Project/Area Number |
22K05147
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 34010:Inorganic/coordination chemistry-related
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
小澤 芳樹 兵庫県立大学, 理学研究科, 准教授 (40204200)
|
Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2024: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2023: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
Fiscal Year 2022: ¥1,950,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥450,000)
|
Keywords | 高圧結晶化学 / 多核金属錯体 / フォトルミネッセンス / ピエゾクロミズム / ダイヤモンドアンビルセル / 高圧結晶構造解析 / 大型軌道放射光 / 貨幣金属 / 粉末X線構造解析 / 発光性金属錯体 / 超高圧 / 結晶化学 |
Outline of Research at the Start |
複数の金属イオン同士が直接相互作用を持たない状態で配置されたしなやかな骨格を有する、発光性金属多核錯体結晶において、数万気圧の静水圧下の金属コアの変形と光吸収-発光の変化および電子状態との相関の解明を目的とします。 特に二つの光励起状態からの輻射失活により二色の発光が同時に起こるユニークな性質を示す錯体について、二つの光励起状態間のエネルギー移動とその圧力依存性を解明することで、これまで研究例がない仕組みで分子の構造変形が発光色変化を誘起する、超高圧下での結晶構造化学の開拓を目指します。 二色の発光強度の変化により大きく色が変わる固体材料は圧力センサーなどの応用研究に発展が期待されます。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、複数の金属イオン同士が直接相互作用を持たない状態で配置されたしなやかな骨格を有する、発光性金属多核錯体結晶において、数万気圧の静水圧下の金属コアの変形と光吸収-発光の変化および電子状態との相関の解明を目的とした。 d10電子配置を持つ貨幣金属(Cu, Ag, Au)1価イオンをアニオン性配位子で架橋することで複数集積させた、フォトルミネッセンスを示す中性多核金属錯体を合成し、その結晶状態での発光色の圧力依存性について、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用い、高圧下での大型軌道放射光X線回折実験により、圧力による分子構造の変化の検出に成功した。 特に二つの光励起状態からの輻射失活により二色の発光が同時に起こるユニークな性質を示すハロゲン架橋銅(I)四核錯体について、二色の発光強度比が圧力依存により変化する二重発光ピエゾクロミズム現象を初めて見出し、その結晶構造の圧力変化を明らかにした。二つの光励起状態間のエネルギー移動とその圧力依存性を解明することで、これまで研究例がない仕組みで分子の構造変形が発光色変化を誘起する、超高圧下での結晶構造化学の開拓し、二色の発光強度の変化により大きく色が変わる固体材料は圧力センサーなどの応用研究に発展が期待される。 結晶格子中に大きな空隙 (void) が存在する、発光性四核金属錯体結晶の作製し、その空隙には種々の有機小分子を取り込んだ包接結晶を作製した。これらの結晶について、発光の圧力依存性を検討した。加圧により2 GPa付近で発光極大エネルギーが大きくレッドシフトする傾向がみられるが、包接ゲスト分子に依存してエネルギーシフト開始圧力が変化することが見出され、ゲスト分子のサイズの相関関係を示唆する結果が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点で、以下の3つの化合物群について、発光の圧力依存性と、錯体分子の自体の変形を含む高圧下での結晶構造の変化について観測に成功した。 1.発光性のキュバン型ハロゲン化銅(I)四核錯体、およびハロゲン架橋銅(I)二核錯体の固体において、結晶状態とアモルファス状態で発光挙動の圧力依存性が大きく異なることを見出した。結晶状態では、5 GPaまでの圧力印加に伴い発光エネルギーが低下する一方、アモルファス固体では発光エネルギーの変化はわずかであった。この原因は結晶中ではパッキングによる分子同士の接触で加圧により多核銅クラスター構造が短縮されるが、アモルファスでは、分子同士の特異な接触点がないために、加圧によるクラスター構造の変形が起きにくためと示唆された。 特にアモルファス固体については、圧力伝達媒体に依存して発光挙動が異なることが見出された。ケロシンのような試料な不溶性の媒体でも高圧下ではアモルファス固体の結晶化を促すことが示唆され、結晶状態と同様の発光圧力依存性を示した。圧力伝達媒体にヘリウムを用いると、この現象はなくなり、加圧による発光変化はほとんど起こらなかった。 2.結晶格子に空隙をもつ発光性キュバン型ハロゲン化銀(I)四核錯体について、空隙に有機小分子ゲストを包接する結晶についてゲストの種類を増やすことができ、ピエゾクロミズムのゲスト依存性、特にゲスト分子のサイズに依存して、発光エネルギーが大きく変化する圧力閾値が変わることが明らかになった。 3.二座架橋配位子を用いたパドルホイル型新規銅(I)および銀(I)六核錯体を合成し、その結晶の発光圧力依存性について明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで、結晶状態での固体のフォトルミネッセンスと分子構造の圧力依存性の相関について研究してきたが、結晶をすりつぶすなどして得られるアモルファス状態の固体について、発光挙動の圧力依存性が結晶状態と大きく異なる物質がいくつか見つかってきた。柔軟に変形する多核錯体は、結晶中ではパッキングにより溶液や真空中のとは異なる対称性の低下した分子変形が起こっていることが示唆されている。アモルファス固体の構造評価にはX線構造回折実験手法が適用できないので、現在学内の共同研究者に依頼して、固体状態でのNMR等の分光手法を用いて、分子の対称性についての知見を得る実験が進行中である。また、準静水圧を発生するための圧力伝達媒体の種類に依存して分子性結晶の圧力応答性が異なる現象が見つかっており、対象化合物固体と媒体との相互作用について検討を行っている。 高圧粉末X線結晶構造解析について、単純な無機化合物とは異なり分子自体が大きく変形する結晶構造の精密化計算に最適化されたソフトウエアがなく、解析手法が完全には確立がされていないので、結晶構造精密化計算に予想以上の時間がかかっている。これまで構造解析が容易な、対称性が高い結晶系を選んできたが、今後より対称性の低い新規化合物の高圧構造の計算についてスケジュール通りに進捗できるように、粉末X線構造解析の専門家の助言を得るなどして問題の解決を図る方針である。 パドルホイル型の新規六核錯体は、ハロゲン架橋四核錯体と比較した剛直なクラスター骨格を持っており、既知物質とは異なる構造変化の圧力応答性が期待されており、高圧下での構造解析を計画している。 構造変化のより精密な解析を目指し、高圧単結晶構造解析手法の確立を計画している。単結晶回折計に搭載可能な小型のダイヤモンドアンビルセル(DAC)を購入し、高品質のデータ収集法と構造解析の精密化の方法開発に取り組んでいる。
|