきた。しかし、バッキーボウルの構造多様性と潜在的物性にも関わらず、コランニュレンやスマネンに比肩する鮮烈なバッキーボウルは新たに登場していない。本案では、新型バッキーボウルであるジインダセノクリセンの液相合成と高生産性スキームの開発を研究の焦点に据え、材料科学の新たな中核を生み出す。
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Outline of Annual Research Achievements |
ジベンゾ[g,p]クリセンの2位・7位・10位・15位にイソプロピル基、3位・6位・11位・14位にメトキシ基、4位・5位・12位・13位に臭素基を取り付け、1位と16位および8位と9位のベイ領域をメチレン基で架橋した分子をジインダセノクリセン型バッキーボウルの前駆体とみなし、臭素原子の活性化による2箇所の二重閉環反応を徹底して検討した。代表的なゼロ価パラジウム試薬を種々用いたところほとんど反応は進行せず、未反応原料が残る結果に終わった。配位不飽和な電子不足のパラジウム試薬を中心にしてさまざまな添加剤や反応溶媒を組み合わせたところ、部分的に臭素原子が脱離する現象が認められたが、目的物と思しき化合物は一切認められず、辺縁の置換基が分解したと思しき副生成物が散見された。また、代表的なゼロ価ニッケル錯体を中心にしてさまざまな添加剤を組み合わせたが、臭素原子が脱離して水素原子に置換された化合物が副生する結果になった。続いて、臭素原子を足がかりとしてラジカル種を発生させて環化する経路について種々検討を行い、アゾビスアルキルニトリルとシラン試薬の組み合わせに行き着いたが、目的物の生成を確認するには至らなかった。一方、段階的な閉環による合成経路を試したところ、電子不足のパラジウム試薬だけを用いれば、高温条件下に限って、30%弱の収率で五員環を一つだけ形成できることを見出した。構造決定をX線解析を用いて行い、九環性の縮環構造をとることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの進捗の流れを踏まえて、第一に2箇所のベイ領域を閉環し、次に2箇所のコーブ領域を閉環する液相条件下での合成経路の開発を進めた。2箇所のベイ領域をメチレン基で架橋することには成功したが、一方で、コーブ領域の閉環はいまだに難しい状況である。特に、2箇所のコーブ領域に取り付けた合計4つの臭素基を同じタイミングで活性化して、2箇所同時に架橋する生産性の高い変換には、今なお苦労している状況にある。ベイ領域を先に架橋することでコーブ領域の間口が想定をこえて広がってしまい、もともと芳香族面がねじれていることも相まって、所望の炭素ー炭素結合を形成するには原子間距離が長くなり過ぎたと考えられる。ただし、1箇所だけを架橋することは30%程度の収率ながら達成されたことを踏まえると、同時に架橋することが難しいだけであって一つずつ段階的に架橋することは十分に可能であり、目的物である十環性縮環体の合成が視野に入っていることを示している。すなわち、あと一工程で目的物へと到達できる進捗状況であると言える。しかしながら、ここまでの工程の生産性が高いとは明言できず、閉環による五員環形成の順序を考え直しても良いと考えている。合成中間体の構造に関しては、構造決定を単結晶のX線結晶構造解析をもとに一つずつ確実に完了させることができた。本進捗の大いなる原動力になったと言え、今後も続けたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
コーブ領域が1箇所だけ閉環された九環性の二臭素化前駆体を鍵化合物として調製し、二臭素化されたコーブ領域の閉環反応を行って、目的物の合成を行う。この前駆体までの合成経路は、合成中間体や前駆体の構造決定も含めて、確立済みである。時間を要する可能性もあるが、前駆体には確実にたどりつくことは可能である。この二つの臭素原子に対して配位不飽和なパラジウム錯体試薬や有機リチウム試薬を作用させて、第一に最後の閉環工程を達成したいと考えている。一方で、別の方策として、ジベンゾクリセンの2箇所あるコーブ領域を先に閉環したジインデノクリセン型バッキーボウルを調製し、その後に2箇所あるベイ領域をそれぞれ増炭後に閉環して合成する経路を開発したい。ジベンゾクリセンの2箇所あるコーブ領域を先に閉環したジインデノクリセン型バッキーボウルは、過去に当研究室から報告を済ませてあり、2グラム以上の適切な実験室レベルの生産性のもとに用意することが十分に可能である。この化合物はメトキシ基とアルキル基がそれぞれ4つずつ結合して電子豊富な共役系構造を持っているから、2箇所のベイ領域に一炭素ずつ増炭させることが可能であると思われる。この炭素を契機として分子内閉環反応による五員環形成を達成したい。構造異性体の混合物が生じる可能性があるが、閉環反応が首尾良く進行すれば単一化合物に収束するから、特段の問題にはならないと想定している。
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