Project/Area Number |
22K05152
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 34020:Analytical chemistry-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 茂樹 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (60552784)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2024: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2023: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2022: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
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Keywords | キラリティ / キラル / 絶対配置 / 鏡像異性 / 光学活性 / 円偏光発光 / キラル分光 / 分光分析 / 機械学習 |
Outline of Research at the Start |
キラル分子の絶対配置を決定することは医薬品,毒物,香料の生理機能と関連して非常に重要である。本申請では希土類錯体をプローブとし,キラルなアミン,アルコール,カルボン酸,ケトン,リン酸などの誘起円偏光発光(Induced Circularly Polarized Luminescence: ICPL)を測定し,これらキラル分子の絶対配置および置換基構造を決定する新たなキラル構造解析法を開発する。自作の装置を用いることで,mM-μM濃度にて構造解析を行う。ニューラルネットワーク法による機械学習をICPLスペクトルへ適用し,分子構造とスペクトルとの複雑な関係性を明らかとする。
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Outline of Annual Research Achievements |
地球での生命誕生時に起こった単一キラリティ選択(L-アミノ酸とD-糖の採用)が原因となり,ヒトを含めた生物は分子に対してキラル選択的な反応を示す。そのためキラル分子の絶対配置を測定することは,薬剤分子や香料分子の安全性を保ち生理活性を調べる上で重要である。医薬品の認可には絶対配置の決定が必要であり,既存のサリドマイドやアンフェタミンなど薬剤分子は光学異性による薬効または毒性の違いから近年改めて注目されている。本研究では,アキラルなユーロピウム(Eu)錯体を発光プローブとし,溶液中においてキラル小分子(アミン,アルコール,カルボン酸,ケトン,リン酸)の絶対配置および置換基構造を決定する誘起円偏光発光(Induced Circularly Polarized Luminescence: ICPL)を新たに開発する。市販の円偏光発光測定装置と比べて高感度高精度なラマン光学活性測定装置をICPL測定に用い,キラル分子濃度がmM-μMとなる条件下にて構造解析を行う。得られたICPLスペクトルへ,ニューラルネットワーク法による機械学習を適用することで,分子構造とスペクトルとの複雑な関係性を明らかとし,キラル分子の絶対配置だけでなく,全体構造を識別する新たなキラル構造解析法を開発する。 ICPLにおいては,有機溶媒中においてキラル小分子をEu錯体へ付加配位させることで,Euからの発光を強く円偏光へと誘起し,その左右円偏光の強度差(I(R) -I( L))を分光検出する。励起は532 nmレーザーであり,発光波長の範囲は584-600 nmの分裂した Euの電子遷移である。 キラル分子20種についてICPL測定を行い,絶対配置とスペクトルとの相関を調べた。アキラルなEuジケトン錯体EuFODとキラルアミン分子の濃度を変化させることで,一付加体と二付加体に特徴的なICPLピークを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
構造の異なるキラル分子20種について誘起円偏光発光(Induced Circularly Polarized Luminescence: ICPL)測定を行い,絶対配置とスペクトルとの相関を調べたが,これは研究計画通りであった。アキラルなEuジケトン錯体EuFODとキラルアミン分子の濃度比を変化させることで,一付加体と二付加体に特徴的なICPLピークを明らかとしたことは,これまでに報告例がなく,興味深い結果である。さらに,10種のキラルカルボン酸についてもICPL測定を行い,アミンおよびアルコールとのスペクトル・分子構造の相関を調べた。キラル分子の絶対配置と得られたICPLスペクトルを比較し,ICPLピークと絶対配置の相関を求めた。この過程で置換基のかさ高さに基づいた新たな絶対配置の表記を提案し,それが原子番号に基づいた従来の絶対配置の表記RSよりも,より多くの分子に妥当する相関を得られることを提案した。ICPLスペクトル強度の再現性を向上させるために,溶液の調製方法と保存方法について検討を行った。Eu由来物質のガラスへの吸着を抑制するために,ガラスの表面処理について詳しく検討した。さらに,EuFODの最安定構造を真空中において量子力学計算したところ,以前のより単純な理論を用いた計算で報告されていた回転対称軸をもった構造ではなく,非対称な構造が最安定と計算された。このことは,今後のキラル分子との付加錯体を理論計算する際の基礎となる重要な進捗である。今後の機械学習に使用する計算機を購入し,Pythonなど基本的なプログラムを導入し,機械学習の基礎となるClassical least squaresとその誤差伝搬について検討を加えた。以上の事から「当初の計画以上に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
構造の異なるキラルケトンおよびキラルリン酸分子についてICPL測定を行い,既に測定したキラルアミンおよびキラルアルコールの結果と比較し,経験的に絶対配置を反映するICPLピークを特定する。さらに,測定したキラル分子全般について,本年度提案した置換基のかさ高さに基づいた絶対配置表記が妥当であるか検証する。ガラス器具へのEu関連物質の吸着を抑え,再現性を向上させ測定可能な最小濃度を10μMへ下げるために,表面処理と試薬の保存方法を検討する。ニューラルネットワーク法を用いるためのソフトウェアPyTorchをGraphical Processing Unit (GPU)を含む計算機に導入計算機に導入し,測定したスペクトルデータとキラル分子構造とを入力とした機械学習を行う。その際,分子構造の分類は,絶対配置や置換基の有無など単純なものから試行する。キラル分子の置換基の構造変化が,その置換基由来の信号だけでなく,近傍の構造要素(ここでは絶対配置)の信号をも変化させる非線形な関係が存在すると予想される。非線形な関係を解明するのに適したニューラルネットワーク法により,一般的なスペクトル-分子構造相関を明らかとする。ICPLピークの符号を決定する絶対配置は,R-,S-の分類法規則に従わない可能性もあるので,例えば不斉中心周りの置換基のかさ高さの順で絶対配置を記述し,これも構造要素に加え検討する。経験的な帰属,機械学習による構造予測,量子力学計算による構造要因の予測の三者を比較検討し,本測定法の妥当性を検証する。
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