Project/Area Number |
22K05123
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 34010:Inorganic/coordination chemistry-related
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小室 貴士 東北大学, 理学研究科, 講師 (20396419)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
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Keywords | 鉄錯体 / シリル配位子 / N-複素環式カルベン / ピリジン配位子 / 触媒 / ヒドロホウ素化 / 脱水素ホウ素化 / 可視光駆動 / 3d金属錯体 / ケイ素配位子 / 多座配位子 / 複核錯体 / 1,8-ナフチリジン / キレート錯体 / 豊富元素 / 結合活性化 |
Outline of Research at the Start |
資源量豊富な3d遷移金属(鉄,マンガン,コバルトなど)の高性能な触媒を開発するため,それらの金属の反応性を増強させるケイ素配位子を組み込んだ独自の錯体を設計・合成し,「強固な結合(例:炭素-水素結合)を直接変換する高難度反応の触媒」として利用する.本研究により,従来貴金属触媒の使用が必要であった当該反応を3d遷移金属触媒で実現することで,持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する基礎的知見を得ることを目指す.
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Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き,資源豊富な鉄を中心金属とし,ケイ素配位子(シリル基)をもつ錯体触媒の開発に取り組んだ. (1) N-複素環式カルベン(NHC)とシリル基を併せもつSiC型の二座キレート配位子を,新たに3種類開発し,それらおよび従来開発された類縁配位子をもつ鉄錯体を合成した.得られた錯体および前年度合成した類縁錯体は,アルケンとヒドロボランとの反応によるヒドロホウ素化および脱水素ホウ素化の触媒として働くことがわかった.これにより,シリル-NHCキレート鉄錯体触媒がニトリルの変換(昨年度開発)だけでなくアルケンの変換にも利用できることがわかり,当該触媒の汎用性を高める成果が得られた.さらに,錯体のNHC部分の窒素上の置換基を嵩高くすると脱水素ホウ素化の選択性が向上することを見出し,置換基選択が反応の選択性制御に有効であることを明らかにした. (2) シリル基,NHCおよびピリジン部位からなるSiCN型ピンサー配位子をもつ,鉄カルボニル錯体の合成に成功した.錯体の吸収スペクトルを測定すると,これまでの類縁錯体と比べて錯体の光吸収波長が長波長側の可視光領域まで広がっていることがわかった.理論計算(DFT法)に基づき,この可視光吸収特性が,金属のd軌道(CO配位子へのπ逆供与に寄与)からピリジン部位のエネルギー準位の低いπ*軌道へのMLCT遷移に由来すると推定した.そこで,青色LED照射下でニトリルとヒドロボランとの反応を触媒量の錯体存在下で行ったところ,二重ヒドロホウ素化が進行しビス(ボリル)アミンが高収率で生成した.これにより,従来の類縁錯体を用いた触媒反応(水銀灯の光照射が必要)と比較して,その反応進行に要する光エネルギーを低減することに成功した.今回の成果を起点として,今後,より長波長側の可視光(LED光や太陽光)の照射により駆動する触媒反応の開発に研究を展開する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で述べたように,本年度の研究により,NHC部分の骨格の異なるシリル-NHCキレート配位子をもつ鉄錯体を新たに合成し,それらがアルケンをホウ素化する触媒として働くことを見出した.また,ピリジン部位を配位子骨格に導入することで,鉄錯体触媒の吸収波長を長波長側(可視領域)にシフトさせ,触媒進行に要する光エネルギーを減らすことにも成功した.シリル-NHCキレート錯体の合成や触媒作用に関する新しい知見が着実に得られつつあり,これらを次年度の研究に活用できる状況にある.さらに,8族遷移金属のシリル-NHCキレート錯体の合成とそれらを触媒としたニトリルの二重ヒドロホウ素化に関する論文を発表し,その論文がDalton Trans.誌のhot articleに選出された. 以上の状況に基づき,本研究はおおむね順調に進展していると自己評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,鉄以外の3d遷移金属として例えば資源豊富なマンガンを中心金属とする錯体触媒の開発に取り組むだけでなく,以下の(1)~(3)を行う. (1) これまでの研究で合成したシリル-NHCキレート鉄錯体を触媒として用いて,合成化学での価値が高い炭化水素分子のC-H直接官能基化反応(シリル化,ボリル化など)を開発する.当該反応に関して,用いる錯体触媒のシリル-NHC配位子骨格の違いが選択性や活性に及ぼす効果を詳しく調べ,触媒の設計指針の策定に有益な知見を得る. (2) シリル-NHC-ピリジン配位子の骨格についてπ共役系を拡張させる改良を行い,その配位子をもつ錯体の可視領域での光吸収の効率向上や吸収極大波長のレッドシフトを標的とした検討を行う.この結果を応用し,より長波長側の可視光LED照射下で進行する触媒反応系を開発する. (3) 一連の研究で開発した触媒反応の機構解明を目的とし,触媒反応中間体の単離や観測を検討する.また,光励起により生じる触媒活性種について,理論計算に基づき考察する.
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