Project/Area Number |
22K05138
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 34010:Inorganic/coordination chemistry-related
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
中田 憲男 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (50375416)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | N-ヘテロ環状シリレン / σ-ドナー / イミノホスホナミド / シリレン錯体 / メタラサイクル / プルンビリウミリデン / スタンニレン / プルンビレン / 配位不飽和錯体 |
Outline of Research at the Start |
研究代表者らは、イミノホスホナミドを導入したクロロシリレン1の合成に成功している。1は、安定カルベンや類似のルイス塩基配位シリレンを凌ぐ強力なσ供与性を有することが実験的・理論的検証により明らかとなった。この知見を踏まえて、本研究では1を配位子とする種々の遷移金属錯体の構築から、基礎的なドナー性配位子としての性質解明と新奇な結合様式や配位不飽和性を有するシリレン錯体の合成へと展開し、従来のカルベン系配位子では見られないオリジナルの配位化学の創成を目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
これまでに研究代表者は、イミノホスホナミド配位子を導入したN-ヘテロ環状シリレン1をはじめとする一連の高周期14族源元素二価化学種の合成と特異な反応性の解明に関する研究を遂行してきた。その中で、シリレン1は従来の安定カルベンやシリレンを凌ぐ強力なσ供与性を有することが実験的・理論的検証により明らかとなり、その基本的かつ予想外の配位挙動を明らかにしてきた。前年度に引き続き、令和5年度では嵩高いアリール基であるDip基 (Dip = 2,6-iPr2C6H3) を有するイミノホスホナミドシリレン1aを配位子とする種々の遷移金属錯体との合成と性質解明を目指した。 また、シリレン1aに対する基本的な配位挙動を検証するため、9族遷移金属錯体である[MCl(cod)]2 (M = Rh, Ir; cod = 1,5-cyclooctadiene)との反応を検討したところ、予想外の環拡大反応が進行し、 対応する5員環シラメタラサイクル6 (M = Rh)および7 (M = Ir)の生成を見出した。 一方、昨年度に実施したカチオン性プルンビレン(プルンビリウミリデン)10に関する研究も継続したところ、対アニオンが異なるプルンビリウミリデン10のX線結晶構造解析に成功し、これらの分子構造の決定に成功した。さらに、10のLewis酸触媒としての応用範囲の拡大を目指し、種々の触媒的分子変換反応についても検討した。すなわち、[B(C6F5)4]-を対アニオンとする10を触媒とする環状エステル類の開環重合反応は、開始剤アルコールの存在下で効果的に進行し、重合がリビング的に進行していることが明らかとなった。また、10はアミンを用いたアルキン類のヒドロアミノ化反応においても触媒として作用し、高選択性で対応するエナミン5を主生成物として与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に合成に成功したケイ素-マンガン間に二重結合を有するシリレン錯体2の反応性を検討した。錯体2と水との反応では、ケイ素-マンガン間の分極に応じてケイ素上に水酸基が、マンガン上にプロトンがそれぞれ付加したシリルマンガン錯体3が生成した。錯体2と亜酸化窒素との反応では、ケイ素上に酸素原子が付加した新規なシラノン錯体4が得られた。錯体4は室温付近ですぐに分解する低い安定性をもっていたが、低温下での再結晶により単結晶を得ることに成功し、その分子構造をX線構造解析により決定した。さらに、錯体4と単体セレンとの反応においても、錯体4の高周期類縁体であるシランセロン錯体5の生成を明らかにした。 プルンビリウミリデン10は極めて低い結晶性のため、良好な単結晶が得られず、これまでに詳細な分子構造の決定には至らなかった。そこで、結晶性の向上が期待できる対アニオンを使用し、単結晶の作成を目指した。すなわち、ボラートアニオン{B[(4-tBuMe2Si)C6F4]4}-を有するプルンビリウミリデン10の合成を検討したところ、ベンゼン溶液からの再結晶により得ることに成功し、X線構造解析によりその分子構造を明らかにした。鉛原子周辺には一分子のベンゼンがPbN2P環に対してほぼ垂直に存在し、鉛原子にη2 配位していることが明らかとなった。さらに、鉛原子と対アニオン中の2つのフッ素原子との相互作用も確認された。加えて、従来から使用していた[B(C6F5)4]-を対アニオンとしてもつプルンビリウミリデン10の単結晶についても偶然得ることができた。X線構造解析の結果、鉛中心には二分子のベンゼンがPbN2P四員環に対してη1ならびにη2配位しており、対アニオンとの相互作用はみられない構造であった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度においても、引き続きイミノホスホナミドシリレンの遷移金属錯体に対する配位挙動の解明を実施する。特に、前年度見出したシリレン‐遷移金属間に二重結合を有する錯体2の一般性を明らかにするため、様々なアニオン性カルボニル遷移金属錯体を求核種とするシリレン1aとの反応から、対応する二重結合性シリレン錯体の合成を確立していく。例えば、コバルトやニオブのアニオン性カルボニル錯体がすでに報告されているため、これらを使用して新規な二重結合性シリレン錯体の合成を検討する。特に、5族遷移金属とケイ素間の二重結合化学種は未だ合成例がなく、その構造や二重結合の電子状態、反応性に大変興味が持たれる分子である。 一方、シリレン1aと[MCl(cod)]2 (M = Rh, Ir)との反応から生成した5員環シラメタラサイクル6 (M = Rh)および7 (M = Ir)は、一酸化炭素と容易に配位子交換反応を起こし、対応するカルボニル錯体8 (M = Rh)および9 (M = Ir)を定量的に与える。5員環シラメタラサイクル8および9はケイ素上に2つの塩素原子が置換しており、これらを還元的に脱離させることで新規な遷移金属を置換基とする環状シリレンの生成が期待される。特に、理論計算によるこの環状メタラシリレンの分子軌道では、HOMO-LUMOギャップが著しく小さくなり、従来のシリレンよりも高い求核性と求電子性を兼ね備えた性質であることが予測された。そのため、水素や二酸化炭素などの不活性な小分子との反応を検討し、高い反応性に起因した性質の解明を試みる。
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